荒唐無稽で現実的
「どうしちゃったのエレノアちゃん、両立はできないからお話し合いをしているのよね?」
「はい、私が二人にならない限りできません。……あ、分裂するわけじゃないですよ」
頭でもおかしくなったか、熱でも出たかとユージーンがおでこに手を当ててくる。いたって健康体だけど、まあ突拍子もないことを言った自覚はある。
「冗談は置いておきますが。三人の意見をまとめれば、全員の要望は通せると思うんですよ」
「俺も含めてか?」
「結果としては違う形になりますが、理由の方は通せますよ。イスラは国外の人も救う方法として本が出したい、ライリーは自分たちで救う相手なら自分たちの目が届くようにしたい、ユージーンは自分たちで何かやるためにも信用を得たい。そうですよね?」
そうだね、とライリーが頷く。目的を達成できればいいのだから、手段にこだわる必要はない。
「ライリーとお母さまに許可を得る必要がありますけど……お父さまの手記を出版してもらいましょう。お医者さまの詳細まで書かれた手記です、私の知識よりもよほど検証されてきています。これをきっかけにお医者さまが学びを得てくれれば、国中の医療の質が上がります。そして私たちが辺境の村で移動販売をすれば、少なくともイスラとライリーの意見は反映できます。そして信用という意味でいえば、デュランド公のお言葉を待つことさえできれば充分です。貴族にも影響力のある店の商品、となれば、最低限の説得力はありますからね」
三人はぽかんと口を開けたあと、揃って笑い始めた。
「ぶはははっ、たしかに! 助けたいだけならエレノアが全部やる必要はねぇな!」
「エレノアちゃんだけの知識に頼る必要もないものね、頭が固かったわ」
「オレ、母ちゃんに聞いてくるよ。ほかにも何か頼んでおこうか?」
「お願いします。あとは、患者さんごとのカルテ……情報をまとめた紙から、年齢と性別だけでも記載できれば充分です。匿名性は保ちましょう」
分かったよ、とライリーが目に浮かんだ涙を拭っている。イスラは笑いすぎてむせてしまったのか、ゴホゴホとせき込んでいる。ユージーンが背中をさすって落ち着いたようだ。
「わたしはいいと思うわ、とても詳しく病魔について書かれていたし、迂闊に解決策だけ提示してしまうより、よほど安心できるもの」
「ありがとうございます。……ユージーンはどうでしょうか。デュランド公のお墨付きだけでは不足ですかね?」
私の言葉に、ユージーンはガシガシと頭をかく。そして「しょうがねえな」と笑みをこぼした。
「そこまで考えてんなら別にいい。お前が断れなくなってたら問題だと思っただけだよ」
「そうだったんですね、大丈夫です。断りにくいのは間違いありませんけど、ちゃんと三人のことも考えている、つもりです」
そりゃ何よりだ、と背中を軽く叩かれる。三人の同意は得られたので、あとはこの線で詰めていくだけだ。




