作戦
レオさんにデュランド公への話し方を教えてもらったので、事前に話す内容を詳しく決めておく。栄養素の話や脚気という病気については、すんなりとまとまった。
さて、困ったのは提案ではなくお願いに行くという点だった。内容は良いとして、話し方の方である。
「まず、基本的には強い口調は避けるのが無難ですよね。してくださいとか、しなければならないとか、そのあたりは無しで」
「そうね、基本的にはお伺いを立てるのがいいと思うわ。それから、デュランド公のお持ちになった疑問は、はやめに解消したいわよね」
うぅん、とうなり声が出る。貴族相手の接し方はただでさえ気を使う場面が多いのに、うまくやれるだろうか。こめかみのあたりを押さえた私に、ユージーンが笑って言った。
「ま、お前なら大丈夫だろ。お客さん見て話すのと何も変わんねえよ、ちょっとは丁寧にしないといけねえけどな。今回は向こうが先に嫌味な言い方してきやがったし、レオさんが言い返しただけだからお前の立場はまだ普通の庶民だ」
「それに、レオさんはああ言ってたけど、オレはやっぱりエレノアが話すべきだと思う。知識を持ってるっていうのもそうだけど、子どもが貴族と話すっていうのは良くないと思うし」
ライリーを交渉の場に出すわけにいかないというのは、私たちの総意だった。ライリーは正式な従業員ではないのだし、そもそも子どもに交渉をやらせるわけにはいかない。多分レオさんもライリーを主体にしろというわけではなく、あくまでダメ押しの一手、泣き落としはライリーがやるのが効果的だと言いたかっただけだろう。
「にしてもお前、初日より緊張してるな? そんなに不安か?」
「いえ、不安というのもあるにはあるんですが。前回、レオさんが私の分まで啖呵を切ってくださったので、それがちょっと……その思いを裏切るわけにはいかないな、と」
「……肩に力が入ってしまっているわね。エレノアちゃん、心配しないで? わたしたちも側にいるわ、何かあったらわたしたちもお話できるもの。不安に思う必要はないのよ」
イスラがそう言ってほほ笑んでくれるけど、緊張はほぐれない。今目の前にいる三人の生活は、以前から私にかかっているわけだけど。今回はその比じゃないくらい、明確に私の言動が響いてくるのだ。
「エレノア、大丈夫だよ。オレも緊張してるからエレノア一人じゃないよ。もし大変なことになったら、オレ、殴ってでも貴族を止めるから」
「殴るな、事態が悪化すんだろ」
ライリーの慰めにユージーンが突っ込みを入れる。それを見ているイスラが穏やかに笑う。この光景が私の一言で変わるかもしれない。
緊張は残ったままだけど、覚悟は決まった。




