対峙
恵一はワゴン車の屋根から前に停車しているセダンの屋根に飛び移る。
衝撃を逃がすため前回り受け身をしながらボンネットに転がる。
体勢を立て直し、逃げ惑う群衆を掻き分けながら腰に装着していた鋼鉄製の警棒のストッパーを外す。
拳銃は他の人に当たる可能性がある。
今は子供を暴徒から遠ざけることが最優先だ。
警棒を引き抜き、子供に駆け寄る。
「大丈夫か!?」
恵一はうずくまっていた子供を抱きかかえて立たせた。
「おまわりさん、、」
汗と涙でぐちゃぐちゃになった顔で恵一をみる子供
「パパとママは俺が見つけてやる!まずはここから一緒に逃げよう!」
そう言った瞬間、恵一の左肩に何かが掴みかかる。
「ぐ、が、がが、、」
振り返った恵一は驚愕した。
掴みかかってきた男は、すでに人間とは言えない姿をしていた。
瞳以外全て真っ赤に充血した目、頬は噛みちぎられ歯が剥き出しになり、他人を噛みちぎったであろう肉片と血が口の周りにこびりついていた。
その男が次の獲物はお前だと言わんばかりに噛みつこうと顔を近づけてきたのだ。
恵一はとっさに右手に把持した警棒で男の側頭部に一撃をお見舞いしてしまった。
ボゴッっと鈍い音をたて男の首は横に傾げた。
恵一の火事場の馬鹿力によって男の側頭部は警棒の太さにヘコんだ。
まともな人間なら確実に倒れ込むだろう。
しかし男はそんな攻撃効かんとばかりに傾げた首を元通りし、襲いかかってくる。
恵一は、渾身の力で男を蹴り飛ばしたところ男はバランスを崩し倒れ込んだ。
「今のうちに逃げるぞ!」
呆然とする子供の手を引っ張り恵一は、逃げ惑う群衆と共に駆け出した。




