【ねんがんの】第6話:さざなみ【武器をてにいれたぞ!】
**己の力量を把握したヒドゥン・エンカは、
山積みの問題を翌日に回して眠りについた**
『祝福せよ! 祝福されよ! 新たな命を生み出すのじゃ!』
何も無い暗闇の中、股間を赤いスク水で覆った太陽の女神セキの巨大な鼠蹊部が眼前に迫って来た。
『役目を果たして、しっかり増やしてくれよ!』
思わず後ずさりをすると、今度は青いセパレート水着に包まれた海の女神ナギの巨大な鼠蹊部が現れた。
『わたくしたちの世界を愛で満たしてくださいね~』
更には俺を取り囲むように、黄色いスカートが付いた水着を身に付けた月の女神サヤの鼠蹊部まで姿を見せた。
置かれた状況を理解する間も無く、3色の鼠蹊部と柔らかそうなふとももが俺の視界を塞いで行く……
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「うわぁぁぁあっ!?」
大声を上げて飛び上がった俺は、慌てて周りを見回した。
「夢か……」
しかし、ひどい夢だった……
ああいう巨大な女の子はイラストとか漫画ならともかく、実物を目の前にすると恐怖がスケベ心を上回ってしまう。
つーか、ハーレムを作らせたい転生者にトラウマ植え付けようとすんなよ……
魔王と刺し違えるまでは作る気なんて無いけどさ。
夢は記憶を整理するために見るとか聞いた事あるけど、俺の深層心理にああいう願望があるとは思いたくないな。
嫌な考えを追い出そうと頭を大きく振った俺は、気を取り直して立ち上がろうと両手に力を込めた。
ベリッ!
直後に布が破れる大きな音が響き、恐る恐る手元を確認してみると布団代わりに敷いたローブが大きく裂けていた。
「あちゃ~、指輪で引っ掛けちまったか」
このささやかな惨劇の原因は、右手の人差し指に巻いた眼鏡の蔓だった。
魔王と刺し違える貴重な手段だから、寝る前に外し忘れていた。
生前はアクセサリに縁なんて微塵も無かったのも関係している。
次からは寝る前に外して枕元に置く事にしよう……
確実にダメ出しされる再発防止策だが、知力と器用さが高けりゃ効果あるだろ。
短い反省会を終えた俺は、適当にローブを丸めて朝食をとる事にした。
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「昨日は寿司だったし、朝はパンがいいな」
海苔巻きの形に押し固めた粉末を寿司と呼んでいいのか分からんが、とりあえず今回は別のメニューを試す事にした。
木皿を装置に入れてからタッチパネルを開き、チーズバーガーを注文する。
すると鉄火巻きを作った時と同じく皿の上を渡すようにレーザー光線が点滅し、一瞬のうちに様々な色の粉が押し固められていった。
食パンよりひと回り小さく押し固められたバンズ色の粉末にパティとチーズ色の粉末を固めて挟んだ、世にも珍しい角張ったバーガーの完成だ。
口に入れた四角いバーガーは昨日の鉄火巻きと同じくすぐに溶けて肉とチーズの旨味が広がったが、バンズの粉がパンに近い食感だったので違和感は少なかった
まだ物足りないけど、パン系は当たりかもしれない?
ささやかな成功に満足した俺は、ついでに注文していたコーヒーに口を付ける。
木製のカップに粉を入れてお湯で溶いただけだが、酸味を抑えた強い苦味の後を微かな甘味が追って来る理想的なブラックコーヒーになっている。
やっと納得出来る味に満足した俺は、四角いバーガーを勢いよくコーヒーで口の中へと流し込んだ。
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「やっぱり、これ全部魔法なんだよな?」
皿を棚に戻してひと息ついた俺は、コーヒーをもう1杯入れた。
服や料理を作る装置を使うにはMPが必要だが、魔力が10万もある俺の場合は全ての消費MPが1となる。
金を支払って文明の恩恵を受けられる生前の社会、【暖衣飽食】はそれをMPの消費に置き換えたようなものだ。
MPが10兆弱もある俺は、総資産が10兆円近くあるのに支払いは全て1円といった地球では絶対にありえない超絶チートな生活を送れる。
しかもMPは一定時間休むと自動回復するから、資産は実質無限。
このまま山奥の引きこもりライフを満喫するのも悪くないか? と思いつつも、それは絶対に入れてはいけない選択肢だと強く自分に言い聞かせる。
寂しさに負けて人里に出た頃には、道の真ん中で魔王に祈りを捧げる信者で溢れ返っていた……なんて洒落にもならない事態になりかねない。
この異世界に転生した一宿一命の恩を仇で返す訳には行かない。
改めて決意を固めた俺は、コーヒーを飲み干した。
それにしても美味い!
