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詰んではじまる異世界無双~全ステータス1のままレベルMAX(9999)になった転生者は、固有(ユニーク)スキル【暖衣飽食】を駆使して魔王討伐を決意する~  作者: しるべ雅キ
ハーデントレスの町

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19/28

【由来は】第19話:永遠の賢者【お察し】

**ケンノスケに続いて試験を受けたヒドゥン・エンカは、

暴走したゴーレムのコアを両断して合格した**

 優男(やさおとこ)風のギルド長と試験官の巨漢に案内してもらった部屋は、いかにも異世界を舞台にしたアニメに出て来るような冒険者ギルドの受付だった。


 隣の部屋には酒場でもあるのだろうか? 随分と賑やかな声が聞こえて来る。


 この世界の住人が必要に応じて作って来たものなのだろうが、仮に先代転生者の知識を参考にしていても特段驚きはしない。


 俺(おれ)にとっては“先代転生者”だけど、この世界では何て呼び名なんだろうか?


 そんな事を考えていると、ギルド長が受付カウンターの奥に見える眼鏡を掛けた女性と話しているのが聞こえて来た。


「ギルド長、試験の方はよろしいのですか?」

「ええ、今日はひと組だけですから」

「では今回も?」

「いえ、合格ですよ。2人の登録準備をお願いしますね」

「かしこまりました。お二方はこちらへ、まずはレベルを確認します」

「むっ!……うむ……」


 とんとん拍子に話が進んで行くのはいいけど、レベルの確認だって!?


 念のためステータス画面を開いたけど、これはマズいぞ……


名前:ヒドゥン・エンカ

種族:人間

性別:男

職業:なし

レベル9999

経験値――

次のレベルまで――

HP:**198964**

MP:9999999999999

腕力:1+99999

体力:1+99999

素早さ:1+99999

器用さ:1+9999999999999

知力:1+99999

魔力:1+99999

運:1+0

武器

・さざなみ:攻撃力7

・刹那:攻撃力65

・ケンノスケ:攻撃力9999

防具

頭:ボロ布の帽子:防御力4

頭:遮光器:防御力64

体:偽革の服:防御力4

体:ボロ布の合羽:防御力4

右腕:夜天光×20:防御力8105

左腕:夜天光×19:防御力8105

足:偽革の靴:防御力2

スキル

【暖衣飽食】:消費MP1

【Sドレイン】:消費MP1


 このレベルとステータスがバレたら、そこで詰んじまう。


 とにかく俺(おれ)はケンノスケを唸(うな)らせて時間を稼ぎ、打開策の模索を始めた。


▼


「レベルの測定は初めてですか? そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ」

「うむ……それで、どのように測定を?」

「こちらの水晶玉に手を乗せていただくだけです」

「ほぅ、どのような仕掛けなんだ?」

「手を乗せた人の基本ステータスを測定してレベルに変換する仕組みです」


 受付の女性は事務的に水晶玉を取り出したけど、基本ステータスだって!?


 それなら俺(おれ)が転生者だとバレる心配もない!


