↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生無双したけど、ドラゴン食わなきゃ死ぬ  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
14/20

第14話「竜骸の地」と眠る神核 ―“喰竜の儀式”の核心へと至る、交錯する過去と現在―

【起】

―幻獣たちの伝承:この地は“神核災害”の地―

 


腐蝕の地を越えた先、霧の向こうにひっそりと姿を現したのは、かつて神霊竜たちが命を散らした聖戦の地──《竜骸の地》。


 


崩れかけた山肌、朽ちた巨骨。地に突き刺さった鱗の欠片が、風にさらされ銀の粉塵を舞い上げる。まるでこの場所そのものが、かつて“神”を喰らおうとした罪への戒めであるかのように。


 


そんな場所で、一行はひとりの幻獣族の長老と出会った。

その老いた幻獣──三つ目のワーム型の体躯に、苔のような髭をたなびかせた老爺は、敬たちの前に杖を突いて現れた。


 


「……ここは忌まわしき地じゃ。人も竜も、真理を知ろうとし、そして滅んだ」


 


低く震える声が、山の静寂を破る。


 


「この地の地下には、神霊竜らが護っておった《神核制御施設》が眠っておる」


「百年前……一部の人間が、神核の本質に触れようとした。神霊の力を“喰いもの”にしてのう。結果、神核は暴走し、神霊竜らは自らを封じ印として捧げた……」


 


レイナが小さく息をのむ。


 


「それって……今、喰竜派が目指していることと……」


 


老幻獣が頷いた。


 


「“神喰の儀”とは、つまりその封印を破り、神核を再び目覚めさせるということじゃよ。そして今度は、暴走を制御して“世界の秩序”そのものを塗り替えようという魂胆じゃ」


 


「……世界の秩序を……?」


 


敬がつぶやくように言う。


 


「喰うことで、世界を支配するつもりか」


 


「そうよ」

レイナが真剣な眼差しで言葉を継ぐ。


 


「そしてそのために、ライラ……私の妹まで“器”として使われようとしてる。黙ってなんか、いられない!」


 


長老は、敬たちの顔をひとりひとり見つめ、やがて静かに頷いた。


 


「……ならば行け。封印の残る地下遺跡へ──かの神核はいまだ、眠っておる。ただし……その“揺らぎ”が、再び目覚めぬうちにな」


 


敬は前を向き、しっかりと拳を握りしめた。


 


「……必ず、止める。あの核が、再び誰かを喰らおうとする前に」


 


一行は《竜骸の地》の中心部へ。

そして、かつて“神”を喰らおうとし、逆に飲み込まれた《記録の檻》──

神霊竜たちが自らの命と引き換えに封じた《神核制御施設》へと、歩を進める。


 


その先に待ち受けるのは、喰竜派の野望と──“自らの過去”。


 


──そして、眠る“神”の記憶。



【承】

―地下遺跡突入。過去の研究施設の残骸と記録―

 


竜の背骨のように折れ曲がった峡谷の底。

崩れた岩陰の奥に、それはあった。金属で封じられた巨大な扉。魔素封印の錠は錆びついていたが、その内側からただならぬ瘴気が漏れている。


 


「ここが……神核制御施設の入り口……」


 


敬の声に応じるように、ユーニが前へ出た。


 


「空間、かなり歪んでる。神霊核の“揺らぎ”がまだ残ってるわ。制御術式を展開して、通路だけでも安定化させる」


 


術式陣が浮かび、淡い銀光が周囲を包み込む。


 


やがて扉が軋みながら開いた瞬間、内部から溢れ出したのは、刺すような魔素の重圧。

一行は防御障壁を展開し、慎重に施設内へと足を踏み入れた。


 


内部は、まさに《死の迷宮》だった。


 


天井は崩れ、通路は歪み、あちこちに焼け焦げたコンソールと、黒焦げの幻獣骨体。

魔素の濃度は地上の十数倍──それでも、この施設がかつて国家直轄の“神核開発区画”であった名残は、所々に残されていた。


 


レイナが朽ちた端末のひとつに魔力を通すと、薄く青白い光が走る。


 


「……まだ生きてる記録があるわ。ログを解析する」


 


パネルに映し出される古びた記録群。

その中には、明らかに喰竜派の術技に繋がる技術体系が記されていた。


 


