身の上話
「これがそのキルト布か。綿もしっかり詰まってんな」
セシリアさんが持って来てくれたものは、深緑のシンプルな布だった。すでにキルトとしての処理がされていて、袋状に縫うだけですぐに使えそうだ。
「お前、裁縫得意なのか?」
「人並みにはできますよ、実家では服のほつれ直しとかは私の仕事でしたから」
そう言って寸法を測っていると、ユージーンから「そこなんだよな」と言われた。
「俺、お前の過去全然知らねえわ。なんで街まで出てきたんだ? しかも自分で店を開いてるだろ」
閉店作業をしてくれているユージーンと目が合う。話しにくいならいい、と言われるが、別にたいそうな過去があるわけじゃない。だからこそ言いにくいんだけど。
「親に頼りたくなかったんですよ。なんというか、私の居場所はここじゃないって思ったんですよね。故郷が悪いわけじゃ、ないんですけど」
「まあ、田舎ってそういうところがあるからな。閉鎖的っつーか人を外に出したがらないっつーか。でも、よく店開かせてくれたな」
「そこはまあ、開店資金を自分で貯めましたから。家業の漁を手伝えとも言われましたけど、嫁ぐ気がないことを話したら働きに出ろと言われたくらいですし」
縫い代をとって、ちくちくと縫い始める。ユージーンは「お前嫁ぐ気ないのか」と驚いている。
「え? はい、ありませんよ。私がおとなしく家のことをやれると思いますか?」
「割とやれそうに見えるぞ」
あれ、と首をかしげる。村の人からは、口を揃えて無理だと言われたのに。あれって、村の中では貰い手がいないという話だったのか。たしかに村の中での婚姻が大多数を占める中で、「外に出たい」なんて言い出したら「ついていくやつはいない」という意味で言われてもおかしくはない。だから大人しく村の中で生涯を終えろと、そういうことだったのかもしれない。自分の鈍さに笑ってしまいそうだ。
「不向きではねえと思うけど、楽しくはなさそうだな」
「それは本当に。……あなたはどうなんです? なぜリシャールから出たんですか」
ユージーンは私の前に座り、水を置いてくれる。縫い物はあと半分ほどだ。
「ま、男には冒険に出たくなる時ってのがあるんだよ」
「あなた次男なんですか?」
「まあ、家を継ぐって必要はなかったな」
言い方に少し引っかかったが、追及する気はない。多分答えてくれないだろうし、と手を進める。
「そういや、セシリアさんにまず届けに行くんだろ? いつにするんだ」
「ライリーに道を覚えてもらう必要もありますから……あさってになりますかね」
袋部分が縫い終わる。あとは袋の口を閉じるようにすればいいから、紐を通して巾着にすればいいだろう。試しに箱を入れてみたら、ちょうどいい大きさだった。
あとは箱に穴を開けて、開かないように止める紐を通せば1セット目の完成だ。