 作戦変更、まずは俺(おれ)が前座を務めるべく受付カウンターに駆け寄った。


「先生、まずは俺(おれ)からやってみていいですか?」

「そうだな」

「では、こちらへどうぞ」

「どれどれ……レベルは、1か……」


 果たして、俺(おれ)が手を乗せた水晶玉は見事に【1】と表示してくれた。


 思わず俺(おれ)が安堵のため息をつくと、巨漢が肩に手を乗せて来た。


「この測定法だと、レベル2に上がるだけでも相当な修練が必要になるからな」

「ん? どゆこと?」

「本来レベルってのは、女神様の祝福を受けた人にしか見えないものなんだ」

「それじゃあ、俺(おれ)達のレベルってどうやって見てるんですか?」


 知ってた速報だが、ソースが付くのはありがたい。


 しばらくこっちの世界に溶け込むんだし、ここは“常識”を知るチャンスだ。


「どの生き物にもある基本ステータスを見た水晶玉が計算してくれる。もっとも、本来のレベルを大きく5段階に分割したものだがな」

「では例えば水晶玉でのレベルが1の人でも、祝福を受けた人が見た場合はレベル2とかそれ以上の人もいるって事ですか?」

「ああ、そうだぜ。水晶玉を使う測定法を考えた永遠(とこしえ)の賢者様によると、レベル9までは1になるそうだ」


 自分のステータスさえ祝福を受けた者にしか見えない以上、他に手段はあっても精度の低いものになってしまう訳か。


 とはいえ、誰もが簡単にステータスを見れる世界じゃなくて助かったぜ。


 それにしても考案者はどんな人物なのか、探ってみる価値がありそうだ。


「永遠(とこしえ)の……賢者? どんな人なんですか?」

「数百年前に活躍した、一介の冒険者には収まらない万能の賢人ですね。出自には不明な点も多く、一説には別の世界から転生したなどという話もあります」


 ビンゴ! 思惑通り、ギルドには先代転生者の情報があった。


 この世界の住人は2代目転生者がいる事を知る由も無いから、俺(おれ)も先代転生者について迂闊に聞けなかった。


 世間一般では“先代”でない以上、呼び方すら見当も付かなかったからだ。


 それにしても“永遠(とこしえ)の賢者”ね……


 ハーレム作りに特化したこの身体(からだ)を考えれば、自(おの)ずと由来は見えて来る。


 もし何も考えずに転生していたら、俺(おれ)は僅(わず)かな間だけ2代目賢者様になってから魔王の刺客に命を奪われていた事になる。


 詰んでなければ詰んでいたとは、随分と皮肉な話だよ……


「じゃあ、賢者様は自分のレベルが見えていたんですか?」

「ええ、永遠(とこしえ)の賢者様も若い頃はダンジョンでレベル上げをしたそうです」

「それでレベルいくつまであったんです?」

「神託を受けた女神官に連れ戻され、最後まで確認出来なかったそうです」


 そりゃそうだ……女神様方はレベルより出生数を上げて欲しいだろうからな。


 だが同時に合点(がてん)も行った。


 先代がレベリングに没頭し過ぎたせいで逆に俺(おれ)は即座にレベルがMAX(9999)になり、レベル上げに興味が向かないように仕組んでいた訳か。


 こりゃ、他にも先代のやらかしの余波があると見た方がいいだろうな……


「そろそろいいかい? いよいよ旦那の番だぜ」

「分かった、これでいいのか?」

「測定不能? そっちの子は測定出来たから、故障じゃないわよね?」

「俺(オレ)は過去に大きな爆発に巻き込まれてな、この身をこんな装甲に置き換えて命を何とか長らえている」


 続けてケンノスケが水晶玉に右手を乗せたが当たり前だ、武器に基本ステータスなんて無いからな。


 でも嘘はついていない。1か月前でも過去は過去だし、持ち主の俺(おれ)が爆発で飛ばされたのも事実だ。


「なるほど、杓子定規に行かない事もあるのですね」

「では、俺(オレ)は冒険者になれないのか?」

「いえ、登録前の通過儀礼みたいなものです。ようこそ、冒険者ギルドへ」

「では登録手続きをして来ますね、少々お待ちください」


 一応の納得を見せたギルド長が浮かべた神妙な表情に戦慄が走ったが、どうやら杞憂に終わりそうだ。


 しかし目的のためとはいえ、まさか俺(おれ)が冒険者になるなんてね。