理想的なコーヒーの美味さに、直前の決意があっさり揺らぎそうになる。
しかも無限に飲めるのだから、まさにチートとしか言いようがない。
「SFなら材料を補充するよな、俺が見てたアニメでもカルシウムカートリッジを市場で買うシーンがあったよな……」
生前の思い出を呟いた俺は、自分の口から出た言葉に引っ掛かるものを感じた。
「カルシウム?……そういや、こいつはどうやって魔力を食料にしてるんだ?」
疑問を口に出した時には既に食事を作る装置に触れ、仕組みの大半を理解した。
さすがは素早さ10万、器用さ10兆の身体だ。
案の定、装置には食材の生成や調理に使う魔法陣がいくつも組み込まれていた。
カタログの上位にあった料理を作れる魔法陣は封印されているが、現状で使える粉しか作れない魔法陣は解析出来た。
どうやら描かれている紋様の組み合わせで食事を作り出しているようだ。
しばらく魔法陣を指でなぞった俺は、”ある食材”を作る紋様を発見した。
これが作れるなら、行けるかもしれない!
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頭の中で描いたビジョンからの逆算を終えた俺は、まず眼鏡の蔓で作った指輪を外して元の棒に戻した。
そして右手の人差し指に根元から丁寧に巻き直し、1周回って余った部分を指に乗せるイメージで90度曲げた。
次に指輪を外して輪からはみ出した箇所を指で挟んで強く押すと、ミリ単位だが粘土のように抵抗なくへこんだ。
さすがは腕力10万の怪力と器用さ10兆の超感覚、頭の中で思い描いたものに難無く加工出来そうだ。
確信を得たのなら、あとはひたすら加工あるのみ!
思い通りに進んでテンションが上がった俺は、指輪からはみ出た箇所を小指側に向かうように傾斜を付けながら一心不乱に押し潰し続けた。
どれくらい時間が経ったのか分からないが小腹が空いた頃には、指輪のはみ出た箇所をナノレベルまで薄く圧縮し終えて剃刀のような刃が付いた指輪が完成した。
完成した剃刀付きの指輪を右手人差し指にはめた俺は、今朝破いたローブを手に取って袖に刃を当てた。
そのまま刃を引くとローブの袖はハラリと切れて床に落ち、俺は小さいながらも念願の武器を手に入れた。
毎回眼鏡の蔓で作った剃刀付きの指輪と呼ぶのも面倒だし、ナノレベルの小さく細かい加工を続けて完成したこの指輪は“さざなみ”と呼ぶ事にしよう。
そんな事を考えていたら、ここまで改造した眼鏡の蔓が今はどんな表記になっているか気になったのでステータスを開いてみた。
名前:ヒドゥン・エンカ
種族:人間
性別:男
職業:なし
レベル9999
経験値――
次のレベルまで――
HP:**198964**
MP:9999999999999
腕力:1+99999
体力:1+99999
素早さ:1+99999
器用さ:1+9999999999999
知力:1+99999
魔力:1+99999
運:1+0
武器
・さざなみ:攻撃力7
防具
体:村人の服:防御力1
足:布のサンダル:防御力1
スキル
【暖衣飽食】:消費MP1
【Sドレイン】:消費MP1
ん? 武器がさっき心の中で名付けたばかりのさざなみに変わっている?
武器の名前を変更したら、ステータス画面にも反映される仕様なのか?
