表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界でも体は資本ですから!  作者: 魚蟹 類
第七章
PR
47/83

力不足

 シューリスさんの家は、東区の中でも一番大きな坂の中腹にあった。たしかにこれは、妊婦さんは出歩かせられない。旦那さんがうちの店に配達の申し込みに来たのも頷けた。


 扉の前に立ち、イスラが四回ノックをした。ギィ、と音を立てて扉が開く。そこには、使用人らしき女性が立っていた。


「突然おじゃましてすみません、南区で軽食店を営んでいるエレノア・アルダーソンと申します。当店の従業員から奥様の体調がすぐれないと聞き、お見舞いに伺いました。こちらは従業員兼、治癒魔法士のイスラ・センツベリーです」


 イスラが静かに頭を下げると、女性もおずおずと頭を下げた。そうして奥に案内され、奥様の寝室に通された。ベッドには華奢な女性が横たわっていて、物音に気付いたのかうっすらと目を開けるところだった。


「奥様、あの男の子が魔法士の先生を紹介してくださいましたよ」

「……まあ。心配をかけてしまったようで、あの子に申し訳ないわね」


 奥様は「こんな姿でごめんなさいね」と、ベッドの中で体を起こす。イスラがすかさず「ご無理はなさらず、楽な体勢でお話をさせてください」と言うと、奥様はお言葉に甘えて、とベッドヘッドに寄り掛かった。


「ええと、そちらの方は?」

「エレノア・アルダーソンです。ライリーとこちら、イスラの雇い主です」

「あなたが……。いつもおいしいお昼を届けてくださって、ほんとうに感謝しています。私はイヴ・シューリス、気軽にイヴとお呼びくださいな」


 イヴさんはそういうと、使用人さんにお茶の用意を申し付けた。使用人さんが部屋を出ていき、寝室には私たち三人だけになる。


「さっそく本題に入らせていただくのですが、足の痛み以外にお困りのことはございませんか?」

「今のところはありません。……あぁでも、手も少し力が入りにくいかしら……?」


 イスラは「失礼します」と手をかざし、軽く微笑んだまま原因を探っている。私に何かできることはないだろうかと考え、いくつか気になった点を質問してみることにした。


「イヴさんは、普段はどういったお食事をなさっているんですか? 何が食べられないとか何がお好きとか、ありますか?」

「そうですねぇ、生きていたもののお肉は頂きません。豚とか鳥とかサーモンとか、どうにも苦手で。チーズやミルクは平気ですけれど、体はどうにもだめね。お豆は好きだから、よくいただいていますよ」


 ベジタリアンに近い食生活、ということか。妊娠されていることを考えると、充分とは言いにくいものがある。一人だけの体じゃないと言われるように、栄養が不足しやすくなってしまうのだから。


「とりあえずの処置ですけれど、足の痛みは治させていただきますね。ただ、イヴさんのお体に病魔の類は見当たりませんから、なにかほかの原因があるものと思われます。少しの間、こちらに通わせていただいても?」


 イヴさんは治癒の感謝を述べ、往診の申し出を喜んで受けてくれた。とはいえ、イヴさんの病魔がいないとなれば考えられるのは生活習慣だ。イスラの治癒だけでは、問題は解決しないかもしれない。


 私も何か力になれればと思うけど、今回ばかりは何の原因も思い当たらない。歯がゆい思いをしながら出されたお茶をいただき、とりとめもない世間話をして、シューリス邸を後にした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