【どうして】第2話:次の転生者へ託そう【こうなった?】
**モンスターの大群を巻き込む爆発を起こした転生者は、
天高く舞い上がりながら自分の最期を祝福した**
頑丈な全身鎧を着て腰にはロングソード、異世界転生で剣士を選んだ俺は新たな冒険の世界に胸を躍らせながら冒険者ギルドに入った。
鎧の材質は何だか分からないけど羽のように重さが無く、足取りまで軽くなる。
「ようこそ剣士様、こちらへどうぞ」
そのまま俺は、ギルドの受付嬢に案内された部屋に入った。
部屋には窓も明かりも無く、扉から入る明かりも奥には届かない。
「どうそ、ごゆっくり」
戸惑う俺を気にも留めずに受付嬢が扉を閉め、部屋は暗闇に包まれた。
「え? どういう?……!?」
「ようこそ転生者様」
「たっぷりご奉仕いたしますね~」
「まずは鎧を脱がせないと」
部屋の奥から3人の女性がただならぬ気配を漂わせながら飛び掛かり、俺は為す術無く押し倒された。
瞬く間に鎧まで脱がされ、柔らかな感触と甘い香りに包まれていく……
冗談じゃない!
何とか身体に力を入れて柔らかな重みから抜け出そうとすると、今度は頭上から大きな声が響いて来た。
『抗うでない! これはおぬしの役目じゃ!』
声の主を探す俺の眼前に巨大な少女の両足が現れ、見上げた視界は赤いスクール水着で股間を覆った鼠蹊部に塞がれた。
『おとなしくしてください、すぐに慣れますから』
巨大少女から離れようとした俺は新たに出現した巨大少女の足にぶつかり、振り向いて見上げた先には短いスカートの付いた黄色い水着の鼠蹊部があった。
『男だろ? 堂々と受け入れろよ』
逃げ道を探す俺の行く手は更に別の巨大な少女の両足に塞がれ、やはり見上げた先には青いセパレート水着の鼠蹊部が見下ろしていた。
「うわぁぁぁあああ!」
広さも高さも分からなくなった暗闇の中で三方を巨大な少女の下半身に囲まれた俺は、緊張とか理性の糸が切れて何も考えられずに叫び出した……
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「うわぁぁあ!……!? 夢……だったのか?」
自分の大声で目が覚めて飛び起きた俺は、額の汗をぬぐいながら周囲を見回す。
「ここは?……どこなんだ?」
夢に出て来た暗闇とは違う風景に安堵した俺は、改めて周囲を確認した。
木も草も生えていない殺風景な岩の先は、まるで崖のように途切れている。
空気の薄さや肌寒さを考えるに高い山の上だろうか?
記憶の限りでは、俺が化け物の大群に囲まれたのはどこかの平地だった。
逃げ道も無く絶体絶命のピンチだったが、何故かステータスが上昇した。
そこで俺は手にしていた眼鏡の蔓に魔力を流し込んで大爆発を起こし、俺自身も空高く吹き飛ばされた……
「何で俺は……」
(生きているんだ?)
口から出て来そうになった言葉を慌てて呑み込む。
今のこの身体が本当に生きているのか、まだ確証を持てない自分がいるからだ。
確か俺は、一度地球で命を落とした。
詳しい事は覚えていないけど凄惨な事故に遭い、今わの際に壊れた眼鏡を掴んでいた事だけは覚えている。
次に気が付いた時は、暖かい草原のような場所に座っていた。
そっと見た手が黒い靄に覆われていたが、生前の姿なんて思い出したくないから都合がよかった。
そして、夢に出て来た巨大少女達とご対面したのをようやく思い出した。
異世界転生についての説明を聞いた記憶はあるが、まずはこの状況に説明の付く記憶を辿るとしよう。
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『ようこそ地球人の魂よ。我は太陽の女神セキ、おぬしはこれより我々の創造した世界に転生してもらう』
最初に姿を現したのは赤いスク水の巨大少女、太陽の女神セキだった。
距離を置いて首を90度近くまで持ち上げればピンク色の髪を肩まで伸ばした、少女と呼ぶには少し幼い顔が遠くに見える。
「転生? まさか異世界転生なのか!?」
『知っているのなら話は早いですね。あ、わたくしは月の女神サヤと申します』
創作でしかありえないと思っていた話に俺が困惑していると、太陽の女神セキの右隣に黄色いスカート付き水着の巨大少女が現れた。
同じく首を持ち上げた先には軽いウェーブのかかった長い黒髪の少女、月の女神サヤが眼鏡の端に手を当てながら微笑みを返して来る。
「あ、ご丁寧にどうも……俺は……」
『無理に名乗らなくてもいいぜ、あとで入力してもらうからよ。あたいは海の女神ナギ、よろしくな』
思わず頭を下げた俺が言葉を詰まらせると、今度はセキの左隣に青いセパレート水着の巨大少女が姿を見せた。
やはり首を持ち上げると、短い水色の髪の少女が無邪気な笑顔を見せて来た。
「入力? まるでゲームだな」
『否定はしないぜ、ステータスは地球のゲームを参考にしたからな』
「ステータス!? 何でそんなものが……?」
『記憶を持ったまま別の肉体に入るのですから、慣れるまでの措置です』
「待ってくれ! この記憶は消せないのか?」
『当然じゃ、地球で生きて来た記憶こそ我々に必要じゃからの』
次々と湧いてくる疑問に三柱の女神が交代で答えてくれた。
その後もこの異世界に関する説明を聞いたが、俺は既に決心を固めていた。
「それなら転生しなくていい、このまま死なせてくれないか?」
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『おいおい、強くなって女にモテモテの何が不満なんだよ?』
「記憶があるからだよ……」
