師匠の中の魔法陣
師匠が王宮の魔法陣の点検に向かうと言うので、ポリアンナは初めて王宮に着いて行く。
王宮魔術師ではないポリアンナは魔法陣のある地下に入ることは叶わないと思っていた。しかし、王宮筆頭魔術師の弟子というだけで、入り口を護る兵士はポリアンナをすんなりと通してくれた。
地下に満ちる魔力はゴージャスだった。
黄金色に輝く魔力。
それは、王家の魔力なのだそうな。
王家の魔力を纏う魔法陣はものすごく緻密で、複雑な術式が絡み合う芸術のよう。
そこに手を添えた師匠の魔力が載る。
あれ?
師匠の魔力、王家の魔力みたいな?
艶やかで宝石のような魔力は白金色に見える。なのに、なんだろう?匂い質感?が、同じような?
「私の中には、ヴィンセントの魔力があるのよ」
また、疑問が口をついて出ていたようだ。
師匠が微笑んで説明をくれる。
遺言のような魔法陣を、彼は私の中に残したの。
だから、私の中には王家の魔力があるのね、きっと。
人に付与する魔法陣といったら、婚姻の?でも、結婚する前に亡くなってしまわれたのよね。
「私は結婚した事がないから、婚姻の魔法陣を体感したことはないけれど。彼は天才だったから…」
自らの中を探るように目を閉じた師匠は、ふふ、と笑う。
「コレは、やっぱり遺言かしらね。私はこの魔法陣に救われてきたんだわ」
師匠からは聞いた事がなかったけれど、ヴィンセント様は師匠の目の前で亡くなられたと言う。
おおじいじと違って、人生に満足した人の死ではない。道半ばにして、それは不本意な死だったに違いない。
まだ若い婚約者の死を目の前にして、師匠は…
救ったのは、ヴィンセント様の魔法陣。
ヴィンセント様の魔力が、師匠を内側から支えたのか。
ポリアンナは、妙になっとくする。
けれど、師匠を抱きしめたくなって、ほんとうに抱きついてしまった。
腕に閉じ込めた師匠は、柔らかく、とても良い匂いがした。




