求婚?!
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王宮の魔法陣の保守管理からの帰り道。
それは王宮の中を歩いている最中の出来事だった。
グレイシア様!
声をかけられ、師匠が立ち止まる。
若く、良きところのボンボンといった青年だった。
彼は大股で師匠の前まで来ると、片膝をつく。
えええ?!何?何が始まるの?!
青年は、乞うように胸に手を添え…片手を師匠に向けて差し伸べた。
わ?!これって、求婚てやつ?!
ポリアンナは吃驚して固まっていたが、師匠は目の前を塞ぐように跪く青年を迂回して、進む。
えええ?!ガン無視ですか、師匠?!
「グレイシア様!!!」
悲鳴のような青年の声を背に、師匠は振り向かなかった。
師匠がそうしているのに、まさかポリアンナが振り向くわけにもいかないから、好奇心を押さえつけて、前を向く。
背後で怒号のような声と、何かを殴りつけるような、不穏な音が聞こえる。
ひえええええ!!!
何?!一体何が起こっているの?!
王宮の中の事は、流石にパパに聞いたって、わからないわよねぇ。
なんて、思っていたら、お使いで貴族のお宅に出入りする機会が多いママからことの詳細を聞く事ができた。
あの青年の正体は、ベルク侯爵家の嫡男で魔法騎士をされてるウィリアム様なのだそうな。お年を聞けば、20歳。ポリアンナの二つ年上と言うことは魔法学校の騎士クラスにいたと言う事か。
公爵家の長子のご令嬢と婚約が決まっていたはずが、どこかで師匠に見惚れて、追い回し、師匠はとことん無視していたようだ。求婚すれば向き合うぐらいはしてくれると信じていたようで、あそこまで華麗に無視されるとは思っても見なかっただろう。
筆頭魔術師とはいえ、師匠の出自は伯爵家の令嬢である。40歳だけど。
さりとて、あの求婚を目撃したのは、もちろんポリアンナだけではない。王宮には、騎士も文官も大臣も侍女も他の王宮魔術師も出入りするのだ。中庭に面したあの場所は、そこそこ人目につく。
魔法騎士の彼を殴りつけたのは、婚約者の父親であるアズマ公爵ご本人だそうな。
たまたま領地に出た妖魔についての報告に王宮へ出向いていたところに、娘の婚約者が女魔術師に求婚するところに居合わせた…
なんたる偶然!最悪!
てか、なんであんな目立つ場所で?!
玉砕覚悟なら、もうちょっと考えればいいのに!ん?玉砕する気は無かったのか?
婚約は即刻解消されたが、婚約者の令嬢はウィリアム青年に心を寄せてらしたとかで、大荒れに荒れていらっしゃるそうだ。
…気の毒に。




