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異世界でも体は資本ですから!  作者: 魚蟹 類
第二章
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原因

 夕方になり、セシリアさんは家に帰っていった。テッドさんはまだ眠っている。ユージーンはついさっき、テッドさんの上司に治癒費の話をしに行った。労災になるかは定かでないけど、どうだろうか。テッドさんの自己管理能力の話にはなるかもしれない。


 だって、左官の仕事をしている彼よりも体力がないであろうセシリアさんは倒れていないのだから。彼の方が暑さに耐性がなかっただけのことかもしれないけど。


 営業終了の時間になった。店じまいをするが、正直なところ売り上げは良くない。なにかしらの対策が必要だ。


 冷たいものを扱えればいいんだろうけど、さて一体どうしたものか。


 ものを冷やす技術は、それほど発達していない。存在はするのだが、方法が限られてしまう。魔法を使うか、硝石を水に入れるか。私は魔法が使えないし、硝石はかなり高価だ。魔法使いから氷を買うにしても、ガレット店である以上、溶けるのがはやい。頭が痛くなってきた。


 うんうんと唸っていると、背後でテッドさんが動く気配があった。起き上がることができたらしい。


「おはようございます。よく眠ってましたね、お体は大丈夫ですか?」

「あ、おはようございます……。え、もう夕方!? すいません俺、ずいぶんとご迷惑をおかけしてしまって」


 慌てた様子で姿勢を正しているが、無理はしないでほしいものだ。ふらふらと頭の重さに振り回されている。


「えっと、治癒の費用とかは」

「ユージーンが上司の方にお話を通していますよ。テッドさんはまず、体調を万全になさってください。まだ顔が赤いですよ」


 テッドさんは、頬にぺとりと手のひらを当てる。そして少ししてから顔をあおぐと、「あの」と話しかけてきた。


「すいません、お名前は?」

「エレノアです。この店で店主をやっています」

「エレノアさん。あの、本当にありがとうございました。あの飲み物、おいしかったです」


 彼の言葉に苦笑いが出る。どういたしまして、と返事をするが、味に関しては何とも言えない。


 テッドさんに水を渡したときに、ちょうどよくユージーンが戻ってきた。


「お、起きたか。金の話は明日、上司に聞くようにな。まあ、何事もなくてよかった」

「本当に助かりました。ありがとうございます」


 テッドさんが頭を下げる。ユージーンは「別に大したことはしてねえよ」と雑な照れ隠しをしているが、誰よりも必死に応急処置をしていたのは明らかだった。


「にしても、お前、作業に参加してから一週間経ってんだろ? なんで今倒れたんだ? 心当たりは?」


 時間帯や季節といった条件はたしかに揃っていた。でも湿度は高くないし、昨日に比べて暑さが跳ね上がったわけでもない。だとすれば、原因はそれだけじゃない。いつもと違うこと、たとえば発熱や下痢などの体調不良、それか毎日の作業と大きく違ったことはないかと問いかける。


 テッドさんは目を泳がせて答える。


「あの、普段は日陰なんですけど、今日の休憩が日向で。あと……寝不足です」

「はあ? なんでだ、場所がなかったのか?」

「いや、あの……。移動がめんどくさくて……」


 ユージーンの雷が落ちた。


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