解放
札幌中央刑務所
神仙の輪教祖・神崎零は、窓のない独房で静かに座禅を組んでいた。
食事も睡眠も規則正しく、十年以上、感情をほとんど見せたことがない。
看守たちは彼を「人間らしさがない男」と恐れていた。
その日も廊下には静寂が流れていた。
突然警報が鳴り響き、施設全体が混乱する。
慌ただしく看守が走り回る足音。
誰のものか分からない叫び声。
何が起きたのか。
神崎は全て理解していた。
「止められなかったか、、、」
世間からは史上最悪のカルト宗教と呼ばれた宗教団体『神仙の輪』
その真の目的を知るものはこの世から消され、その殺人のすべてを教団に被せ、最後は教祖ごと死刑という合法的な方法で消そうとされた。
最大の宗教団体と成長した彼らでも強大な権力を前にはいとも簡単に潰された。
マスコミはこぞって記事をでっち上げ毎日のように教団を叩いた。
世間では「神仙の輪は危険な組織」という印象が広がり、何も知らない国民は死刑判決は妥当だといった。
もっと権力があれば、もっと国民の目を覚さなければならなかった。
電子制御された独房のロックが解除され扉が開く。
そこには一人の若い看守が立っていた。
腕から血を流し、震えている。
彼は神崎を見つめる。
「先生、、、止められませんでした、、、。」
神崎は表情を変えない。
「まだ私をそう呼ぶ者がいたか。」
その看守は、少年時代に教団の集会へ通っていた元信者だった。
教団解散後も神崎への信仰を捨てられず、刑務官になったあとも密かに彼を崇拝していたのだ。
若い看守は神崎の姿を見ると倒れ込んだ。
神崎はしゃがみ込み倒れ込んだ看守を抱きかかえた。
「安心しろ。私が変える。」
神崎が言うと看守は安心した面持ちで言った。
「あとはお願いします。先生。」




