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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千七十四 美嘉編 「世間は評価してくれなくても」

「じゃ、そろそろ行こうか」


九時ごろ、僕は鷲崎わしざきさんと星谷ひかりたにさんにそう声を掛けた。


「はい」


二人がそう声を揃えて立ち上がる。山仁やまひとさんももちろん参観には行くけど、ぎりぎりまで仕事をしてからになるそうだ。


「いってらっしゃい」


絵里奈と玲那にそう言ってもらってからビデオ通話を終了させ、三人でアパートを出る。


歩いて学校に向かい、


「おはようございます」


校門のところで教頭先生に出迎えられた。


「それでは、また後程」


星谷さんは千早ちはやちゃんの教室に向かうために別れて、僕と鷲崎さんは沙奈子と結人ゆうとくんの教室へと向かう。


さすがに休日参観だけあって、父親らしき男性の姿も多かった。しかもそれに加えて、生徒の弟妹らしき子供達の姿も思った以上に多い。


教室に着くと、まず、沙奈子の姿を探した。と、さっそく席替えがあったのか、入学式に座っていたのとは場所が違ってた。以前は廊下側だったのが窓際の一番前になってる。結人くんは沙奈子のすぐ後ろだ。


偶然かもしれないけど、もしかすると結人くんにとってもこの席はありがたいのかもしれない。彼にしてみても、少なくとも他の子よりは沙奈子の方が慣れてると思うし。


普段も、僕の部屋で食事をとってる彼の様子は、すごく落ち着いてる。愛想がないのは相変わらずでも、緊張感というか警戒してる感じはなくなってきてる。普通にしてるんだ。


これも、ずっと彼のことを見てきたから分かる変化だろうな。彼のことをよく知らない人から見ればただの礼儀知らずな行儀の悪い子供にしか見えないと思う。


でも、そうじゃないんだ。彼は彼なりにちゃんと成長してる。変わってきてる。世間の普通とは違うかもしれなくても、それは沙奈子も同じだ。あの子も愛想よくはできない。他人に対して良い顔はできない。


だけど少なくとも沙奈子は他人に悪態を吐いたりしないし、意地悪もしない。結人くんも、自分から意地悪をすることは昔からほとんどなかったそうだし、積極的に悪態を吐くのもなくなった。照れ隠しに汚い言葉を使うことはあっても、それは身近な人が相手だけになってる。それ以外の人にはただ無口なだけだ。


まだ、うまく話すことができないんだろうな。だから取り敢えず黙ってる。変に悪態を吐いてしまったりするよりはその方がマシと本人も思ってるんじゃないかな。


彼の生い立ちからすればそれでも充分に頑張ってるよ。まだまだゼロにすら戻れてなくてマイナスなんだろうけど、ゼロに近付いて行ってると思う。


世間は評価してくれなくても、事情を知ってる僕たちはちゃんと彼を評価してあげたいんだ。



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