レオ・エズモンド
「エズモンドさまは、今回のお話についてはどの程度ご存知なのでしょうか?」
中央区に入って少し歩き、人通りのあまりないところまで来たとき、イスラがそう尋ねた。
「詳しいことは何も聞いてないんだね?」
「ええ、最近はやっていることと、受け継がれてしまっている病ということ以外は何も。どなたからの依頼なのかも存じ上げておりません」
レオさんは「そうかぁ」と目線をさまよわせると、「おれも詳しいわけじゃないんだけどさぁ」と、にへらと笑った。
「中央だと高貴病って言われててさぁ、高貴な家の奴ほどかかりやすいとかなんとかいうんだよね。ほんとかどうかは分かんないけど、まあ言われるだけはある家の奴からの依頼だし、名前くらいは聞いたことあるかもね。デュランド家って知ってる?」
知っているも何も、ガルニエで商業区画の管理を担っている名門貴族の名前だ。私の店に営業許可を出したのもデュランド家だし、様々な騒動を知っていてもおかしくはない。思っていたよりも、はるかに大きな仕事を受けていたらしい。下手を打つと店の存続に関わる。
「症状は確か、なんか手足のしびれが全然よくならないらしいんだよねぇ。おれもそれ以上は知らないし、多分ちゃんと話してくれるよぉ。ライリーくんは、何か聞きたいこととかある?」
急に話を振られたライリーが、肩をはねさせる。そして、見上げるような状態で「アンタ何者なの?」と聞いた。
「ユージーンの前の雇い主って言っても、オレ、何も知らないし。ソクリョーとかいうのをやってたのは聞いたことあるけど、それが何なのか分かんないし、なんでアンタが中央にいるのかも分かんない」
「あーそっか、じゃあまずは測量っていうのが何かから話そうかな」
レオさんはにっこりと笑って、ライリーを隣に来させた。
「測量ってのは、地図を作るお仕事ね。国中を歩いて、どこの地形がどんな感じってのを、正確に紙に描いてくの。海の側も山の中も、都会の街も辺境の村も全部歩いて行ったんだよ。んで、山の中とかで紙に向かって集中するもんだから、獣とかにも襲われるでしょ。そこで、ユージーンにはおれの身の安全を守ってもらってたんだよ」
「なんで地図を作るの?」
「まぁ、一番は他国に攻められたらどこをどう守らなきゃいけないかを考えるためかな。おれはエズモンドって家の次男なんだけど、エズモンドって軍事に関わってる貴族の家なんだ。だからおれ、見えないと思うけど一応お偉いさんの端くれなんだよぉ」
ライリーが「ほんとに見えない」と言うと、レオさんとユージーンが揃って「だよな、見えないよなぁ」「ライリーくんは見る目あるねぇ」と笑っている。貴族にそういうことを言うのは肝が冷えるからやめてほしい。ライリーはすっかり緊張が解けたようだった。




