【立てるは】第8話:確実な破滅【フラグ】
**強力な切断糸、夜天光を作ったヒドゥン・エンカは、
擬装刀刹那も完成させて新たな武器の作成に取り掛かった**
刹那を作った翌朝、俺は新たに思い付いた武器の作成に取り掛かる。
縫い針を作るのに使った白い布を解して数本の糸を取り出し、夜天光を作るのに使ったカルシウムの粉末入りこんにゃく糊を塗る。
犬の卒倒と笑わば笑え、材料を共通にしておくのは何かと有用なのだ。
気を取り直して作業再開。
こんにゃく糊を塗った糸とは別に糸を数本抜き取り、何も塗らずに束ねておく。
糊が乾いたら、それぞれの糸を夜天光で研磨して摩擦熱で強化する。
夜天光と同じくらい硬くしたら糊を塗らなかった方の糸で作った束を囲むように束ね、羽根ペン程の太さに整えてからこんにゃく糊で接着した。
最後に芯に使った糸を抜いて中空にしてから剃刀付きの指輪、さざなみを使って先端に切れ目を入れれば羽の付いてない羽根ペンモドキの完成だ
今回は人の目が無いから羽無しだが、山を下りる前にダミーの羽でも付けよう。
続けて俺は食事を作る装置に新たな布皿を入れ、魔法陣を操作して竹炭の粉末を作る。
菓子の生地に練り込んで黒く色付けする天然素材、装置は竹炭を食材と認識してくれたようだ。
最後に竹炭を入れた布皿に水を入れてから羽根ペンモドキで溶き、糸を取るのに使った白い布に走らせる。
白い布に黒い軌跡が残り、ついに俺は筆記具を手に入れた。
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羽根ペンモドキを竹炭インクの布皿に立てかけた俺は、服を作る装置で幅の広い包帯を作り出す。
こんにゃく糊を塗ってから乾燥させた包帯の端に羽根ペンモドキで、装置に内蔵されている魔法陣を模写した。
何度も装置を触って来たおかげで魔法陣の仕組みや構造もだいたい理解し、どの紋様が俺の身体から魔力を吸い出しているのかを突き止めた。
だからこそ、新たな武器を作れないか試してみたくなったのだ。
描いた魔法陣が内側を向くよう布を巻いた俺は、【暖衣飽食】の外に出て実験の準備を始めた。
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準備と言っても簡単なもの、指に5周ほど巻いて筒状にした包帯を空洞のように開けた岩の隙間から外に出すだけ。
包帯で作った筒の先に何も無い事を確認した俺は、魔法陣に魔力を流し込んだ。
パンッ!
直後、軽い破裂音と共に包帯の筒から淡い光球が飛び出し、遥か上空で消えた。
成功だ!
RPGで言うところのエナジーボルトやマジックアロー、ついに俺は魔力の塊を前方に撃ち出す手段を手に入れた。
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実験の成功に気を良くして【暖衣飽食】へと戻った俺は、食事を作る装置に備え付けの棚から取っ手の無い木製のカップを取り出す。
描いた魔法陣を内側に向けた包帯をカップの外に1周だけ巻き、こんにゃく糊を外側に塗ってから10週ほど巻いて切り離す。
糊が乾いてカップを外したら、使いかけのガムテープみたいな筒が完成した。
同じ要領で残りの包帯をカップに巻き、合計で10個の筒が出来上がった。
魔法陣を描いた筒を一番下にして筒を重ねて接着し、こんにゃく糊を塗った糸を底から入れて魔法陣に貼り付ける。
最後に鉄粉入りこんにゃく糊を塗った黒い反物を外側に巻き、魔法陣から外まで通した糸が中に入らないように底を塞いで肩の高さほどの黒い筒が完成した。
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【暖衣飽食】から出た俺は、根城にしている岩の隙間も出て岩山の頂上付近まで来た。
手頃な岩を見付けた俺は、出来る限り離れてから【暖衣飽食】を手元で発動して玄関に立てかけて置いた布の筒を取り出す。
【暖衣飽食】の扉はサイズを変えられ、異世界もので定番のアイテムボックスのように使える事を99本の夜天光を作っている時に発見した。
さすがにスペースや配置が限定されるので小説のようにはいかないが、それでも便利な事に変わりは無い。
便利な機能の恩恵にあずかって取り出した筒を右肩に乗せて底から伸ばした糸を左手に掴んだ俺は、岩に狙いを定めてから糸を通じて魔法陣に魔力を流し込んだ。
ドンッ!
筒から鈍く重厚な音が響いて魔力の塊が飛び出し、狙い通り岩を粉々に砕いた。
「やった!」
そりゃ大声で叫ぶだろ、ここまで思い通りの結果が出れば。
有効射程や砲身強度など課題は山積みだが、魔王の手下どもを吹き飛ばせるのはここに来て最大の進展だ。
本懐への大きな前進を確信した俺は、興奮冷めやらぬまま肩に担いだ筒に魔力を注いで砕け散った岩の隣の岩に狙いを定めて撃ち放った。
ドンッ!
