団結
「ダメだ」
ユージーンが一言そう言った。
「オレもちょっと嫌だな」
ライリーも嫌な顔をする。イスラはというと、困ったような顔で「わたしは良いと思うのだけれど……」と呟いていた。
会議を始めてすぐ、シューリスさんから貴族へ紹介してもいいか聞かれたと伝えた瞬間に、ユージーンが断固反対の姿勢を見せた。彼は測量士の護衛をやっていたから、貴族相手に何かしらの思うところがあるんだろう。地図の作製は民間ではなく、貴族や軍部の管轄になるはずだ。ライリーは、そもそもお金持ちに対して良い印象を持っていない。当然のことだ。イスラは慣れなのかいい人たちに囲まれていたからか、反対はしていないようだ。
「でも、貴族に認められればもっといろんな人にお店に来てもらえるようになるんでしょ? だったら、オレは反対できない」
ライリーがそういうと、ユージーンが「いい奴とは限らない」と目つきを鋭くした。
「便宜を図ってやるから安くしろだの、貴族に売るなんて光栄なことなんだから配達料を取るなだの、とんでもねえことを吹っ掛ける貴族は多い。城下で営業してる軽食屋に貴族からの依頼なんて入っても、知名度には繋がらねえしな」
「ですが、助けを求めている人は確かにいます。少なくとも、シューリスさんの顔を立てることにはなりますよ」
まあな、とユージーンもそれには頷く。それでもやっぱり、ユージーンにも譲れない部分はあるらしい。
「イスラはどうなの?」
「えぇと、わたしはエレノアちゃんに賛成よ。貴族の方でもそうでなくても、助けを求められたらそれに応えるのが治癒魔法士だと思うもの。ただ、やっぱり難しいお願いをされることも多いものだから、気を付けないといけない部分はあると思うわ」
「富裕層出身のイスラがこう言ってんだ。俺らがどうすれば、貴族に一方的に搾取されることなく、問題を解決できるんだ?」
ユージーンの意見はもっともだけど、貴族も王様もガルニエに住んでいる以上、私にとっては「街の人」だ。そこに区別をつけるべきじゃないと思う。
「方法はまだ分かりません。でも、私たちなら不可能じゃないと思います。ユージーンはしっかりと芯がありますし、ライリーは物怖じせずに意見を言えます。イスラは知識に裏打ちされて発言に説得力がありますから、よほど政治的な問題でない限り、一方的にやり込められることはないと思います。私は、貴族だろうと労働者だろうと、大人だろうと子どもだろうと、適切な処置を受けるべきだと思います」
異世界でも体は資本なのだから。そう伝えると、ユージーンは頭をかく。
「分かった。ただし、手に負えなければすぐに引くぞ。それなら貴族のために動いてやってもいい」
意見は固まった。貴族の問題がどの程度のものかは分からない。それでも、きっと四人でなら何とかなる。そんな風に思えた。
明日から新章に入ります。前後編に分かれる予定なので、長くお付き合いいただけると幸いです。