変更条件やら何やら検証する事は山積みだが、ひとまずありがたい機能だ。
攻撃力も上がったみたいだが基準が分からないので保留、まずは第一段階が終了した。
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角張ったホットドッグとコーヒーで軽く昼食を済ませた俺は、脳内で描いた第二段階に移る事にした。
今朝の惨劇から無事逃れた2着の黒いローブの袖をさざなみで切り落としてから本体を正面で開き、それぞれを8枚の布に切り分ける。
破いてしまったローブは切らずに布地を解し、糸を数本取り出しておく。
切り取った袖はそれぞれ縦長に巻いて片方を折り返し、等間隔に糸を巻いてから縛って刷毛と箆の合いの子みたいな道具に作り変えた。
ひと通り先端の具合を確かめ終えた俺は食器棚から木製のスープ皿を取り出し、2着のローブから切り出した布で包む。
包み終えたらスープ皿を取り出してから次の布で包み、皿で型を取った布の皿を10枚作った。
残った布は部屋の隅にまとめ、頭に描いたビジョンの第二段階は終了した。
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第三段階に移行した俺は、型を取るのに使ったスープ皿を棚に戻さず食事を作る装置に入れた。
そして魔法陣に直接触れ、こんにゃくの粉を作り出す紋様に魔力を流した。
装置は正常に作動し、スープ皿の半分はこんにゃくの粉に満たされた。
続けてスープ皿に水を入れてからローブの袖で作った刷毛と箆を合わせたような道具で混ぜ合わせ、ついにこんにゃく糊が完成した。
この糊はただの和紙を太平洋横断可能な紙風船に変えられる優れもの、必ず魔王討伐の役に立つだろう。
ひとまずの成功に安堵した俺は、皿形の布にこんにゃく糊を塗って固定させた。
こんにゃく糊が乾いて布皿が完成すれば第三段階は終了、いよいよ最終段階だ。
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こんにゃく糊が充分に乾いた事を確認して布皿を1枚手にした俺は、食事を作る装置に入れて魔法陣を操作した。
次に作り出すのはカルシウムの粉と少量のこんにゃくの粉。
魔法陣は操作次第で栄養素まで細分化して生成出来ると分かったから、頭に思い描いた武器作りを実行に移したわけだ。
続けて布皿に水を入れてから最初にこんにゃく糊を混ぜた時とは別の袖で作った道具で混ぜ、カルシウム入りのこんにゃく糊が完成した。
次は服を作る装置の出番だが、こちらは体を覆うものまでしか作り出せず、糸や染料に細分化するのは不可能だった。
様々な化学物質である染料があれば選択の幅が広がったのだが、無いものは仕方ない。
気分を切り替えた俺は服を作る装置の魔法陣を操作し、拳4つ分の幅と現状設定出来る最長数値を入力して黒い反物を作り出した。
魔法で作った謎素材を謎技術で織った布を反物と呼んでいいのか知らんが、クソダサい下着に”kimono”と名付けたクソレイシストよりはマシな感性だろう。
生前のつまらない記憶を鼻で笑った俺は鉤のように折り曲げたさざなみの先端を使って反物から糸を解し取り、先端にカルシウム入りのこんにゃく糊を一滴塗る。
続けて黒い糸の根元までカルシウム入りのこんにゃく糊を先端の一滴よりも薄く塗り、しばらく乾くのを待った。
これで頭に思い描いた武器の完成だ、さっそく外で試してみよう。
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「さっそく行くぜ!」
意気揚々と根城にしている岩の隙間を出た俺は頂上付近まで登り、手ごろな岩に向けて手にした糸を振った。
糸は岩を削り裂いて見事に両断!……するはずだった。
ペチッ!
だが現実では、糸は軽い音を立てて岩肌を撫でるだけだった。
どういう事だ?
カルシウムって骨や歯になるから硬いと思ったけど、粉のままだと駄目なのか?
ここまでして来た事は、全て無駄だったのか?
焦りに駆られて何度も糸を振るが、どれだけ岩に当てても地面に落ちてしまう。
「ここまでか……!?」
諦めて別の手段を考えようと思った瞬間、糸から別の手応えを感じ取った、
「これだ! この角度で振れば!」
指先で微妙に角度を変えながら振った糸が火花を走らせながら硬い岩肌を撫で、徐々に岩を削って行った。
そして、ついに……
スパッ!
魔力と摩擦熱に鍛えられたカルシウムの粉末が瞬く間に岩を削り裂き、根元から綺麗に切り落としていた。




