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2 決勝戦の真相

「そなたは一体()()婚約者だ。アルシオンの心配ばかりしていないで、優勝した()()()()()()()()に何か言う事はないのか?」


そう言われてカタリナは黒の甲冑の選手を見上げた。


カタリナよりも頭2つ分は大きい、今大会の優勝であり、自身の()()()()()()辺境伯子息ノクス・クロイを。


短く整えられた黒に近い赤髪に、アメジストのような紫色の瞳は切れ長で、精悍な顔つきの彼はなかなかの美丈夫だが、筋骨隆々な大きな上背と今にも人をくびき殺しそうな鋭い眼光が只ならぬ威圧感を放っていて恐ろしい。


普通の令嬢たちであれば、震えが止まらなくなりそうなものだが、カタリナは怯える様子などまったくない様子で、ジロリとノクスを睨ねめ上げた。


「ノクス様こそ、アルシオン様に謝罪はなさいましたか?

このように怪我をさせるなど何を考えておられるのです!?意識を失うほどの勢いで壁に吹き飛ばすなんて正気ですの!?」


食ってかかるカタリナに『なんだそんな事で機嫌が悪いのか。』とノクスは肩を竦めた。


「それは仕方あるまい。剣術大会で優勝して、今一度中央貴族達に辺境の存在意義を思い出させて来いとの親父殿の意向なのだ。

生半可な勝ち方をしたのでは意味がないであろう。」


悪びれる様子もなく淡々とした態度で仕方ないと済ますノクスにカタリナの怒りのボルテージが上がる。


「だからってアルシオン様は貴方のようなゴリラではないのですよ!手加減という言葉を知らないんですか!?」


喧嘩を始めた二人にアルシオンが慌てて割って入った。 


「ああっ、あの…違うんですよカタリナ嬢、僕がタイミングを誤ったんですよ!

ノクスは事前にいつ攻撃するか何処を狙うかまで教えてくれてました。

だから僕がキチンと防御していれば、ふっ飛ばされてもあんな風に気を失って壁に叩きつけられることもなかったんです。

それに手加減もしてくれていたからこそ、この程度で済んだんですよ。でなきゃ今頃はあばら骨の何本か折ってましたから。」


「そうだぞ。せっかく親切丁寧に、わしがが戦う前から攻撃箇所まで教えといてやったのに、コイツがとろ臭いから防御のタイミングが合わなかったんだ。

おかげでこっちの方がヒヤリとさせられたのだからな。」


「何を仰っいますか!アルシオン様は騎士ではありませんのよ!タイミングなどノクス様が合わせれば宜しかったではありませんか。

そもそもが、何故アルシオン様が決勝戦のお相手をすることになったのです?

アルシオン様は騎士科ではなく経営科ですわよね?

決勝戦のお相手がアルシオン様だと伺って、私がとれほど驚いたと思っているのですか?まさかと思いますが、嫌がるアルシオン様を無理に引っ張り出したりなどしていないでしょうね!?」


「何だと?言っておくが、コヤツが大会に出たのも決勝の相手となったのもわしのせいではないぞ!」


「あっ、あの、それは騎士科以外の男子生徒も剣術の授業を受けている者は大会参加が必須だったからです。

と言っても一般の生徒は通常は剣術大会の賑やかしで、騎士達の引き立て役になるのが常なんですけどね。

僕もまさか決勝まで残るとは思ってなかったから驚いてます。」


「ああ、それにはわしも驚いた。騎士科のほとんどの生徒が()()()()怪我や病気やらにかかって棄権したとはいっても、まさか剣術のセンスの欠片もないコヤツが他の選手を押し退けて決勝まで登ってくるとは思わなんだぞ。

しかもコヤツの勝ち方を知ってるか?コヤツ身体強化だけで勝ち上がってきたのだぞ。」


「身体強化だけ……………?」


カタリナはその言葉に眉をひそめる。


「そうだ。魔力で身体強化して逃げ回って、相手がヘロヘロに疲れて動けなくなった所で場外へ落っことす戦法だけで決勝まで登って来たのだ。

まったく、そんなやり方で勝つ方も勝つ方だが、負ける方も負ける方だ。

曲がりなりにも騎士を目指す騎士科の生徒達が一般生徒に対して情けない。そんなんで騎士になれるのかと開いた口がふさがらなかった。」


「そうなのですか?しかし身体強化など騎士にとっては基礎の基礎なのでは?

大会に身体強化の魔力もかけずに出場する騎士がいるのですか?」


カタリナの疑問にアルシオンが答えた。


「ああ、辺境では魔力で身体強化をかけるなんて普通の事ですものね。

でも中央では魔力を使える者自体が少なくなってきているのですよ。

身体強化ですら使えない……というか知らない者の方が多いと思いますよ。」


「まあ…………。」


淑女科に通うカタリナは騎士科の訓練を見ることがない。

というか、()()()()()()あえて騎士というものに近づかないようにしていた為、知る由もなかった。

しかし、カタリナにとって騎士といえば、辺境の騎士がスタンダードであるため、王都の騎士達が身体強化すら使えていなかったとは驚きだった。



驚きを隠せないカタリナにノクスが『ほれ聞いたか、わしのせいではない』と勝ち誇った顔をする。

カタリナがムッとし、アルシオンはクスリと笑う。


「でも試合後半の選手は、僕に負けたと言うよりも君と当たりたくなくて態と負けていたと思うよノクス。

何せ君、全試合開始一秒で相手を倒してしまっていただろう?全員将来の為や家門を背負って大会に参加しているのに一秒で負かされたらたまったもんじゃないだろ。

だから僕にお鉢が回って来たのは、間接的には君のせいだと思うな。」


「何だと?はぁ、中央は一体どうなっておるのだ…。いくら今が平時で戦もなく、王都や王都周辺には魔物すら出ないとはいえ、そんな逃げの姿勢で騎士が務まるのか?

万が一にも辺境が魔族共に敗れた時に、これでどうやって王都を護るつもりなのやら……。」


ノクスは頭が痛いとでもいうように(かぶり)を振った。



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