昔馴染みとの再会
シューリスさんに返事をしてから十日後。中央区に入るための許可証が出たので、私たちは中央区へと向かった。南区の人波から東区の坂、そして張り詰めた中央の空気に、ライリーと私はすっかり疲弊していた。ユージーンは体力があるし、イスラは慣れているからか何ともないようだ。
貴族の邸宅は中央区にあるけど、中央区を歩くには許可証のほかに案内人が必要だ。庶民が変なところに入り込んだら困る、ということなんだろう。案内人を待つ間、ライリーと二人でそわそわしている。
「ねえ、オレやっぱり場違いじゃない? ほら周りの人もなんか、オレを見る目が厳しい気がする」
「気のせいよ、ライリー。場違いだなんてこと、あるわけがないわ」
「私はライリーの気持ち、分かりますよ。緊張なんてものじゃないですよね、見てください手汗がひどいことに」
「見せんな拭いとけ。それに周りの奴なんか気にすんなよ、俺たちは正当に招かれてんだから」
ユージーンに背を軽く叩かれるが、緊張はとれない。前にイスラと一緒に寄宿学校に行ったときのような、お上品な人たちが中央区に入っていくのだ。おんなじ土を踏んでいいんだろうか、とためらってしまう。
下を向いてスカートを握りなんとかやり過ごしていると、前方から「誰かと思えばユージーンじゃないかぁ」と間延びした声が聞こえた。
「レオさん! 久しぶりです、元気してましたか」
「おー、まぁおれは変わんないさ。おまえの方も元気そうで何よりだよ」
イスラが「お知り合いの方?」と尋ねる。ユージーンは「まあちょっとな」と言って、私たちが案内人を待っていることを告げた。
「なぁんだ、南区からの客っておまえのことかぁ。おれが案内人だよ、お待たせぇ。初めまして、レオ・エズモンドです。よろしくね、気軽にレオお兄さんでいいよー」
「俺の、前の雇い主だ。まあ……適当にあしらってもいいから。レオさんもうお兄さんとか言える歳じゃないでしょう」
ユージーンの以前の雇い主というと、測量士の人だ。なんというか、印象としてはちゃらんぽらんだけど、本当にそんなすごい人なんだろうか。
「レオさん、こいつがエレノアです。俺の今の雇い主で、オルコットの出身です。こっちがライリー、北区に住んでます。これがイスラ、治癒魔法士です」
紹介されたので頭を下げると、レオさんは「オルコット、昔行ったなぁ。大エビとオイスターのうまいとこだよねぇ」と頷いている。
「じゃ、さっそくだけど行こうかぁ。今回は奥の方まで行くから、はぐれないようにねー」
そうしてゆっくりと中央区に入る。そこはまさに別世界で、文明がひとつくらい進んでいるようなレベルで違いがあった。あれは水道だろうか、と下町との違いにびっくりする。多分衛生とかも進んでいるだろうに、一体どんな病気がはやっているのか。中央区に入るなり、分からなくなってしまった。




