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アークライセンス  作者: 植伊 蒼
第8部-地上のオーロラ-
256/259

4章『灰雲の先』:9

 実験失敗の後、鞍馬研究所の所長である如月誠は、調査もそこそこに政府関係者の手によって連行された。

 その後は、政府が極秘裏に管轄するアーク関連技術の研究施設内にて勾留されていた。

 犯罪者として逮捕・起訴されるということはなかったが、施設から出ることは許されず、許可なく外部との接触も許されない事実上の軟禁状態にあった。

 非人道的な扱いにも見えるが、これにも理由がある。

 日本におけるアーク研究は未だに、国内外の関連組織を除いては公になっていない。このスタンスを崩さない限り、国内でのアーク研究の存在を国は認めることができず、そのため誠を裁判に掛け刑事罰に問うことはできない。

 事実に則すなら、研究における過失で被験者に怪我を負わせたというところで、何らかの刑罰が課されるのが妥当なところだが、当の被験者である愛に直接的な外傷や障害もない上、積極的に誠を罪に問うようなことを言う可能性は皆無で、被害者の証言もなしに話を進めるのも難しい。アークの事を隠したままでは、この件を詰めていくことはできなかった。

 加えて実験が鞍馬研究所の私有地である無人島で行われたこともあり、外部に対して被害が出ていないという点もある。

 研究自体を対象に誠や他の研究者を取り締まることは、前述の日本のアーク研究に対するスタンスから難しく、かといって誠や鞍馬研究所を放置しておくことはできない。

 過去に同種の暴走事故を起こして取り潰された神原財団に関しては、責任者が早々に高飛びしてしまったこともあり、ある意味組織ごと自然消滅のような形になったが、鞍馬はそうもいかない。アーク研究のカモフラージュもかねて、アーク関連以外の研究も行っており、その分野にまで影響を出す形は政府としても好ましくなかったからだ。

 真っ当な手段では手詰まりだ。

 だから政府は、水面下で誠に交渉を持ちかけた。

 罪は偽造することができる。

 鞍馬研究所の責任者である彼は、研究所の資産をある程度自由に動かせる立場にある。帳簿のデータを改ざんすれば、誠の横領をでっちあげることもできた。誠には妻名義だが借金があり、その額は大きい。更には別居中の妻娘の生活費を負担し、高校入学を控えた娘と二人暮らしとあれば、動機としては十分だ。

 ナイフを片手に、政府は誠に手を差し伸べた。

 この政府管轄の研究所でアーク研究に協力しろ、と。

 とはいえ罪状のでっち上げは建前のようなものだ。一方的に断るなどせず、お互いに良い落としどころを見つけよう。そんなニュアンスの取引に過ぎない。

 だから誠はこの要求を受けた。一点、条件を加えて。

 愛の身の安全と、アーク研究による自由の制限を受けない立場を約束しろ、と。

 政府はこの要求を部分的に承諾した。

 身の安全と、完全なる自由は両立しない。関連組織による、保護を目的とした監視を行うことを条件に、愛の身の安全と研究に対する自由は保障される形になった。

 そこが誠からの、最小限の譲歩点だった。

 その上で恩を売りたい政府は、研究の完了を条件に、誠の抱える借金を全額肩代わりすることを約束した。

 書面を介さない、しかしビジネスライクな契約は、双方の提示した上述の条件を落としどころとして交わされ、誠は政府管轄の研究施設で、身分を隠して研究員として働く形となった。

 結局は、事前に隼斗が予想した通りだ。

 人間性や善悪などは度外視され、利害の一致を口実に、双方ともに最大に利する場所に決着させる。

 結論を見れば酷く優しい話だが、過程に道義などあったものではない。

 この場所に来るまでに身を正せなければ、後悔することすらできなかっただろう。そう思うと、誠本人としても寒気すら覚える話だった。

「もう1か月か」

 分厚い窓から空を見上げ、そう独り言ちる。

 あの日もそう、そこに見えるのと同じように、空は分厚い雲に覆われていた。違いはと言えば、ついさっきまで降っていた雨が、あの日は一日中降り続いていたことぐらいか。

 この研究所で働き始めてから、もう1か月が経つ。その間、施設外の人物、組織とのやり取りは一切できていない。

 その点は契約を結ぶ時点で宣言されていた通りだし、誠もそれを望まなかった。

 ただ、愛に対してだけは交流の機会を求めるも、それも叶わないままだった。

 代わりにと愛の近況だけは情報として提供されるものの、それで寂しさを紛らわせられるものでもない。

 だがこれは誠の犯した過ちの報いだ。罰と思えば、甘んじて受け入れようという気にもなれた。

 それよりは、愛も同じように寂しさなり不安なりというものを感じてやしないかと、そちらを心配する気持ちの方が強かった。実際、誠が外の情報を必要以上に求めないのは、それで愛の立場が悪くなることを恐れてだ。

