厳しさと優しさ
ユージーンは、ふっと息を漏らす。
「おし、よく言った。安心しろ、エレノアはそんなやつじゃねえし、もしそんなことになったら俺が止めるから。おどかして悪かったな、肝心のお前がそんな覚悟はないって言ったら、自警団に行かせる方がいいんじゃねえかと思ってさ」
ユージーンはカラッと笑って、ライリー君の肩をポンポンと叩く。決定権は私にあるのでユージーンの言動は勝手なものだったが、たしかにライリー君の意向を無視しそうになっていた。結果論だが助かった。意見の押し付けは、良くないのだから。
「それでは、三日後の朝九時にお店まで来てください。ライリー君にお願いするお仕事の説明をします。内容を羊皮紙にまとめてお渡ししますので、ご納得いただけたらお母さまもサインをお願いします」
「分かりました。どうか息子をよろしくお願いします」
そのやりとりの後、ライリー君の家を出る。ドアが閉まって少し歩いたときに、ユージーンから「悪かった」と言われた。
「独断で動いちまった。雇い主はお前なんだから、俺の出る幕じゃなかった」
「いえ、構いませんよ。私もライリー君の気持ちを考えていませんでしたから。反省点に気づけたのは、あなたのおかげです。でも、ひとつ聞いてもいいですか?」
ユージーンは「なんだ?」とあくび混じりに答える。
「ユージーンがあんなに頑固だなんて、初めて知りました。なぜあんなにも、自警団に行くことを譲らなかったのですか?」
「それが法律だからだ」
何でもないように即答した。もう少し詳しく話してくださいと言うと、「んー」と考えている様子を見せた。
「仮にあいつがほかの店で盗みをやったとして、その店の裁量だけで罰が決まれば、恨みがあるから棒たたき十回とかにもなる可能性があるだろ? でも法律で棒たたき五回と定められていれば、自警団はそれ以上叩かない。恨みがないからな、叩く理由がない。そういう、人を守るための手段として法が存在するっていうのを、子どものうちに学んでおいた方がいいだろ」
悪いことをしたら、必ず罰を受ける。迷惑をかけた相手には、必ず償う。そうやって世の中は回るべきだと、ユージーンは言った。私は、そこまで頭が回っていなかった。ライリー君のことを本当に考えていたのは、ユージーンだったのだろう。思わず目を伏せてしまった。
「でも、あいつに必要なのは、多分お前がやったような優しさでもあったんだろ。俺だけが相手したんじゃ、世の中みんな敵だって思われちまってもしょうがなかったからな。……そんなやつに盗みを働いたんだって罪悪感も持ってくれれば、それも勉強だしさ」
「でも、私だけでは変な成功体験になっていたかもしれません。謝っておけば許される、って。だから、ユージーンがいてくれて本当に良かったです」
よせよせ、と言いながらも、その表情は嬉しそうだった。




