転換
ハリソンは辺境ノズル領を越えて隣国のメヌアまで商隊について出向いていたという。
ただ、おおじいじの一件があってから、ディプソーは商隊に必ず魔術師をつける様になったとかで、魔法の手紙が届く。
「ポリアンナ様とは直接お話したい。時間がかかるから、強制はできないけれど、許されるならば王都に戻るまで待っていてほしい」
という回答が来た。
えー?何、この、焦らしプレイ?
ただし、パパに届いた手紙の方に、仕事の都合で戻るまでに数年がかかるという話が届いていたので、パパの独断で仮婚約という措置が取られた。そういうことにしておかないと、また、貴族達からうるさく突かれてしまうから、と。まぁ、ポリアンナにしてみたら、その分研究に没頭できるから、婚期が遅れようがどうでも良いことであったのだけれど。
魔術師が一緒に居るからこそであるが、これらの手紙は、封書で届いた。
綺麗に畳まれた便箋に、綺麗な文字。そして、そこにメヌアに咲いていたであろう、赤い花が添えられていた。
花まで添えて、まさか断られることはない…よね。
おおじいじの猶予はあと1ヶ月。
パパの機転で、猶予は延長されたみたい。
そして、仮婚約についてはハリソンからもありがたいとの連絡が来た。
仮婚約が結ばれて以来、ハリソンはポリアンナの文通相手となった。ハリソンがやたらと移動するので、だいぶタイムラグがあったけれど。
ポリアンナにはあれ以来、研究室への往復時に護衛が付けられている。
隣国フェンスベリアとの長い戦争が、ようやく終結した頃。
師匠がなんと、魔法爵に叙爵された!
王族でもない女性が魔法爵を叙爵されたのは初めてだというが、王家はヴィンセント様の魔力を外に出したくないだけなのではないか?と、ポリアンナは思う。
それと同時に、師匠は新たな弟子を引き受ける事になった。
そろそろメリッサ様を独立させて次の弟子を育てろと王宮魔術師たちから言われ続けていたのだとか。
まぁ、メリッサ様は優秀だからなぁ。
メリッサ様がこの研究室で担っていることが多すぎて、ポリアンナは今、引き継ぎの資料と格闘している。
新しく入ったレオンハルトという青年は飛び級で魔法学校を卒業して、今年17歳だという。王家の黄金色ではないけれど、子爵家出身とは思えないほどの魔力量をしていて、実験でコキ使えそうだなぁ、なんて思ってしまった。
頭も良さそうで、魔法陣と権力の管理などは彼に任せて良さそうだ。平民の女より、子爵家の男子の方が、取引には有利だろう。どちらにしたって、若いことに変わりはない。
社交に出たがらない師匠の代わりに豊穣祭やら祝勝会やらにも、行け!と言えばいってくれるし。侯爵家令嬢のメリッサ様ほどでないけれど、非常に都合が…いや、使い勝手が…いやいや、頼り甲斐があって、ありがたい。
独立しても頼ってくれて良い、と言うとても心強い言葉をくれたメリッサ様は、「筆頭魔術師補佐」という役職をむしり取って来た。研究室には居なくても、フォローしてくれる気満々で、師匠への愛を感じる。素敵な先輩だ。
そんな日々をこなし、漸く落ち着いた頃に。
再び誘拐事件発生である。
ポリアンナではない。
師匠が攫われたのだ。




