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異世界でも体は資本ですから!  作者: 魚蟹 類
第十章
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そして、動き出すか否か

「はー、そんな話が。エレノアちゃんも引っ張りだこだねぇ」


 翌日、レオさんが店まで来てくれた。店の奥でデュランド公の経過報告、とのことだったが、八割方を雑談が占めていた。その中で昨日のセシリアさんからの勧誘をぼかして伝えたら、レオさんは「先越されちゃったかな」と笑った。


「レオさんも何かお話があるんですか?」

「そう、まあこっちも全然急ぎじゃないよ。実はねぇ、辺境の村からも徴兵をしたいんだけどさ、みーんな体格が基準に達してないんだよね。体が軽すぎたり背が低すぎたりで、まともに進んでないんだ。で、エレノアちゃんなら何か知らないかなって思ってたんだけど」


 発育不良なら、それこそ栄養学の分野になる。だけど、それだけなら正式な依頼の形をとってレシピ開発の流れになるはず。そうじゃないということは、本題が他にあるのだ。


「出張の軽食屋さんとか、やるつもりないかなぁ? 月に一回各地の村に行って、そこでガレット出してもらうとか、おれ結構いいと思うんだよねぇ。もちろんその時以外はこの店で働いてもらっていいし、どう?」


 移動販売をしてくれ、ということだろうか。必要な道具や荷車はこちらで用意する、手当も出す、と条件がどんどんと追加されていく。これは前回の勧誘の比じゃないぞ、と笑っている顔が引きつってきたところで、ユージーンが休憩に入ってこちらに来た。


「聞こえましたよレオさん、また勧誘ですか。しかも今度は本気なんですね?」

「失礼だなぁ、おれはいつでも本気だぞ? そうそう、ユージーンもいるから道には迷わないだろうし、地図の読み方も分かるよなぁ。ただまぁ難点と言えば、エレノアちゃんがさっき言ってた出版の話を受けるつもりなら、こっちの提案は断ってもらわないといけないってことかな」


 知識をまとめる、というのは、言葉にしてしまえば簡単だが、かなりの時間と体力を必要とする行為だ。何よりも、本にする以上は情報の流出に細心の注意を払わないといけない。となれば、いつでも店に連絡を取れるようにして、直接原稿を取りに来てもらう必要がある。長期にわたって店から離れる選択肢とは両立できない。


「おれの方も、返事の期限は来週末ってことにしとこうか。どっちをやるか――もしくはどっちもやらないか、それさえ決まっちゃえば返事は一緒でもいいだろうしね。……あっもうこんな時間かぁ、そろそろ戻らないとジジイに嫌味言われるから帰るねぇ。お仕事お疲れ、この後も頑張ってなー」


 そう言って、レオさんはバタバタと店を出ていく。なんだかこの二日間で、かなり大きな選択を迫られてしまった。どうしようかとユージーンを見ると、彼も困ったように笑っていた。


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