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異世界でも体は資本ですから!  作者: 魚蟹 類
第四章
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身の上話

「これがそのキルト布か。綿もしっかり詰まってんな」


 セシリアさんが持って来てくれたものは、深緑のシンプルな布だった。すでにキルトとしての処理がされていて、袋状に縫うだけですぐに使えそうだ。


「お前、裁縫得意なのか?」

「人並みにはできますよ、実家では服のほつれ直しとかは私の仕事でしたから」


 そう言って寸法を測っていると、ユージーンから「そこなんだよな」と言われた。


「俺、お前の過去全然知らねえわ。なんで街まで出てきたんだ? しかも自分で店を開いてるだろ」


 閉店作業をしてくれているユージーンと目が合う。話しにくいならいい、と言われるが、別にたいそうな過去があるわけじゃない。だからこそ言いにくいんだけど。


「親に頼りたくなかったんですよ。なんというか、私の居場所はここじゃないって思ったんですよね。故郷が悪いわけじゃ、ないんですけど」

「まあ、田舎ってそういうところがあるからな。閉鎖的っつーか人を外に出したがらないっつーか。でも、よく店開かせてくれたな」

「そこはまあ、開店資金を自分で貯めましたから。家業の漁を手伝えとも言われましたけど、嫁ぐ気がないことを話したら働きに出ろと言われたくらいですし」


 縫い代をとって、ちくちくと縫い始める。ユージーンは「お前嫁ぐ気ないのか」と驚いている。


「え? はい、ありませんよ。私がおとなしく家のことをやれると思いますか?」

「割とやれそうに見えるぞ」


 あれ、と首をかしげる。村の人からは、口を揃えて無理だと言われたのに。あれって、村の中では貰い手がいないという話だったのか。たしかに村の中での婚姻が大多数を占める中で、「外に出たい」なんて言い出したら「ついていくやつはいない」という意味で言われてもおかしくはない。だから大人しく村の中で生涯を終えろと、そういうことだったのかもしれない。自分の鈍さに笑ってしまいそうだ。


「不向きではねえと思うけど、楽しくはなさそうだな」

「それは本当に。……あなたはどうなんです? なぜリシャールから出たんですか」


 ユージーンは私の前に座り、水を置いてくれる。縫い物はあと半分ほどだ。


「ま、男には冒険に出たくなる時ってのがあるんだよ」

「あなた次男なんですか?」

「まあ、家を継ぐって必要はなかったな」


 言い方に少し引っかかったが、追及する気はない。多分答えてくれないだろうし、と手を進める。


「そういや、セシリアさんにまず届けに行くんだろ? いつにするんだ」

「ライリーに道を覚えてもらう必要もありますから……あさってになりますかね」


 袋部分が縫い終わる。あとは袋の口を閉じるようにすればいいから、紐を通して巾着にすればいいだろう。試しに箱を入れてみたら、ちょうどいい大きさだった。


 あとは箱に穴を開けて、開かないように止める紐を通せば1セット目の完成だ。


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