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魔法陣の向こう〜ポリアンナの物語〜  作者: サンガツワサコ


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寝坊

呪いの魔女グレイシアの物語の外伝にあたります。

グレイシア、モリーのお話より、かなりポジティブなポリアンナさんの元気なお話にお付き合い頂けましたら幸いです。

28回投稿予定です。

よろしくお願いいたします。

お前はきっと、じーさんに似たんだなぁ。


そう言って、大きな手が頭をぐるぐると撫で回してきて、ポリアンナはクラクラと目がまわる。


やーだよ。おおじいちゃん!やーめーて!


怒ったら、魔力でバチっとやるんだろうよ、お前さんは?


おおじいちゃんにはー、きかないからやんないの!


やってみーよー、ほーれ!


やーだ!



懐かしい夢を見た。


宮廷魔術師をやっていた、母方の曽祖父の夢だ。


母は子爵家の出身で、けれどろくに魔力もないからと、貴族の家には求められず、商いで家に出入りしていた商家の若旦那であった父と結婚した。


しかも、まだ16歳だった。

16歳で、26歳の父に嫁いだのだ。

たった一人で平民の家に嫁ぐのは気の毒だと言って、隠居していた元宮廷魔術師だった曽祖父が嫁入りについてきたのだ。

そんなバカなことが、と思うが、魔法を使える人材は貴重だぞー?などと言って、大店の商家にまんまと転がり込んだのだ。


母が結婚した歳と同じ16歳になった今、ポリアンナは魔法学校に通っている。


同級生は貴族ばかりだ。


あっちもこっちも魔力を纏った人ばかりで、ポリアンナはクラクラする。


魔法学校は魔力持ちの貴族子女が通う学校なのだから、仕方がないことではあるが、平民として育ったポリアンナの周りに、魔力持ちは曽祖父だけだったから、ここにきた時には3回くらい吐いた。


到着してすぐに、帰りたくなった。

おじいの知り合いの偉ーい魔法使い様のご紹介だったから、そういうわけにもいかなかったけど。

ホント、初めの頃は辛かったわー。


保健委員のメリッサ様に会ったのは、入学初日だった。

ゲロゲロ吐きまくってたポリアンナに、


「あー、魔力酔いですねぇ。今、楽にしてあげるわ」


と言って、一つ魔法陣をくれた。紙に書いたそれを、ペタッとおでこにくっつけたら、嘘みたいにグラグラが消えて、何なら胸もすっきりとした。


「ほら、お水飲んで。辛かったわねぇ、お腹空っぽではない?」


渡してくれたグラスの水にはミントの葉が浮いていて、ポリアンナはちょっと感動する。何て気の利く方なのだろう!


「ありがとうございます、ホントに助かりました」


ペコリと頭を下げたポリアンナに、メリッサ様は驚いてらした。


「貴女、貴族ではないのね?」


え?顔に平民って書いてある?


「女系のお家なのかしら?こんなに魔力あるのに、珍しいわねぇ」


「母は子爵家の出身なんです。曽祖父が王宮で勤めてたことがあって、魔力持ちでした」


「そうでしたか。子爵家にしても、魔力が豊富だし、綺麗ねぇ」


そう言って、ポリアンナの目を覗き込む。


「あ、私はメリッサというの。5年生よ。と言っても、飛んでるから歳は15だけど」


「私はポリアンナです」


サバサバとして話しやすいメリッサは、後で知ることになるが何と侯爵家のご令嬢だった。


侯爵家!?


超高位貴族!!


てっきり、男爵家あたりだと思っていたのに!

着ている服は確かに良い品だったけれど、爵位に寄らず裕福な家庭も多いから、そう信じて疑わなかった。


メリッサ様に次に会った時、会った途端に大爆笑された。


「その紙のまま過ごしてらしたの?」


どうやら、おでこにくっ付けてる魔法陣の紙のことを言ってるようだ。


「これがないと。また気持ち悪くなっちゃうんです」


そういうと、メリッサ様はご自身が付けてらしたサークレットを取って、そのフロントの石に小さく魔法陣を描いてポリアンナにつけてくれる。


「差し上げるわ。もっと使いやすいものを見つけたら持っていらっしゃい。魔法陣を教えてあげるから」


メリッサ様のおかげで、吐きまくる学校生活にならずに済んだし、同級の生徒たちとも打ち解けることができた。クラスに平民はポリアンナだけだったけれど、侯爵家の威光が背後に輝いてくれたようで、子爵家や男爵家の子女達はポリアンナをすんなりと受け入れてくれたのだ。


メリッサ様はそれから1年だけ学校で学ばれて、16歳で卒業された。

つまり、ポリアンナの今の年齢で、王宮魔術師となられた。しかも…ものすごい魔術師の弟子になられたとか。


ポリアンナはため息をつく。


母はこの歳で嫁に行き、

メリッサは身を立てているのだ。


なのに、自分はどうか。


曽祖父の夢を見て、起きてみれば寝坊である。


しかも大寝坊だ。


1限目の講師は誰だったかなー。


サボること決定である。


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