気づき
「ねえ三人とも、後でちょっといいかな」
宅配の帰り、ライリーが私たちにそう声をかけた。何かあったかと手を止めようとすると、ライリーからの制止が入る。
「後でいいっていうか、ちゃんと話さなきゃいけないと思うから。仕事終わってから、時間をとらせてほしい」
その目はかなり真剣で、どうやら深刻な問題らしい。店の外で掃除をしているユージーンにも声をかけて、洗い物を続ける。イスラは店内の掃除をしながら、ライリーと話をしていた。
「一体どんなお話かしら。なにか嫌なことがあった、というわけではないわよね?」
「うん、そういうのじゃないよ。でも多分、イスラの意見が一番必要になると思う。お客さんの体調の話」
「確かに、それはちゃんと聞かなくちゃいけませんね。ちょっと待っててください」
掃除から戻ったユージーンが洗い場に来て、洗った食器を受け取ってくれる。おかげで早く終わりそうだ。ライリーとイスラには座って待ってもらって、さっさと仕事を済ませてしまう。
手を拭いてライリーの正面に座る。ユージーンに紙とペンを渡し、全員の顔を見回してから本題に入る。
「さてライリー。お客さんの体調の話とは、いったいどういった状況でしょうか」
「えっと、オレがそう思ったってだけだから、確信はないんだけどさ。東区のシューリスさん、奥さんのイヴさんがさ、足が痛くて歩けないって言ってたんだけど、ここ最近の話みたいなんだ」
「けがを放っておいたとかじゃねえんだよな? 治りが悪くて痛みが続くってのは、まぁある話だけどよ」
ライリーは言葉を選びながら、たどたどしく説明する。ユージーンの疑問に首を振って、「そういうのはないって言ってた」と目線を下げる。
「歩けないほどの足の痛みは、動かさずにいればよくなることも多くあるわ。けれど、ライリーがわたしたちに知らせてくれたからには、何かそうじゃないと考える理由があるのでしょう?」
「理由っていうか、もし何かあればまずいなって思って」
イスラの問いに、ライリーは少し迷ったそぶりを見せる。やがてユージーンに「言ってみ」とうながされて、しっかりとイスラと目を合わせた。
「イヴさん、妊婦さんなんだ」
その言葉に、思わず「えっ」と声が出る。注文をしに来たのは旦那さんだったから、そんな事情があるとは知らなかった。たしかに妊婦さんなら、病気の可能性は潰しておきたい。
ライリーは意志を宿した目でじっと黙って座っているが、今度はイスラが冷静でなくなってきた。
「大変よ、妊婦さんなら病魔はお腹の子を狙い始めてしまうもの。一刻も早く治癒をしないといけないわ。ライリー、イヴさんにほかの症状はあるかしら?」
「ほかには特に聞いてないよ、ほんとにそれだけ」
そう、と呟いて、イスラが私に振り向く。医者の顔をしている。
「エレノアちゃん、わたし明日シューリスさんを訪ねるわ。いいかしら」
明日は定休日だ、だめと言う理由もない。ユージーンに「責任者になるんだから、エレノアも行ってこい」と背を押され、シューリスさんの家を訪ねることが決まった。




