ファーストコンタクト
「よぉし、到着だよ。ここがデュランド家のお屋敷。さっそく中に入ろっかぁ」
周りの建物に比べて少しだけ華やかな邸宅に案内された。シューリスさんの家もかなり大きいと思ったけど、中央の建物はやっぱり格が違う。レオさんが四回ノックをすると、ギィと軋んだ音がして扉が開いた。
「……お待ちしておりました、お入りください」
使用人の男性が、奥の部屋へと先導してくれる。壁によく分からない布が掛けてあったり、ただの燭台がやけに豪華だったり、とにかく落ち着かない廊下を通る。廊下の突き当りに見えるのは旗だろうか。お金持ちが家に絵を飾る文化は前から理解できなかったけど、旗はもっと分からない。
「あの、ご依頼はご当主様からということでいいんでしょうか?」
「……はい」
ずいぶんと会話のテンポがゆっくりな人だ。いや、もしかしたら上流階級ではこれが普通なのかもしれない。お金持ちに対するイメージが固まってなさ過ぎて、何もかもに疑心暗鬼になってしまう。あの旗、私からすればちょっとダサいんだけど、あれがいい感じのセンスなんだろうか。
「ねぇイスラ、あの布なんかぎらぎらで目が痛いんだけど、あれが普通なの?」
「普通ではないわ。そうね、その、威厳を感じるわよね」
イスラから見てもちゃんとダサいらしい。よかった。
そんな話をしていると、他より重厚な扉の前で使用人さんが立ち止まる。「どうぞ」と扉を開けて、入室を手でうながした。
部屋に入ると、そこは書斎のような作りをしていた。本は全然ないから、執務室といったところだろうか。ダークウッドのデスクの向こうには、車いすに座っている男性がいた。
「失礼致しますよ、デュランド公。お客人を連れてきましたんで」
レオさんの言葉に、慌てて頭を下げる。拙い作法だけど、私のことを知っているデュランド家相手なら、これがちょうどいい。あまりにきれいな作法だと「身の程をわきまえず貴族文化にかぶれた庶民」とみなされるのだ。理不尽な話である。
「……顔を上げると良い、遠いところをよく来たな。さぞ珍しいものも多かったのではないか」
言葉選びは優しげだけど、言葉尻がまあまあきつい。これは多分、いや絶対に皮肉だ。その証拠に、レオさんもユージーンも眉を寄せている。
「本日はわたくしどもへご依頼いただき、光栄に存じます」
イスラがそつなくあいさつを述べる。その時のお辞儀の仕草で、イスラは私たちの中で比較的身分が高いほうだと分かったのか、デュランド公はイスラに向かって話し始めた。
「そなたたちのような草木の民の手を借りるのは心苦しいが、我々も背に腹は代えられぬ。相応の働きを期待しよう」
イスラの表情が固まる。この国では、富裕層や知識階級を花とし、労働階級や庶民を草と呼ぶ。民草みたいに使うが、この国でそう呼ぶのは思い切り蔑称にあたる。
――つまりこのジジイ、助けを求めておきながら私たちを見下しやがったのだ。