生前の記憶は鮮明ではないが、何度も裏切られて利用されて惨めな人生を送った果てに心が壊れた自覚はあった。
例え金持ちで名家のイケメンに生まれ変わっても、この歪んだ性格でいる限りは絶対に失敗する確信も当然のようにある。
だから俺は、神々を相手に死の取引を持ちかけた……
「俺なんかじゃなくて、もっと転生に前向きなやつを選んだ方がいいと思うんだ」
『確かにおぬしの話も一理あるのう……』
どんなやり取りをしたのか思い出せないが腹蔵なく、つまりは腹を割った説得を続けたおかげで最初に太陽の女神セキが頷いてくれた。
『でもよ、もう新しい魂を買う神気なんて無いぜ?』
「なら、俺の魂を売るか壊すかして神気とやらにしてくれよ」
一方で海の女神ナギが難色を示し、俺は黒い靄に包まれた胸を叩いで見せた。
神気とは神の奇跡の源だが、人間の魂も買える神々の通貨でもあるらしい。
魂を神気で買えるなら逆も然り、これが俺の出せる違約金って事になる。
『確かに地球人の記憶はいい神気になるけどよ、どうやって取り出すんだ?』
『魂に付いた記憶を神気に変えるには、一度地上で命を落とすしかありませんね』
「地上で死んだら、俺の魂はどうなるんだ?」
『魂に付いていた記憶を全て洗い流し、多数ある異世界のどこかに転生します』
海の女神ナギの疑問に答えた月の女神サヤは、続けて俺の質問にも答えた。
「つまり、今のこの記憶は綺麗さっぱり消えるのか?」
『そうなりますね』
「なら決まりだ。転生直後に死ねるよう、最弱のステータスにしてくれないか?」
月の女神サヤから望みどおりの回答を引き出せた俺は即座に腹を括った。
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『割り振るはずのステータスはどうするのじゃ?』
「次の転生者にでもくれてやってくれ」
『お優しいのですね、手放すのが惜しいくらいです』
「つまり、交渉成立でいいのか?」
『不本意だけどね。でも身体は用意していたものを使うぜ、今はミジンコ1匹作る余裕も無いからな』
「おわぁっ!?」
三柱の女神との交渉を円満に終えた俺は、正確には俺の魂は海の女神ナギの声を合図に銀髪美少年の中に吸い込まれた。
『では、ステータスオープンじゃ』
しばらくめまいに襲われていた俺は太陽の女神セキの声で意識を取り戻し、目の前にはゲームのステータス画面みたいなものが浮かんでいた。
名前:????
種族:人間
性別:男
職業:なし
レベル1
経験値0
次のレベルまで13
HP:10
MP:10
腕力:1+0
体力:1+0
素早さ:1+0
器用さ:1+0
知力:1+0
魔力:1+0
運:1+0
「名前の入力はパスでいいか? どうせすぐ死ぬんだし」
『自分の命にドライじゃのう。生きたいと思ったら、きっと名付けるのじゃぞ』
「約束する。同じ理由で職業も選ばなくていいか?」
『構わぬぞ。何らかの基本ステータスが10以上なければ、何も名乗れぬからの』
「そう言うシステムなのか……ところで、この+0ってのは何だい?」
『表記は【基本ステータス】+【追加ステータス】となっておる、おぬしの身体に宿った能力が基本ステータスじゃの』
『身体が存在する以上、ステータスは必ず1はあるんだ』
生前に遊んで来たどのゲームにも無かった謎の表記に戸惑っていた俺に、二柱の女神が交代で答えてくれた。
他にも説明を受けたと思ったが最終的に俺はHPとMPが10、他のステータス表記は全部1+0となった。
『それと、武器をひとつ装備する決まりなんだ。何にする?』
「確実に死にたいから、最期に握り締めてたこれでいいよ」
『律儀なまでに徹底してるな~。ホント、手放すのが惜しくなるぜ』
「そいつはどうも。妥協と加減が普通とズレてるのは、生前からの性分でね」
『おいおい、そこは”前世”だろ?』
「反応次第だ、その程度の変節漢は自認してる」
ひとしきり納得しているところに海の女神ナギの声が響き、俺は手に持っていた眼鏡の蔓を差し出した。
何で俺がこんなものを持っているのか知らない。
生前の未練か今わの際の意地なのか、調べる術がない以上は興味も失せる。
『固有スキルは設定はしましたが、もう1つスキルを追加する決まりがあります。どんなスキルをご希望ですか?』
「万が一にも生き延びる事が出来たら周囲に馴染みたいから、最初に見たスキルを使えるようにしてくれればいいよ」
『それはいい考えですね、さっそく設定しましょう』
月の女神サヤの声が響き、俺の要望をあっさり受け入れてくれた。
しかし決まりが多いな……
ゲームでも入力値の空白がどんな不具合を起こすか分からないけど、この世界の転生も同じ理屈なのか?
『準備は出来たようじゃの』
『出来る事なら、あたい達の世界で第二の人生を歩んでほしいんだけどね』
『たとえすぐに散る運命でも、わたくしたちはあなたの幸福を願っています』
「もし生き延びる事が出来たら、少しは器用に生きてみせるよ」
『相分かった、そなたの新たな人生の始まりじゃ!』
思い思いの言葉を重ねる三柱の女神に見送られ、俺は異世界に送られた……
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「でもって、あの荒野で化け物ども……異世界だからモンスターに囲まれたんだ」
随分と長く回想してしまったが、ようやく思い出した。
人生に疲れていた俺は、舌先三寸とハッタリで女神から死を勝ち取った……
……はずなのに! なぜ今ここで生きているんだ!?
とにかく生き延びた要因を検証しないと、安心して死ねないだろ!




