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異世界でも体は資本ですから!  作者: 魚蟹 類
第七章
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気づき

「ねえ三人とも、後でちょっといいかな」


 宅配の帰り、ライリーが私たちにそう声をかけた。何かあったかと手を止めようとすると、ライリーからの制止が入る。


「後でいいっていうか、ちゃんと話さなきゃいけないと思うから。仕事終わってから、時間をとらせてほしい」


 その目はかなり真剣で、どうやら深刻な問題らしい。店の外で掃除をしているユージーンにも声をかけて、洗い物を続ける。イスラは店内の掃除をしながら、ライリーと話をしていた。


「一体どんなお話かしら。なにか嫌なことがあった、というわけではないわよね?」

「うん、そういうのじゃないよ。でも多分、イスラの意見が一番必要になると思う。お客さんの体調の話」

「確かに、それはちゃんと聞かなくちゃいけませんね。ちょっと待っててください」


 掃除から戻ったユージーンが洗い場に来て、洗った食器を受け取ってくれる。おかげで早く終わりそうだ。ライリーとイスラには座って待ってもらって、さっさと仕事を済ませてしまう。


 手を拭いてライリーの正面に座る。ユージーンに紙とペンを渡し、全員の顔を見回してから本題に入る。


「さてライリー。お客さんの体調の話とは、いったいどういった状況でしょうか」

「えっと、オレがそう思ったってだけだから、確信はないんだけどさ。東区のシューリスさん、奥さんのイヴさんがさ、足が痛くて歩けないって言ってたんだけど、ここ最近の話みたいなんだ」

「けがを放っておいたとかじゃねえんだよな? 治りが悪くて痛みが続くってのは、まぁある話だけどよ」


 ライリーは言葉を選びながら、たどたどしく説明する。ユージーンの疑問に首を振って、「そういうのはないって言ってた」と目線を下げる。


「歩けないほどの足の痛みは、動かさずにいればよくなることも多くあるわ。けれど、ライリーがわたしたちに知らせてくれたからには、何かそうじゃないと考える理由があるのでしょう?」

「理由っていうか、もし何かあればまずいなって思って」


 イスラの問いに、ライリーは少し迷ったそぶりを見せる。やがてユージーンに「言ってみ」とうながされて、しっかりとイスラと目を合わせた。


「イヴさん、妊婦さんなんだ」


 その言葉に、思わず「えっ」と声が出る。注文をしに来たのは旦那さんだったから、そんな事情があるとは知らなかった。たしかに妊婦さんなら、病気の可能性は潰しておきたい。


 ライリーは意志を宿した目でじっと黙って座っているが、今度はイスラが冷静でなくなってきた。


「大変よ、妊婦さんなら病魔はお腹の子を狙い始めてしまうもの。一刻も早く治癒をしないといけないわ。ライリー、イヴさんにほかの症状はあるかしら?」

「ほかには特に聞いてないよ、ほんとにそれだけ」


 そう、と呟いて、イスラが私に振り向く。医者の顔をしている。


「エレノアちゃん、わたし明日シューリスさんを訪ねるわ。いいかしら」


 明日は定休日だ、だめと言う理由もない。ユージーンに「責任者になるんだから、エレノアも行ってこい」と背を押され、シューリスさんの家を訪ねることが決まった。


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