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異世界でも体は資本ですから!  作者: 魚蟹 類
第六章
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目利き

 朝ごはんも食べ終わり、今日の予定の確認だ。私は店を早めに閉めてマルシェに買い出しに行き、イスラは寄宿学校に荷物を取りに行くらしい。授業が終わってから学長に会いたいとのことだったので、午前中にアポを取りに行くそうだ。もしかしたら、イスラの帰り道にでも鉢合わせるかもしれない。


 九時に来てくれたライリーに食材のチェックを頼んで、生地作りに取り掛かる。南区でもマルシェが開かれるそうだから、少し多めに作っておこう。


「エレノア、ちょっといい?」


 ライリーに呼ばれて側に行くと、「これなんだけど」ときのこを指さされた。


「これ、見たことないきのこなんだけど、何だろうって思って」

「これは……マッシュルームじゃない、ですよね……? なんでしょう、これ」


 白くて小さいきのこが、マッシュルームに混じっていた。見た目が微妙に違うし、かなり怪しい。きのこは初心者には見分けがつかないし、少しでも変なら捨てた方がいいんだろうけど、そもそも素手で触れていいものなのかもよく分からない。


 どうしようかと頭を悩ませていると、イスラが「どうかしたの?」とのぞき込んできた。


「あら? これ、ウスキモリノカサよね」

「え、分かるんですか?」

「ええ、お薬の勉強にもなると思って、きのこも色々調べたの」


 思わぬ心強さだ。イスラはそのきのこをつまみ上げると、においをかいで頷いた。


「まだ若いし食べられるけれど、いちおう取り除いた方がいいかもしれないわ。わたしの見立てが間違っていたら、テングタケの一種かもしれないもの」

「テングタケだとなにかまずいの?」

「毒きのこが多いの。だから避けた方が安全よ」


 イスラの意外な知識に少し驚く。もしかしてハーブなんかにも詳しいのかと聞くと、イスラは照れたように「かじった程度の知識よ」と笑った。


「ハーブときのこと、それからお茶も学んだわ。どれも素人知識だから、誇るものでもないのだけれどね」

「お茶ですか?」

「ええ、とってもおいしいのよ。きっとエレノアちゃんも気に入ると思うわ」


 お茶の淹れ方や道具を聞く限り、緑茶ではなさそうだ。やっぱり紅茶なんだろうか、ウーロン茶は淹れ方が分からないのでもしかしたらそっちなのかもしれない。


「お酒以外で味のする飲み物って、なんか違和感」

「茶葉なんて高級品ですからね、私も飲んだことないです」

「わたしも頻繁に飲んでいたわけではないけれど、気分が落ち着くから好きよ」


 お茶の成分には、リラックス効果を持つものがあったはずだ。確かにそう考えると、お金持ちが会談の場で飲むのは不思議じゃない。お偉いさんになればなるほど、返事ひとつで大金が動くようになるのだから。


「ハーブで作ればお金はあんまりかからないから、今度淹れるわね」

「うーん……オレはいいや。ハーブって薬の味でしょ」

「私はお願いしたいです。価格によっては、店で出すのもいいかもしれませんし」


 「楽しみだわ」と笑ったイスラは、無邪気な顔をしていた。


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