運搬方法
三人で考え込む。皿を水平にしたまま、温かいまま、なおかつライリーに持たせても安全な入れ物。リュックを作るには布の強度が足りないし、台車は道でガタガタしてしまう。
「木箱の中に段を作って、提げて持つとかは、できねえか?」
昔ながらの定食屋が出前で使うような、あの箱を木で作るということだろうか。
「でも、それだと一度に運べる数が少ないよ。多くて三皿とかになっちゃうと思う」
「それに、どうしても重くなりますよね。料理も、少し傾けただけで寄ってしまいますから」
「んー……難しいな……」
木箱は却下、とメモが書かれる。実用化されていたからアイデアとしてはかなりいいのだけど、なんせ技術力や素材が足りない。
「バスケットなら、重さも形も申し分なく運べると思うのですけど、数の問題がどうにも」
「そこだよね……あーあ。軽くて、温かいまま運べて、数もこなせて、料理が傾いても寄らないような運び方、かぁ」
完全に煮詰まる。ライリーは背もたれに寄りかかって「そんなのあるわけ?」と言っているし、ユージーンは腕を組んでメモを眺めている。
温かいまま運ぶのが難しいなら、冷めたものを温める方法はないだろうか。ユージーンの火の魔法のような……。
「ユージーンの火の魔法をガラス玉か何かに閉じ込めて、料理を運ぶときに一緒に入れておくとか、できませんか?」
「……魔法ってそんなに便利なもんじゃねえし、何よりガラスじゃ熱で溶けるだろ」
言われてみればそうだ。考えすぎで突拍子もないことを言ってしまった。
発想を変えて、前世でどうしていたかを考える。電子レンジとかオーブンとかいろいろあったけど、湯せんといった方法もあった。でも火を使えないことが前提なのだから、この案は却下。
お弁当屋さんの苦労は凄かったんだな、と現実逃避を始める。あぁ、前世でお母さんが作ってくれたお弁当が恋しい。たまごやきがほんとにおいしかったなあ、お弁当箱は水ですすいで持って帰れって散々言われたなあ……。
……お弁当箱?
「あぁっ! そうですよ、お弁当箱!」
「うおっなんだ急に!」
「お、おべんとうばこ?」
ひらめきから突然大きな声を出してしまったので、驚かせたことに軽く謝罪を入れる。しかし、なんせ思いついてしまった。いや、思い出してしまった。
「お皿じゃなくて、平らな木箱にガレットを入れるんです。スライド式の蓋をつけて、持ち手と箱のフチに穴を開けて紐で縛れば、自然に開くこともありませんし控え札を縛り付けることもできます」
「へえ、考えたな。確かに箱を重ねればいいから、バスケットに入れられる」
「保温は箱でできるかな……ちょっと足りなくない?」
問題はそこだ。箱に入れても、やっぱり冷めるものは冷める。しかし、今からそこを考えるには時間が足りない。ライリーのお母さまが心配するだろう。
保温や木箱の調達といった問題は、明日の議題にしよう。とりあえず今日は退勤時間だ。




