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魔法陣の向こう〜ポリアンナの物語〜  作者: サンガツワサコ


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18/28

仕入れですか?

その日は実験に魔力を使いすぎて、ちょっと疲れていた。

大店の娘とはいえ平民のポリアンナは、離宮から店まで、荷物が多くない限りは歩いて帰る。

離宮では馬車を所有していないし、ポリアンナだけのために店の従業員の手を煩わすわけにもいかない。歩いて通えるレベルなのだから、当たり前に歩くのだ。

後ろから誰かが付いてきていることになんて、全く気が付かなかった。

急に腕を掴まれて知らん馬車に引き上げられても、咄嗟に詠唱などできない。なんせ、ポリアンナは魔法陣以外はあまり得意ではないから。

あまりに突然のことに、叫び声を上げようとしたが、口に布を詰め込まれてしまう。周りを確認しようと首を振ると、頭から袋のようなものを被せられた。土臭くて、ザラザラする。


何?誰?どう言うこと?人攫い???


恐怖に体が震える。


どうしよう、どうすればいい?


一瞬、見えたのは下町の力仕事をしていそうな男のシャツとズボン。ポリアンナの腕を掴んだ、大きく硬い手の甲は日に焼けていて、毛も生えてた。


鳥肌が立つ。


魔法学校に放り込まれる前も後も、護身術なんてものは習った事がない。


助けて!!!


心の底から、詠唱のクラスでなくてよかったと思う。口を塞がれても、魔力操作ができれば魔法陣は描ける。

頭の中に魔法陣を思い浮かべて、どうにかしてこのSOSを誰かに拾ってもらうべく、魔力を飛ばす。


飛ばしすぎて、ポリアンナは意識を失ってしまった。







「…しかし、目の前に寝てる若い娘がいるのに、手を出せねぇってのは面白くねえなぁ」


不穏なセリフが聞こえてきて、目覚めたポリアンナは危うく体を震わせるところだった。


そおっと魔力をチェックしてみる。


この場にいるのは平民なのだろう。殆ど魔力がないに等しい。ちょっと遠くに居る誰か2人くらいは低位貴族並みの魔力を保有している気配がある。


「仕方がねぇだろうよ。傷をつけたら価値がなくなるってもんだろ?何せ、嫁候補だと言うんだから」


え、なに?私、旦那になるかも知れない人に攫われちゃってるの?強硬手段?


「どこの家が1番高く付けるだろうなぁ。やっぱり公爵家かな」


「いや、公爵んところはコッチと関わりを持ちたがらないだろうから、持ちかけたって無視されるだけだ」


「じゃあ、侯爵家?」


「いや、上の方の家が二男三男の嫁のために金をそこまで使うか?1番必死なのは、男爵レベルだろうよ。上に行けるかも知れないチャンスをこいつは握ってるんだろ?」


「男爵じゃたかが知れてんなぁ…せめて伯爵家あたりと繋がりてぇよ」


「金と引き換えを提案してんだ、コネをつけようったって、そうはいかんだろうよ」


…つまり、私は商品なのか。


ポリアンナは理解する。


コイツらは、ポリアンナという商品を仕入れた。

道端で…

それを、ポリアンナに求婚してきた貴族たちに売りつけようとしている。


え?ちょっと待って、どういう事?家に婚姻の申し込みしてきた家、ダダ漏れ?

そんなバカな!仮にも商売をやってるルヴィルの家で、そんな漏洩が許されるはずがない!


ぐるぐる考えているポリアンナに、答えは直ぐに与えられる。


「しっかし、仮にも姪っ子なんだろう?子爵夫人も薄情だよなぁ」


…あー、そっちか。


喪中のルヴィルには申し込めなくても、子爵家にはコッソリ打診してきてた、と。


おおじいじは元ロワーレ子爵なのに、ロワーレの家が喪に服してないって、おかしくない??

ポリアンナは腹が立って仕方がない。


「いや、でもさ。金も取って縁も取れるかも知れないんだぜ?姑息なやり方だと思わねぇ?」


…それは確かに能率的だけどさぁ。

あ、私、売られるのかぁ。


ポリアンナはぼんやりと考えた。


いま、何時だろう?

私がいなくなった事、気がついてるよね。

師匠にも連絡が行くのかな。

あ、でも、あそこの窓口は私だから、連絡のしようが無いか。

明日になったら、メリッサ様から連絡が行くかな。

ポリアンナ、寝坊ですかー?って。

…ここ、何処だろう?

私、じっとしてた方が良いのかな。


ポリアンナはもう一度、SOSの魔法陣を、魔力を感じない方向に向けていくつか投げてみる。外の魔力持ちには見つかりませんように。


…無駄かなぁ。

でも、コイツらや子爵家の思惑通りになるのは嫌だなぁ。

お腹空いた…眠い…


とりあえず、自分自身を傷つけられる可能性は低そうだと判断して、ポリアンナは寝ることにした。



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