学校
魔法学校なんて、面倒くさそうだなーって思ってたし、何だかお偉いさんの紹介だなんて、それこそやめてよ!って思っていたけれど、魔法の勉強はマジで面白かった。
魔石だの、詠唱だの、魔道具だの、色々と学んだけれど、1番面白かったのは魔法陣!
入学初日にメリッサ様が書いてくださったアレ!
魔法を効率良く使うための魔法陣は、何というか、小さなパーツの集合体で、パーツの組み合わせによってさまざまに効果が変わってくる。
ポリアンナが今まで、自室の洗面台まで井戸水を運ぶのに力技で魔力を使っていたところを、魔法陣を使えば井戸の水が勝手に湧き出る洗面台を作ることができる。魔法陣に載せる魔力を止めれば水も止まるし、術式を替えれば魔力を一定期間循環させてしばらく稼働させることも容易だ。
メリッサ様がポリアンナにくれた魔法陣は魔力探知を穏やかにするもので、比較的シンプルな作りだったが、ポリアンナにはなくてはならない、ここで暮らすためには、何ならパンツより大切でなくてはならないものだった。
神様みたいなこの魔法陣をきっかけに、ポリアンナは魔法陣の世界にのめり込んだ。
実験室で魔法陣を黙々と描いていると、高い声に呼ばれた。
「ここにいたのね!ポリアンナを先生が探してらしたわよ」
そう言いながら実験室に入ってきたのは同級生の男爵令嬢コーネリアだった。
「やだ、なに?どれだけ大きい魔法陣かいてらっしゃるの?!」
踏み込んだ先の床に、魔法陣が描かれていて、踏んだ足先から、ヒュルリと彼女の魔力が吸い込まれる。
すると、魔法陣の中央辺りから青い光が立ち上がり、耳触りの良い和音が響いた。
「わぁ?!凄いわね!え?場所によって音が変わるのかしら?」
コーネリアは目をキラキラさせて、魔法陣を迂回すると、魔法陣の別の場所を踏んづけた。
先程より低い和音が鳴り、こんどは白い光が立ち上がる。
「ヤダヤダ楽しい!こっちはどんな音?」
残念ながら、次に踏みつけた場所では黄色い光は上がるが音はならない。
魔法陣は未完成なのだ。
「あんまり長い時間魔法陣に乗ってたら、魔力使いすぎて疲れちゃうわよぉ」
コーネリアは保有魔力量があまり多くはない。
ここにきて、ポリアンナは自分の魔力量が高位貴族並みに多いことを知る。
だからこそ、おじいはポリアンナをココに放り込んだのだろう。
使えるのであれば、効率良く使う方が良い。
ポリアンナは、今は曽祖父に感謝している。もちろん、学校に入れるのにさまざまに物資を整えてくれた父にも。
貴族の中に入っても、ポリアンナは恥をかくようなことは殆どない。
周囲の貴族と変らない、時にはそれより少しだけ上質な服や靴や文房具、生活用品を持たされている。これは実家が貴族の家に出入りするような商家で、そこそこに裕福な家だったからだ。
そして、出過ぎないように、良過ぎるものは持たせない。
貴族とうまく付き合って行くための、その匙加減も絶妙だった。
「そうそう、サミュエル先生が探してましたよ。魔法の手紙が届かないって。だからここだろうって」
実験室の中は細かな魔力操作をすることもあるので、外からの魔力を遮断する機能がある。
「それでわざわざ来てくれたの?コーネリアったらお人好しねぇ。大好きよぉ!」
ポリアンナは投げキッスのパフォーマンスをする。
飛んできたキッスを摘むフリをして、コーネリアは笑う。
「キッスの安売りはだめですよ。ポリアンナは人気者なんだから、要らぬ誤解を生んでしまうわ」
魔法学校は魔法を学ぶところではあるが、それだけではない。
魔法の国ディバレイド王国において、魔力はステータスの一つだ。
貴族の嫡男は挙って、魔力持ちの令嬢を嫁にもらいたがる。
平民だけど高位貴族並みの魔力持ちの女子。
低位貴族の嫡男にとって、これほど都合の良い婚姻相手はいないだろう。
そういう意味で、ポリアンナは大人気だ。
魔力を持たないお母様を追い出した貴族の家なんてクソ喰らえだと思っているポリアンナにとっては、煩わしい事この上ないのだけれども。




