発露
三人で、無言のままライリー君の家に向かう。当然ながら、空気は重い。ユージーンもライリー君も、若干うつむきながら歩いている。
「……着いたよ、ここ」
灯りのともっていない、小さな家だった。そもそも立地自体がかなり入り組んだ路地で、治安もあまり良くはなさそうだ。労働者の多い北区の中でも、比較的稼ぎが少なくても生活できる区域のようだ。
家の前で、親御さんの帰りを待つ。そろそろ帰ってくるとのことだったので、あまり遅くはならないだろう。
「……ライリー君、いつもお昼の時間はどうしているんですか?」
「家にいるよ。掃除とか洗濯とかは、全部オレがやってる」
「飯は?」
「あるやつテキトーに食べてる。パンとか、スープの残りとか」
火は危ないから使うなって言われてる。そう言ったライリー君はとても健気だと思う。遊びたい盛りだろうに、家のことをしっかりとやっているのはえらい。私が十二歳の時、村の手伝いはやったりやらなかったりだった気がする。
何か話題を出さなければと口を開いたとき、背後から「あらっ」と声がした。
「ライリー、そちらの方々は? お客さん?」
振り返ったそこに立っていたのは、疲れた顔をした女性だった。私が慌てて向き直ると、ユージーンが一礼をする。私もそれに続いて、店主としてあいさつをする。
「突然お邪魔してすみません。私、南区でガレット店を営んでいるエレノア・アルダーソンと申します。こちらは従業員のユージーン・ギレットです。息子さんのことで、少しお話がございまして……」
私の固い言葉とユージーンの神妙な面持ちに、奥さんは何かを察して「中へどうぞ」とうながした。
*
ダイニングに通されて、私に向かい合うように奥さんが座る。ライリー君にお水を出してもらって、全員が座ったところで奥さんが口を開いた。
「それで、うちのライリーのことというと、どういったお話でしょうか」
どう言ったものかと私が口ごもった一瞬で、ユージーンが話し出す。
「数日前からご子息がうちの店から卵を盗んでいたのですが、ご存知でしたか?」
あまりに端的だ。ライリー君はうつむいて手を握りしめているし、奥さんは状況が飲み込めていない。もう少し補足しつつフォローを入れようと、何とか言葉を繋げていく。
「数日前から、卵が知らない間に減っていることがありまして。今日開店前に裏口で卵とリンゴを持っている姿を見たので話を聞いたら、自分がやったと話してくれたんです。その、お心当たりはございませんか?」
そこでようやく奥さんは我に返って立ち上がる。ライリー君の腕を引いて立たせると、肩をつかんで向き直させた。
パンッと乾いた音が響いて、ライリー君の左頬が赤くなる。
「アンタって子は、なんてことをしたの!」
奥さんが平手打ちをした音だった。「本当に、本当になんてこと……っ」と声を震わせて、涙をこらえている。そしてこちらに向き直ると、「大変申し訳ございません!」と深々と頭を下げ、ライリー君の頭も一緒に下げさせた。ライリー君はされるがまま、放心しているようだった。




