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異世界でも体は資本ですから!  作者: 魚蟹 類
第六章
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おすそ分け

「よう、店長さん」


 休憩後にカウンターに立つと、男性に声をかけられた。店のベンチを作ってくれた、職人のハーヴェイさんだった。そろそろ列も消化されてきて、店内も落ち着いている。


「いらっしゃいませ、ハーヴェイさん。作っていただいたベンチ、好評ですよ」

「そうか、良かった。それはそうと、店長さんはきのことか使うか?」


 聞けば、南の林できのこを採ってきたのだという。猟師の友達がキジの狩猟をするのでついていったところ、きのこも大量に生えていたらしい。


「この後詳しいやつに見せに行くんだが、たぶんクリフウセンタケだ。仮に違ったとしても、茶色のきのこは食えるって話だからな」

「そうなんですか? 初めて聞きました……あ、でも確かにそうかもしれません」


 茶色のきのこ、と言われて思い浮かぶのは、ぶなしめじやエリンギ、しいたけやなめこといったおいしいきのこの数々だ。毒きのこといえば派手な色合いがイメージされるし、食用きのこは地味な色のものが多いのも確かだろう。


 ハーヴェイさんはきのこの調理法を聞きに来たそうだ。なんでも、鑑定ついでに調理法も聞いてこい、と奥さんに言い含められたんだとか。


「やっぱり、定番はバター炒めでしょうか。ポトフやスープに入れてもおいしいですし、マリネもいいと思います」

「なるほどな。とりあえずバターで食ってみるか」


 私としてはバター醬油やみそ味も捨てがたいけど、ないものは仕方ない。昔はいずれ作ってやろうと思っていたけど、作り方もなにも分からない状態からスタートするのは現実的じゃなかった。今もこの世界に醤油は存在しないままだ。


 でも、もしかしたら和風の出汁くらいは何とかなるかもしれない。しいたけを干して水で戻せばいいんだから。……とはいっても、みそ汁は作れないんだけど。茶碗蒸しくらいならできるだろうか。


「ついでだ、ベンチも見てってやるよ。がたつきはないか?」

「いいんですか? ありがとうございます。今のところは問題ありませんよ」


 ハーヴェイさんがベンチの確認をしている間に、他のお客さんの注文を通す。そろそろ三時になるころなので、少しずつ店を閉める準備を始めてもいいだろう。午前中に来店されたお客さんの話によれば、マルシェは正午までだったらしい。そろそろ新しいお客さんが入ることもなくなるだろう時間だし、ちょうどよかった。


 ハーヴェイさんは点検を終えて、「今のところは問題ないな」と声をかけられる。端の方に多少のささくれが見られるが、普通に使う分には刺さる位置でもないし、次の点検の時に道具を持って来れば間に合うとのことだった。


「じゃあな、店長さん。あぁ、よかったらこれ貰ってくれな――」

「お待ちください、そちらのきのこは毒があります!」


 ハーヴェイさんの言葉を遮って、イスラの声が大きく響いた。


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