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異世界でも体は資本ですから!  作者: 魚蟹 類
第七章
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可能性

 シューリスさんのお宅から帰ると、ライリーとユージーンが「おかえり」と迎えてくれた。

テーブルには、一冊の手記が置かれている。形は少し不格好だが、きちんと製本されたものだ。表紙には「病について」と書かれており、タイトルの下には小さく「オーウェン・スミス」と書かれている。ライリーのお父さまの名前だ。


 昨日の話し合いの後、ライリーはイスラに「どんな病気か分かったら教えてほしい」と言った。最近になり様々な病気について記されたお父さまの手記が見つかり、内容が気になるため勉強したいのだという。イスラはそれに快く頷き、今日こうして勉強会および対策会議が開かれたのだ。


 イスラが手記をめくる。病名、原因、治療法……それらが大まかに記入されている。とはいえ、素人目に見れば十分な情報量だ。


「思った以上に種類が書かれていますね。肺炎に心筋梗塞、がんに脳卒中までありますね」


 ページの下の方に目を滑らせていく。基本的に箇条書きの羅列だから、とても読みやすい。どんどんと読み進めていると、ライリーとイスラの話し声が耳に入った。


「ねえイスラ、これなんて読むの?」

「え? うーん……わからないわ、ごめんなさい。ユージーンは読めるかしら?」

「いや、読めねえな。エレノア、これ分かるか」


 ユージーンが指した場所には、カリウムと書かれている。それを伝えると、「へえ、そう読むのか」と言ったのだが、そこで気付いた。


 ――これ、日本語で書かれた部分がある。


 そう言えば以前ライリーが、「父ちゃんが卵には栄養があるって言ってた」と話してくれていた。でも、栄養の概念はガルニエどころかオルコットでも認識されていない。日本語もカリウムの存在も、この世界で生まれ育ったお父さまは、知る由もなかったはずだ。


 もしかして、と考える。ライリーのお父さまも、私と同じだったのかもしれない。


 私がもっと早くこの街に来ていれば、話が聞けただろうか。もしくはもっと早く生まれていれば、お父さまと協力してもっと多くの人を救えたかもしれない。なにより、「自分だけ違う」という思いを持たずにいられたかもしれない。


 じっと黙って考え込んでいると、ユージーンが「これじゃねえか?」と私の肩を叩いた。その声にはっとして手記に目線を落とすと、そこには「骨軟化症」と書かれたページが開かれていた。


 骨軟化症。幼少期だとくる病と呼ばれるが、大人が発症すると名前が変わる病気らしい。主な症状は骨痛や骨の変形、低カルシウム血症。後遺症によって骨粗しょう症になってしまう可能性もある、らしい。


「原因として考えられるのは、後天性の場合、ビタミンDやカルシウムの不足……」


 つまり、栄養不足。ようやく、私のできることが見つかったようだ。


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