決意
「あの、頭を上げてください。謝罪はライリー君からいただきましたし、子どものしたことですから」
少し居心地が悪い。私は法が絡む謝罪を受けるような立場になったことはなかったし、なるべくはやく解決策の話にうつりたい。お夕飯時にお邪魔しているのだから、私もなんだか申し訳なさがある。
それに、私が「子どものしたことだから」と言わないと、誰もライリー君を許せなくなってしまう。ユージーンも奥さんも、それを言うことはできないのだから。
「それでですね、本来であれば衛兵を通して自警団に事の次第をお話しすべきではあるのですが――」
「はい、もちろんです。うちの息子がご迷惑をおかけしたのですから」
「ああいえ、そうではなく! あの、お母さまさえよろしければ、うちの店で弁償代の分、ライリー君にお手伝いをしてもらうのはどうかと思いまして」
三人が驚いた顔をする。ユージーンやライリー君までそんな顔をするのはなぜ、と思ったが、多分先に話していた「弁償」がお金の話だと思っていたのだろう。
「自警団に届け出をしない以上、私の裁量次第になってしまいます。大切なお子さんをお預かりすることになりますので、お母さまに同意いただく必要があります」
「それは、住み込みということになるのでしょうか?」
「いえ、ご自宅から通っていただいて構いません。お昼ご飯も、まかないという形で提供させていただきます。家事も担っていると聞きましたので、両立できるようにお話をしたいと思いまして。……いかがでしょうか?」
奥さんはしばらく硬直したあと、「ありがとうございます」と涙ながらに頭を下げた。
「息子にやり直す機会をいただけるなんて、本当にありがたい限りです。どうかよろしくお願いします、もう一度同じことをした際には自警団に届け出てください」
その言葉に、ユージーンも納得したらしい。「わかりました」と答え、私に対して、「ライリーに聞きたいことがある」と許可を求めてきた。構わないと告げると、ユージーンはライリー君としっかりと目を合わせた。
「ライリー自身はどうしたい? 自分のことだから、よく考えろ」
ライリー君は、え、と声を漏らす。自分に話が振られるとは思っていなかったのだろう。
「自警団に行けば、公的に処分が下されることになる。自分で責任をとることはできねえが、きちんとした償いの証明になる。店で働くってなら、お前自身で責任は果たせる。だがそれは同時に、法で裁かれたっていう盾を失うことでもある。エレノアに無茶を言われても、お前には反論する権利はない。それでも来るのか?」
ユージーンの言葉に、いくら何でも脅しすぎだとフォローを考える。反論する権利はさすがにあると言おうとすると、ライリー君と目が合った。しっかりとこちらを見すえるその目に、言おうとしていた言葉は自然と飲み込まれる。
「オレ、やるよ。どんなにこき使われたって、もう一回おんなじことして母ちゃん泣かせるよりマシだし……それに、母ちゃんにつらい思いさせるくらいなら、オレが償いたい」
その決意に違わない、くもりのない目をしていた。