第一射と同じ音が鳴り響き、同じように岩が粉々に砕け散った。
後ろにガスや反動を逃がすバズーカなどの無反動砲と違って底を塞いだせいか、腕力と体力が10万の身体でも肩から全身に反動が伝わって来る。
それでもあえて、この筒には布バズーカと名前を付けた。
武器の名前なんて、使い手本人の愛着や納得が最優先だからな。
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名前:ヒドゥン・エンカ
種族:人間
性別:男
職業:なし
レベル9999
経験値――
次のレベルまで――
HP:**198964**
MP:9999999999999
腕力:1+99999
体力:1+99999
素早さ:1+99999
器用さ:1+9999999999999
知力:1+99999
魔力:1+99999
運:1+0
武器
・さざなみ:攻撃力7
・布バズーカ:攻撃力60
・刹那:攻撃力65
・夜天光×99:攻撃力8105
防具
体:村人の服:防御力1
足:布のサンダル:防御力1
スキル
【暖衣飽食】:消費MP1
【Sドレイン】:消費MP1
ん? どういう事だ?
新たな武器を確認するためにステータス画面を開いた俺は、小さく唸った。
布バズーカは登録されたが、擬装用に作った布製の剣より攻撃力が低い……
さざなみだって魔力を流し込めば周囲のモンスターを一掃出来る爆発を起こせるけど、この攻撃力だ。
すると布バズーカの攻撃力は、鈍器として殴った場合のものなのか?
どうやら、まだまだ調査と検証の必要があるみたいだ。
だがこれで、ようやく魔王の根城に殴り込む必要最低限の手札が出揃った。
“欲しいものが手に入らなかったら自分で作る”
生前に生まれ育った国の先人達は地獄とも言える災害大国を楽園に変えて来た。
そして異物が一線を超えれば、楽園を修羅の巣窟に変えるのも厭わない。
故郷を蝕む“魔王”が駆逐されるのも時間の問題だろう。
もう戻れないし、未練も無いけどさ……
身体が変わって遺伝子すら残っていないのに、魂に刻まれた知識は遺伝子と同じ働きをするのだろうか?
いかんな、少々感傷に浸りすぎたかもしれない……
布バズーカを片手で撃てるよう糸とつないだ持ち手を作ったら、この岩山を下りよう。
どの武器にもまだ課題はあるが、実戦でデータを集める方が手っ取り早い。
下山の決意を固めた俺は、明日に備えて寝るために【暖衣飽食】に戻った。
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『祝福せよ! 祝福されよ! おぬしの身体は数多の乙女を惹き付けるじゃろう』
気が付けば暗闇の中、またしても赤いスク水に股間が包まれた太陽の女神セキの巨大な鼠蹊部が浮かび上がる。
『あなたの声は愛のさえずり、たちどころに道行く乙女を虜にするでしょう』
続けて月の女神サヤの鼠蹊部が黄色いスカート付きの水着と共に浮かび上がる。
『あんたが立ち止れば乙女達が集まり、すぐ愛の巣となるだろう』
最後に海の女神ナギの鼠蹊部が青いセパレート水着と一緒に浮かび上がり、俺の視界は三柱の女神の鼠蹊部に埋め尽くされた。
何度も見て来た光景だからなのか、これが夢と自覚出来るようになってから何の感情も湧かなくなってしまった。
こういうのに慣れていいものなのかな~?
そんな事を考えている間にも女神様方の口上は続く。
『『『さあ、この世界を我らの愛で満たすのです』』』
女神様方が口をそろえて決め台詞で締め、いよいよ俺の視界がぼやけて来る、
そろそろ朝か……
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「はぁ……なんつー夢だよ……」
やたら愛を連呼していたけど、詰まるところは子作りの催促。
今の俺は人っ子ひとりいない山奥にいるというのに、まるで孫を急かす母親……
そこまで考えが浮かんだところで俺は、いったん思考を停止した
この身体が出来た経緯を考えたら、深入りするのは止めた方がよさそうだ。
とはいえ、あの夢からは有用な情報も手に入った。
1、この身体のまま人に、特に女性に会えば即詰み。
2、知力が10万あっても情報が無ければ予測すら出来ない。
以上2つが今後の俺にどんな影響を及ぼすのかは未知数。
ここ数日【暖衣飽食】にこもっていて気になったのだが、この異空間の部屋には神棚、異世界だから祭壇か? とにかくそれに類するものが存在しない。
この世界の祭壇に神と交信する機能があるのかは知らんが、三柱の女神に魔王の脅威を伝える手段が見付かるまでは町も安全とは言えない。
どうやら、魔王討伐計画を根本から練り直す必要がありそうだ……
「魔王を討伐したら、この世界で最初に目が合った女の子にプロポーズしよう」
まずは定番の死亡をフラグを口に出しておく。
こっちの異世界にも言霊があるのかは知らないが、魔力があるのだから何らかの効果はあるだろう。
生前は蓼ですら無かった俺の想像力では、これが限界だ、
改めて魔王と刺し違える決意を固めた俺は服を作る装置で金色のビキニを作り、生前に持っていた素材や構造の疑問を解消するべくさざなみで解し始めた。
次回からは毎週金曜日に更新します




