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異世界でも体は資本ですから!  作者: 魚蟹 類
第十章
74/83

荒唐無稽で現実的

「どうしちゃったのエレノアちゃん、両立はできないからお話し合いをしているのよね?」

「はい、私が二人にならない限りできません。……あ、分裂するわけじゃないですよ」


 頭でもおかしくなったか、熱でも出たかとユージーンがおでこに手を当ててくる。いたって健康体だけど、まあ突拍子もないことを言った自覚はある。


「冗談は置いておきますが。三人の意見をまとめれば、全員の要望は通せると思うんですよ」

「俺も含めてか?」

「結果としては違う形になりますが、理由の方は通せますよ。イスラは国外の人も救う方法として本が出したい、ライリーは自分たちで救う相手なら自分たちの目が届くようにしたい、ユージーンは自分たちで何かやるためにも信用を得たい。そうですよね?」


 そうだね、とライリーが頷く。目的を達成できればいいのだから、手段にこだわる必要はない。


「ライリーとお母さまに許可を得る必要がありますけど……お父さまの手記を出版してもらいましょう。お医者さまの詳細まで書かれた手記です、私の知識よりもよほど検証されてきています。これをきっかけにお医者さまが学びを得てくれれば、国中の医療の質が上がります。そして私たちが辺境の村で移動販売をすれば、少なくともイスラとライリーの意見は反映できます。そして信用という意味でいえば、デュランド公のお言葉を待つことさえできれば充分です。貴族にも影響力のある店の商品、となれば、最低限の説得力はありますからね」


 三人はぽかんと口を開けたあと、揃って笑い始めた。


「ぶはははっ、たしかに! 助けたいだけならエレノアが全部やる必要はねぇな!」

「エレノアちゃんだけの知識に頼る必要もないものね、頭が固かったわ」

「オレ、母ちゃんに聞いてくるよ。ほかにも何か頼んでおこうか?」

「お願いします。あとは、患者さんごとのカルテ……情報をまとめた紙から、年齢と性別だけでも記載できれば充分です。匿名性は保ちましょう」


 分かったよ、とライリーが目に浮かんだ涙を拭っている。イスラは笑いすぎてむせてしまったのか、ゴホゴホとせき込んでいる。ユージーンが背中をさすって落ち着いたようだ。


「わたしはいいと思うわ、とても詳しく病魔について書かれていたし、迂闊に解決策だけ提示してしまうより、よほど安心できるもの」

「ありがとうございます。……ユージーンはどうでしょうか。デュランド公のお墨付きだけでは不足ですかね?」


 私の言葉に、ユージーンはガシガシと頭をかく。そして「しょうがねえな」と笑みをこぼした。


「そこまで考えてんなら別にいい。お前が断れなくなってたら問題だと思っただけだよ」

「そうだったんですね、大丈夫です。断りにくいのは間違いありませんけど、ちゃんと三人のことも考えている、つもりです」


 そりゃ何よりだ、と背中を軽く叩かれる。三人の同意は得られたので、あとはこの線で詰めていくだけだ。


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