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3 辺境と魔族

この世界の北端にある魔族領と呼ばれる土地には、魔族と呼ばれる強大な力を持った化け物達が住んでいる。


100年ほど前までは、その魔族共の王である魔王と配下の魔族達と激しい戦闘を繰り広げており、魔族領と接する辺境の領主達のみならず、王家及び中央に領地をもつ領主達も一丸となって戦っていた。


しかしそんな戦いの中、神から力を賜った勇者が現れて魔王が倒されると、王国を脅かしていた魔族共は散り散りとなって魔族領へと逃げていき、王国は危機を脱した。


だが、魔王が倒されたからといって魔族共がいなくなった訳では無い。

依然として魔族共は人間の村々に姿を現し、食料を奪い、人を殺しにやってくる。 


その為、辺境の領主達とりわけ辺境伯と呼ばれるクロイ家が主体となり、人里に下りてくる魔族狩りをして、魔族領との国境を守護してきた。


当初は王家や中央貴族達も、人を出し物資を出し共に国境を護っていたのだが、時が経ち代が替わると、一族の中から一人辺境へと送るという約束だったのも忘れ去られ、物資のみが送られるようになり、今では金だけが送りつけられるようになっていた。

最近ではその金すらも出し渋るようになり、辺境と王家及び中央貴族達の間には大きな溝ができるようになって来ていた。

特に魔族どころか魔物すらまともに見たことがない、王都に居を構える中央貴族達は、辺境の領主達を魔族退治を口実に金をせびる卑しい輩だと見下し、支援金を減らすべきだと抗議の声すら上げている。


それ故に、ノクスの父親である辺境伯は辺境の守護の為に、辺境の力が必要不可欠なのだと見せつけるべく、息子であるノクスに学園の剣術大会に参加する事を命じたのだ。

破格の力を見せつけることで、普段彼等が相手にしている魔族という化け物達が如何に特別で、彼等以外に倒せる者はいないのだと思い出させる為だった。


「本当に……どうしてこんなに辺境と中央の認識に差がついてしまったんだろうね………。

辺境が頑張ってくれているから、中央や周辺地域は安全に暮らせているというのに、同じ貴族のはしくれとして申し訳なく思うよ……。」


アルシオンが悲しげに呟いた。


「そなたが謝るこではない。所詮は己の目で見なければ、魔族の恐ろしさは伝わらぬであろう事も致し方ない。

それでも今回の優勝で辺境の力は見せつけられた。これで支援金に文句を言っておった中央貴族達も少しは鳴りを潜め、まずは一つ親父殿からの命令は果たせたろう。

結果論ではあるが、そなたが決勝まで残ってくれたおかげで、中央の貴族共の子弟を倒さずに辺境の力を見せつけることか出来て、直接的に奴等の恨みを買うことも防げた。感謝するアルシオン。」


ノクスが騎士らしいキビキビとした動きでスッとアルシオンに頭を下げた。

頭を下げられたアルシオンは慌てた様子で、両手を突き出しパタパタと否定するように左右に振った。


「やめてよ。僕は単に負けただけないのに、魔族との国境を護ってくれている辺境伯のご子息に頭を下げられたら、逆に申し訳なくなるでしょ。」


「何を言うか。エイナー子爵家は中央傘下の地方貴族なのに辺境の為に尽力してくれている唯一の家門ではないか。

かつて国と辺境で結ばれた、貴族は一族の中から一人は辺境へと派遣するという約束を守られたのも、ここ最近では先代子爵様お一人だった。

……………そのせいで傷を負い、命を落とされたのだ。

むしろ申し訳なく思うべきはわし等の方であろうが。」


「…いいや、父さんは北地へ行商に行った際に魔族に襲われて、辺境伯様に助けて頂いたご恩を返そうとしただけだ。

元々救われた命だから気にする必要はないって本人も言っていたよ。

それに父さん亡き後、本来なら貴族の義務として僕も辺境へ赴くべき所を、子爵家が僕一人しか残っていないのを考慮して免除して貰っているんだし……。」  


「ふむ、それは単に適材適所と言うだけの話よ。

そなたが辺境に来るより、エイナー領の家業である畜産で、上手い牛肉や豚肉を支援してくれる方がよほど辺境の騎士達の力になる。

引け目を感じると言うなら、もっともっと家業に力を注いで旨い肉を送ってくれ!その方がわしは何倍も嬉しいし、助かるぞ!

正直弱っちいそなたでは、来てもわしらの足を引っ張るだけ……」


「ちょっとノクス様!もう少し言い方というものを考えて下さいませ!」


歯に衣着せぬノクスの発言に、カタリナがノクスの頭をゴツリとごついた。


「んがっ!」


「ははっ、良いんですよカタリナ嬢。僕も…頑張ってはみたんですけど、戦闘には不向きなのは重々承知しているので……。」


少しだけ寂しそうに笑うアルシオンにカタリナが瞳を潤ませる。


「そんな…どうかご自分を卑下なさらないで下さいまし。

アルシオン様は魔力を習得されておられますし、騎士科のほとんどの生徒が棄権したとはいえ、ご自分の力で準優勝されたではありませんか。十分ご立派ですわ。 」


カタリナに褒められて、アルシオンは照れたように眉を下げる。


「いやあ……お恥ずかしい。魔力を習得したと言っても、僕の場合は身体強化とほんの小さな火の玉を掌に出せる程度のものですよ。

ノクスのように氷の礫を出したり、辺り一面を氷漬けにするような真似は出来ませんから…。」


「こんな規格外のゴリラとご自分を比べてはいけませんわ!

魔力を習得する為にアルシオン様が努力されてきたこと、このカタリナ良く分かっているつもりですわ。………ご尊敬申し上げております。」


「おい。」


ノクスが不満の声を上げるが、カタリナは無視して、想いを伝えるようにアルシオンの手をぎゅっと掴んだ。


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