避難
少年の手を引きながら恵一が逃げ込んだ場所は、個人経営の小さなスーパーマーケットだった。
中に居たのは数人の男女。
疲れ切った顔の店長、平凡な中年の主婦、制服を着た女子高生2人組、トラック運転手と思われる作業服の男だ。
「ったくどうなってんだ!まだ配送が残っているというのに!」
トラック運転手の男は帽子を扇ぎながら文句を言った。
「私も晩御飯の食材を買いに来ただけなのに、、」
中年の主婦は不安そうな顔で言った。
スーパーの出入り口にはシャッターがあり、恵一達が逃げ込んだ後店長が閉めたおかげで暴徒と化した市民が入り込むことは無かった。
シャッターの向こうでは未だに車のクラクションと悲鳴が鳴り止んでいない。
「皆さん、奥にある休憩室に行きましょう。ここにいるよりは安全じゃないかと。」
スーパーの店長は、皆を建物の奥にある休憩室に案内した。
休憩室はテレビと冷蔵庫、パイプ椅子に長机がある狭い部屋だった。
室内にはもう一人従業員の女性がいた。
歳は20代前半のショートカットの似合う気の強そうな女性だ。
「店長、さっきからニュースで大騒ぎしてるんですけど何かあったんですか?」
従業員の女性は、店長に尋ねる。
「あれだけ外で大騒ぎしてるのに気づかなかったのかい!?なにしてたの!?」
店長が驚きながらも呆れたという風に答える。
「休憩中に寝てて今起きたんです。」
女性はムスッとした顔で返事した。
点きっぱなしのテレビからは、アナウンサーが焦った様子でニュースを読み上げていた。