「適合率実験……記憶操作……感情制御装置。これ……全部、今の喰竜派が使ってる術式と酷似してる」


 


ユーニの顔が青ざめる。


 


「つまり……喰竜派の基礎研究って、この国自身の……!」


 


敬は黙って、別の区画へと歩を進めた。どこかに、自分の“過去”があるような気がしてならなかった。


 


やがて辿り着いたのは、封鎖された小部屋。警告のランプは壊れ、錠前もすでに意味をなしていない。


 


敬がそっと扉を押し開けると──そこにあったのは、埃まみれの端末と、今も微かに動作を続けている記録機だった。


 


──K-03。


そのタグが、敬の背筋をぞくりと撫でた。


 


端末が再生を開始する。

ノイズ混じりの映像と共に、記録が読み上げられた。


 


『実験記録K-03──安定率高。共鳴因子の吸収特性、良好』

『記憶因子保護のため、抑制印刻を施す』

『対象の自我形成を観察。制御可能領域において、戦闘適性:極高』


 


敬の指先が、震える。


 


「……俺は……実験体だった……?」


 


映像は、かつての自分に似た少年が魔核の前に立つ姿を映していた。表情は曇っていて、目に光はない。


 


だが──その背中には、どこか“今の自分”と同じものを感じた。


 


「……記憶を“消された”んじゃない。俺の記憶……最初から、“封じられてた”……?」


 


思い出そうとしても、何もない。

白く霞んだ空白。その中に、微かに──誰かの声だけが、残っている。


 


──「君は、“喰う”ために生まれた」


 


敬は歯を食いしばり、拳を握る。


 


「ふざけるな……そんなもののために……!」


 


だが、その瞬間。施設の奥から、不穏な魔力の震動が広がった。


 


ユーニが顔を上げる。


 


「……揺らいでる。神核が……起きかけてる……!」


 


「レイナ、ユーニ! 行くぞ!」


 


──そして、彼らは知ることになる。

この遺跡の核心には、“神”に触れようとした者たちの罪と代償、そして──敬とライラに関わる真実が眠っていることを。



【転】

―ライラと再戦、敬の“記憶の欠落”の一端が明かされる―

 


地下遺跡の最深部、ひときわ強い魔素の流れが吹き荒れる封印室。

蒼白く輝く神霊核の残滓が、天井から吊り下げられるように漂い、空間の中心で鼓動を刻んでいた。


 


そしてその前に、銀の髪を靡かせて立っていたのは──仮面の少女。


 


「……ライラ!」


 


レイナの声が響いた。

だが、少女は応えない。視線さえ、逸らすように顔を背ける。


 


「プロトコル更新──神核暴走領域、適合者処理開始。対象、K-03……優先度:高」


 


仮面の奥から、無機質な音声が漏れる。だが、その声音には、明らかに“躊躇”の揺らぎがあった。


 


敬が静かに踏み出す。


 


「お前……命令で動いてるんじゃないな。今の言葉、お前自身の意思が混じってた」


 


少女の手に、魔核が収束する。黒紫の刃が形成され、神霊素が火花のように散る。


 


「ライラ、やめて──! あなたは私の……!」


 


レイナの叫びを、収束の唸りがかき消した。


 


「排除──開始」


 


その瞬間、激しい衝突が始まった。


 


模造幻獣すら寄せ付けぬ、神霊核適合者同士の近接戦。

敬とライラの刃が幾度もぶつかり合い、剣圧が空間を歪める。


 


──そして。


互いの神霊核が、激突した瞬間だった。


 


《共鳴干渉、発生──》


 


眩い閃光と共に、意識の奥に何かが流れ込んでくる。


 


敬の脳裏に、焼き付くような映像が浮かんだ。


 


──暗い天井。冷たいコンクリートの床。檻の中、泣きもせず佇む子どもたち。

──白衣の研究者たちが無機質に番号を呼び、魔素を注ぎ込む実験を繰り返していた。

──その中に、ひとり──自分の隣にいた、銀髪の少女。


 


『ねぇ、君も“誰かを守るため”に喰らうんでしょ?』


 


──優しく笑って、そう言った少女。


 


敬の胸が締めつけられる。


 


「……あれは……ライラ……?」


 


