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異世界でも体は資本ですから!  作者: 魚蟹 類
第六章
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朝食

 井戸の水が冷たく感じる日が出てきたころ、ウズラの肉がマルシェに並ぶようになってきた。季節はもうすぐ秋に差しかかる。厨房にいても暑苦しさはなく、涼しい風が心地いい。


 今は朝の七時、イスラが来てから一週間だ。今日はイスラは休みの日なので、ゆっくり起きてくるだろう。ライリーの配達も今日はないし、ユージーンは人手が足りなくなる昼前に来るはずだ。


 井戸から水を汲んで店に戻ると、イスラが店の前の掃除をしてくれていた。


「エレノアちゃん、おはよう。」

「おはようございます。イスラは今日お休みなんですから、仕事はしなくていいんですよ?」

「うーん……おつとめとしてやらせてほしいわ。いつもやっていたものだから、なんというか落ち着かないの」


 そう言われてしまうと、私としては何も言えなくなってしまう。ここは彼女を立てて、朝ご飯の準備をした方がいいだろう。そう思ってイスラに「じゃあお願いします」と声をかけて、厨房に入る。


 イスラはたまごが食べられないから、目玉焼きは出せない。正直いちばん楽なんだけど、まあ仕方がない。ライ麦パンを切ってハムを乗せて、野菜は昨夜のラタトゥイユでいいだろう。


 ガルニエに出てきてから知ったことだけど、この街では朝から火を使うものはあまり食べないらしい。富裕層が食べているかな、というくらいで、庶民の間では一般的ではない。その分昼食はスープなどの温かいものを食べることが多く、常温のおかずは夏でも食べない。オルコットは漁に出る関係で朝食をしっかり摂る文化だったので、カルチャーショックだった。私が今用意しているご飯だって、街の文化に照らし合わせたら重めの朝食だ。


 ちょうど準備が終わったところで、イスラが店内に戻ってくる。着席を促し、私は先に洗い物を済ませる。ご飯は一緒に食べたいというイスラの希望で、片付けの間にお祈りをしてもらうことにしたのだ。


「お祈り、終わったわ。洗い物、まだかかりそうなら手伝うわ」

「いえ、ちょうど終わりましたよ。食べましょう」


 向かい合って座り、静かに食事を始める。食べる仕草がきれいだと、まるで高級な料理を出した気分になる。


「そうだ、前から気になってたんですが、イスラは今までどんなものを食べてたんですか?」


 私の疑問にイスラは顔を上げ、食べ物を飲み込んでから、口元を抑えて話し始めた。


「そうねぇ……まず、朝食は小麦粉を使ったパンだったわ。それからスープやサラダが出て、最後にフルーツをいただくことが多かったかしら。お昼はテリーヌがほとんどだったわ。夕食はさまざまだったけれど、お塩で味付けしたお魚が人気だったわね」

「なるほど……あれ? お肉はあんまり食べないんですか?」

「全くではないけれど、ごくたまに食べるものだったわ。お魚の方がお上品らしいの、わたしはよく分からなかったのだけれど」


 富裕層と言えば「肉、バター、ケーキ」みたいなイメージがあったけど、実態はそんなこともないみたいだ。


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