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異世界でも体は資本ですから!  作者: 魚蟹 類
第一章
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ユージーン・ギレット

 男性は、名前をユージーン・ギレットといった。私の言った、栄養バランスが気になったらしい。


「ユージーンさんは、お仕事は何を?」

「あー……今は休業中だけど、前は測量士の護衛をやってた。俺、火の魔法士なんだよ」


 だから職がないわけじゃない、となぜか少し強めに言われた。仕事の質問って、異世界だとそう取られてしまうのか。ごく普通の質問だと思ってたけど、そもそも地元じゃ全員顔見知りだったから職業なんて尋ねたことはなかった。気を付けよう。


「で、なに探すんだ? テツブンってやつを見つけに行くのか?」

「いえ、鉄分はいろんな食べ物に入ってるんです。だから鉄分が豊富な食材を探せばいいんですけど……」


 ここで問題なのが、価格だ。あまりに高価なもので解決しても、それは定期的な摂取には繋がらない。ということで、香辛料系は除外。バジルやタイムなんかは鉄分が多いのだけど、研究熱心で食事を抜くことも多いセシリアさんが、スープや凝って作られている料理をゆっくり食べる生活を続けられるとは思えない。多分あの人、現代日本ならカップ麺や栄養バランス食品で生活してるタイプの人だ。食事を用意する奥さんの負担も大きいものになってしまうし。


 となれば、片手で食べられるようなものがいいだろう。そして、夏場はともかくとしても、常温で保存のきくもの。


「ユージーンさん、このあたりにドライフルーツを扱っているお店はありませんか?」

「ドライフルーツ? あー、あったかな……。普通の果物じゃダメなのか?」

「ダメということはありませんが、効率が悪いですね。手軽に食べられる量じゃないです」


 ユージーンさんは少し考えると、東の方にあるマルシェを提案してくれた。いってしまえば、安売りの市場。まさに的確な提案だった。東側というと私の生活圏からは外れるから、思いつきもしなかった。近場にあるマルシェは、果物は新鮮なものがメインなのだ。


「ではさっそく行きましょう。東側といえばこっちですね!」

「そっち西だぞ」





「エレノアはなんで、エイヨウとかいうものを知ってたんだ?」


 ユージーンさんに先導してもらっている道中、そう問われた。そりゃそうだ、気になるよな、今まで存在も知らなかった概念を持ち出されたんだから。


 とはいえ、ありのままを伝えたところで信じてもらえるとは思えない。適当に笑い話っぽく本当のことを言っておけば、深く突っ込まれることはないだろう。


「実は、生まれる前の記憶がありまして。そこでは当たり前のように根付いた考えだったんですよ」


「へえ……まあ、そういうこともあるのかもな。世の中、なにがあるかわかんねえし」


 うそ、この人まさか、まるっと信じた? 異世界人はよく分からないな、と衝撃を受ける。


 故郷の漁村・オルコットでは、海と洞窟の神を信仰している人がほとんどだった。教義としては、一日に一度は魚介類を食べること、というもの。海の恵みを享受することで感謝を示す、ということらしい。そのおかげか極端な栄養の偏りは見られなかったので、バランスをわざわざ気にすることも、言及することもなかったのだ。


 そしていざ言ってみたらこの反応。信心深い人が多かったり魔法があったりと、私からすれば非現実的なことでもとりあえず信じてみる、のスタンスなのかもしれない。異世界に生まれ変わってる時点で、現実もなにもないかもしれないけど。


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