ともあれ、仕事
あまりの言い草に何も言えずに立ち尽くす。今口を開いたら、暴言しか出てこない気がする。あくまで仕事上の付き合いなんだから、表面だけでも穏便に。そう思って深呼吸をする。
しかし、私が何かを言う前にレオさんが一歩前に出た。
「ご期待以上の活躍を約束しますよ、見とけクソジジイ」
……部屋の温度が三度くらい下がった気がする。ユージーンは笑うのをこらえてるけど、私とイスラはそれどころじゃない。ライリーは口の悪いレオさんを見て、ようやく馬鹿にされたことに気づいたようだった。
「レオ、部外者が口を挟むな」
「部外者? おれが? ここまで案内してやったのに悲しいなぁ。そもそも他家のおれに案内させた時点で大概でしょうよ」
それもそうだ。デュランド公はレオさんと争っても無駄だと思ったのか、ため息をついて「本題だ」と話題を変えた。
「そなたたちは食で病魔を祓っているそうだな。その手腕を発揮してもらう。二週間以内に結果を出せなければ……分かるな?」
ひどい話だ。考えは理解できるけど、今まで試したこともないだろう手法が、二週間で効果が出ると考えているのが本当にひどい。食事療法は長い目で見る必要があるのに、その猶予は与えられないということだ。
「お約束いたしかねます。食事以外の生活も改善していただく必要性が出た際にはそちらも徹底したうえで、少なくとも三ヶ月は様子を見ていただく必要があります」
「長い。しかし、まあいいだろう。ひと月だ。それ以上は待たぬぞ」
「……かしこまりました。では、ひと月お時間をちょうだいします」
ライリーが不安そうに私を見ているけど、問題ない。交渉の時には、自分の希望よりも無茶な要求をしておいて譲歩したように見せるものだ。
了承を得たので、さっそく仕事に取り掛かるため部屋を出る。行き先は主治医のもとだ。
「すみません、こちらの専属治癒魔法士の方はどちらに?」
「……先日、解任されました」
は、と声が漏れる。先日解任された、というのに対して間が悪いなあなんて思うほど鈍感じゃない。病がよくならないからと痺れを切らしたのだろう。 どうやらこの家、そうとう堪え性がないらしい。
「じゃあ、普段の食生活から聞かせてください」
そう言って厨房に案内されたが、以前イスラから聞いたような食事内容ということだった。上質なパン、野菜、魚、フルーツと、栄養素が欠けている印象はない。
炭水化物もタンパク質も食物繊維もきちんと摂れているのに、いったい何が足りないんだろうか。ライリーのお父さまの手記を、また確認させてもらわないといけないだろう。