 奥に入った受付の女性を待つ間、俺(おれ)はすぐ終わるはずだった自分の数奇な運命に対する言葉に出来ないモヤモヤを抱え続けていた……


▼


「こちらに記名を……これでカードはケンノスケさんとヒドゥンさんのものです」


 細長い金属棒で名前を書いた金属製のカードを受付の女性が確認してから登録を終え、俺(おれ)はケンノスケを操りながら2人で同時にカードを受け取った。


名前:ケンノスケ

ランクC

職業:剣士


名前:ヒドゥン・エンカ

ランクC

職業:剣士


 カードに書かれていたのは至ってシンプル、名前とランクと職業だ。


 名前は自分達で書いた通り、ランクはスタートラインのランクCでいいのだが、職業の欄には2人とも“剣士”と入っていた。


「ところで職業欄が剣士になっているのだが?」

「本来は水晶玉で適性も判断するんだが、旦那には無理だからな。最低限の体面を保てる職業にさせてもらったぜ」

「そういう事か、感謝する」

「いいって事よ」


 豪快な巨漢の笑みには裏に含むところがあったが、ギルドの面子と俺(おれ)達の利便の双方に得があるから今は受け取っておこう。


 でもいいのか? ステータスが条件を満たしていないのに剣士を名乗って……


 冒険者カードが実際のステータスにどう影響するのか確認してみるか。


名前:ヒドゥン・エンカ

種族:人間

性別:男

職業:ニセ剣士

レベル9999

HP:**198964**

MP:9999999999999


 ニセ剣士……


 簡易ステータス画面を開いた俺(おれ)は絶句した。


 もしギルドに勇者とでも認定されたら、生前の俺(おれ)が好きだった4コマ漫画劇場と同じくニセ勇者にでもなるのか?


 とはいえステータス画面は他の人に見えないし、当面は剣士を名乗っておくか。


「改めましてようこそ。私(わたくし)はギルド長ですが、気軽にルドと呼んでください」

「ルドの本名は長くてややこしいからな。オレはロッサ、用心棒みたいなもんだ」

「受付のレセです。こちらのカードは失(な)くさないようにしてください」


 俺(おれ)が今後の方針をまとめていると、3人がそれぞれ名乗ってくれた。


 このタイミングまで名乗らなかった辺り、別の意味で信用出来そうな組織だ。


「もし失(な)くしたら、どうなるんですか?」

「再発行には金貨10枚かかります」


 しまった!


 何気なく聞いてみたが、こっちの世界の貨幣価値なんてまるで分からん。


 あえて“金貨”と言ったからには銀貨や銅貨もあるのだろうが、どんな方法で聞き出したものか……


 そんな事を考えていると、巨漢のロッサがケンノスケに話し掛けて来た。


「どうした旦那? さすがの高さにビビったか?」

「うむ……今まで金貨とは無縁の生活をして来たからな」


 ここまで打ち解けていると助かるけど、少し罪悪感もあるな。


 でも嘘は言ってない、生前に使っていた現金は硬貨と紙幣だからね。


「分かるぜ、オレだってギルドに入るまでは銀貨すら滅多に拝めなかったからな」

「ここはロッサさんのおさらいも兼ねて、お金の説明をしましょうかね」

「先生も聞いておいてくださいよ、お金には無頓着なんだから」

「うむ、よろしく頼む」


 何やら含みを感じるが、ここは渡りに舟と感謝しておくか。


▼


 ルドの説明を要約すると、この世界で冒険者に関わってくる通貨は銅貨、銀貨、金貨の3つがあるらしい。


 銅貨は主に日常生活で使うものを買うのに使い、大きな買い物には銀貨、さらに大きな取引には金貨、と言った具合に分けられる。


 銅貨100枚で銀貨1枚と言った具合にそれぞれが100倍の関係だが、銀貨と金貨は作った国によって価値に差が出るので少々複雑らしい。


 直近で必要なのはこれくらいか?


 【暖衣飽食(スローライフ)】のおかげで金は必要ないし、まずは周囲に怪しまれない使い道でも考えておくとしよう。


 知力が10万あればルドの説明はいつでも思い出せるし、そもそもあの世に金は持って行けねえからな。


 とりあえず、魔王の根城が分かるまでは冒険者の真似事でもしておきますか。

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