イスラと自己評価
ライリーのお母さまに許可を得ないと話が進まない、という段階まで来たため、いったん今日は解散とする。ユージーンとライリーが帰って、イスラと二人になる。
「ねえ、エレノアちゃん。ちょっと相談があるのだけれど、いいかしら?」
「はい、大丈夫ですよ。どうしました?」
家のことで少し、と言いにくそうに切り出された。家のこと、というと、ここの店兼自宅のことだろうか。それともご実家のことか、あるいは引っ越しのことか。さっきまでユージーンがメモをしてくれていた紙を箱にしまって、イスラと対面に座る。
「その、今のところ、移動販売をするにしても、詳しい日は決まっていないじゃない? だから新しいお家を探すにも、ちょっと中断した方がいいのかしら、と思ったのよ」
「ああ、そういうことですか。そうですね、そう……」
そこまで言って言葉が出てこなくなる。なんというか、言おうとしていたことが自分で少し恥ずかしくなったのだ。突然顔を覆った私に、イスラは「どうしたの?」と心配そうにのぞき込む。
「いえ、大したことではないんですけど、勝手にイスラはずっとここにいるものだと思ってしまっていたことに、たった今気づきまして」
イスラは嬉しそうに「まあ!」と口元に手を当てた。元々は期間限定で、お金が貯まって新しい家が見つかるまでの間、という話だったはずなのに。イスラと一緒に暮らすのが、あまりにも心地よかったから、その条件をすっかり忘れてしまっていた。
これからもイスラとは同居を続けるとばかり思っていたので、完全にイスラの新居に対する配慮を忘れていた。申し訳ないことをしてしまったな、と思って謝ると、「気にしないでちょうだい?」と満面の笑みで言われた。
「よかったわ。わたし、ずっとエレノアちゃんの負担になっているものとばかり思っていたのよ。だから、一緒にいるのが当たり前だと思ってくれたのはとっても嬉しいわ」
そうして笑うイスラに、一体今まで実家でどれだけ過ごしにくかったのだろうと思った。家事はほぼ半分負担してくれていて、仕事量もそれなりに多いのをこなしていて、さらにお祈りやおつとめも欠かさないでいるのに、自分が負担になっていると思うのは、あまりに自己評価が低い。
けれど私も、少しだけ気持ちが分かる気がした。自分が家になじめていないと、自分のことを負担に思ってないだろうかとか、邪魔になっていないだろうかということを考えやすい。それはつまり、私のサポートが足りていなかったということでもあるのだけど。
「イスラを負担に思ったことなんてありません。あえていうなら、二日酔いで出勤してくるユージーンにこそ気にしてほしいことですよ」
その言葉に、イスラはちょっとだけ目を見開いて、上品にふふふと笑った。