だが、その頃のライラはまだ、人間だった。

仮面などしていなかった。笑って、よく話しかけてきた。

名も知らぬ“K-03”に。


 


敬(……そうか……あれが、俺の“最初の共鳴”だったのか)


 


彼女の記憶が、敬の中に混ざり込む。

それは単なる情報ではなかった。感情の揺らぎ、声の温度、互いに交わした“祈りのような約束”が、確かにそこにあった。


 


──喰われたのは、彼女だけじゃない。

──忘れていたのは、敬の方だった。


 


ライラが刃を止める。わずかに震える指先。

その瞳に、仮面越しにもわかる迷いが灯る。


 


だがそのとき、部屋の奥で再び神霊核が鼓動した。

制御装置の崩壊により、空間が揺れる。


 


「……駄目だ! 神核が、暴走を──!」


 


その瞬間、共鳴状態にあった敬とライラが、神核の揺らぎに巻き込まれる。


 


彼らの意識が、次なる“深層”へと引きずり込まれていく。



【結】

―敬とライラが神霊核の“揺らぎ”に巻き込まれ、意識がリンクする―

 


「──ッ、暴走反応ッ……! 神核、制御層の封印が崩れる……ッ!」


 


ユーニの絶叫が、崩れゆく空間に響いた。


 


神霊核を中心に、蒼白い稲妻のような魔素が裂け目を走らせる。

それは地の底を穿ち、天井をも焦がし、現実の構造すら歪める“揺らぎ”──


 


そして、その震源たる封印層へと接触したのは──


 


「ライラ……!」


 


仮面の少女の神核が、暴走しかけた本体核と共鳴した。

刹那、空間が揺れる。


 


《共鳴干渉──深層リンク、発生》


 


白い光が世界を飲み込み、敬とライラの意識が弾けるように跳ね飛ばされ──

気づけば、そこは。


 


何もない空間だった。


 


空でもなく、大地でもなく、上下もない。

ただただ、蒼白い光が漂う無音の世界。


 


「……ここは……」


 


敬が目を開けると、目の前に──ライラが立っていた。


仮面はなく、長い銀髪を風もないのにふわりと揺らしている。

ただ、彼女の表情は、どこか戸惑っていた。まるで、自分自身すら分かっていないかのように。


 


──そして、聞こえた。


それは言葉ではなかった。

だが、確かに“問い”だった。


 


「お前たちは、“喰う”ことで世界を繋げるか。

“救う”という名を騙るのではなく──」


 


感情も温度もない、“神核”そのものの意志。

かつて神霊たちが刻んだ、世界そのものへの問いかけ。


 


敬は言葉を失ったまま、その声に耳を澄ます。


その隣で、ライラがゆっくりと手を伸ばしてくる。


まるで「あなたはどう答えるの?」とでも言いたげに──


 


「……俺は……」


敬はその手に、自らの手を重ねた。


 


「“喰う”ことで、誰かを守るなんて、間違ってるって思ってた。でも──」


彼の声が、静かな空間に沈み込む。


「……喰うってことは、繋がるってことだ。

俺たちはまだ……何かを残せるはずだ」


 


その瞬間、ライラの目に、確かな“感情”が揺れた。


仄かな光。微かな戸惑い。そして、忘れかけていた温もりの記憶。


 


──核が、脈動を止めていく。


感情に反応する核たちが、二人の“交わり”によって沈静化していく。


 


光が、世界を包む。


 


そして──意識が、現実へと戻ってきた。


 


* * *


 


「……っ、戻った……!?」


 


気づけば、一行は元の封印室に倒れ込んでいた。


神核の暴走は収まり、揺らぎは消え失せている。


だが。


 


「ライラ……!」


 


立ち上がった敬が叫ぶより早く、ライラの身体が光に包まれた。

それは《強制転送術式》──喰竜派による、回収用の術。


 


彼女は言葉も交わさぬまま、光の中へと消えていく。

だが、最後に仮面がずれ、その瞳が敬を見つめた。


 


それは、感情を取り戻しかけた“人間の目”だった。


 


「……届いたんだな。俺たちの声……」


 


レイナが呟き、敬は静かに拳を握る。


 


「今度こそ、取り戻す。彼女を──そして、俺自身の過去を」


 


空は崩れ、神核は眠る。

物語は次なる地、“神喰域”へと進む。


──再会と真実の、その先へ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。