 教えられる近況の情報を信用するなら、愛は今も無事に中学には通えているらしい。受験も間近な時期にひどい負担をかけてしまったものだが、政府関係筋のみならず東洞からも愛に対して支援があるという話だった。

 元より家事全般を一人でこなして、研究に勉強にと忙殺されていた彼女だ。せめて研究からだけでも解放されてくれれば、もう少し自分の時間を持てるかもしれない。

 とはいえ結局そうした環境が、愛に気の置ける友達のできない状況を作り出し、そうしてあとになってから時間だけを急に押し付けたとしても残酷なだけだ。

 どうあっても、苦の無い環境にはいないだろう。

 誠はただ、自分の娘が強い子であることを祈るばかりだったが、この状況だからこそ傍で支えられないことが、酷くもどかしく、そして情けなかった。

 少しでも早くここを出て、今度こそ役割ではなく、本質的な人間性として父親らしく振舞おう。誠は曇天の空を窓越しに見上げ、もう何度目かもわからない想いを、胸に誓う。

 その時、個室のドアをノックする音が聞こえた。

「ああ、入っていい……ですよ」

 抜けきらない癖だ。

 つい先日まで一組織のトップだったのだ。それに部屋の装いも同じようなものというのもあって、かつてのような口調で話してしまいがちだった。

 今の誠は、この研究施設の一職員。個人的な情報の一切を伏せている今、立場としてはそれだけで、権威など何一つない。

 ドアを開いて入ってきたのは、小柄な中年の男性だ。

 彼もまたアーク研究に携わりながら、それ故に身を滅ぼしかけたのだという。そこを政府に拾われ、この研究施設で何かしらの契約に基づき雇われている。

「いらっしゃったんですね、敷島さん」

「ええ。今日はこの部屋で昼食を済ませましたので」

 敷島とは、誠がこの研究施設で生活するにあたって与えられた偽名だ。敷島隆、何度か名を尋ねられる機会はあり、誠は常にそう名乗っていた。

「ところで、何か御用ですか。山岸さん」

「預かり物があったので、持って来たのですよ」

 男の名は、山岸という。フルネームは山岸助。

 かつてあるアーク研究機関で、代表の補佐をやっていたという話だ。実験の失敗によって組織の壊滅を招き、その責任を山岸に押し付けた後、代表は行方を眩ませたのだという。

 とはいえ彼に何の責任もないという話ではない。だから今の誠と同じように、何かしらの報いを受けるか、それともお互いに利のある契約を結ぶか、その二択を迫られた。

 こうしてこの研究施設で働いている以上は、彼も誠と同じ選択をしたのだろう。

 そういう過去に後ろ暗い話のある者は、まず経歴を隠している。そしてこの研究施設には、そういった人間も多い。

 だが山岸はそれをしていないらしい。つまり、その名は本名だということだ。

 何の意図があるかはわからないが、山岸は本名を名乗り、経歴も具体的な名前だけは伏せた上で明らかにしている。

 本名だということも含めて。彼の言っていることが全て嘘の可能性もあるが、どうも誠には、彼がそう器用な嘘が付ける人間には見えなかった。

「預かり物?」

 山岸に歩み寄りつつ、誠は小さく肩をすくめる。

 この研究施設にあっては、周りの人間はとんと信用できない。まず何より誠自身がそうしているように、多くの者が自分の情報をひた隠しにしている。

 そういう状況で同僚といえども他人を信用できるかというと難しいが、山岸という男に対してだけは、誠も警戒心を抱かず接することができた。

「預かり物というよりは、届け物ですね。たまたま私が受け取ったので」

 当然そんな雑務は山岸の仕事ではない。だが彼はどうも、そういう雑務が性に合うのだという。

 大した人間じゃあありません、とは山岸本人の言葉だ。卑屈な言葉と、対照的に穏やかな笑顔が印象的だった。元々の人となりを誠が知るわけではないが、憑き物が落ちたとはこういうことを言うのだろうなと、失礼なことを考えたのを覚えていた。

 もといた研究機関でも、アーク研究にそれほど深くかかわっていたわけではないらしい。あくまでも、代表の仕事を補佐していただけのようだ。

 それでもトラブルのあとには早々にスケープゴートにされたことからして、それほど深く信頼はされていなかったことが伺えた。 

 実際、お互い研究員としてこの場所にいるが、アーク技術の話などになっても、山岸からこれといった情報が得られたことは無い。

 そんな話を何度かしていてわかったことだが、どうも山岸という男は技術的な話にとんと疎い。

 だとすればなぜこんな研究施設で働いているのかという疑問もある。少なくとも、通常の研究者とは異なる役目を与えられているのだろう。

 気にはなったが、誠はそれを深く追求したことはなかった。こんな場所に軟禁されていながら、一人でも信用のおける人がいるというのは随分心強いものなのだ。それをあえて崩そうとは思わなかったからだ。

 同じ思いがあるのか、山岸もまた、誠に似たような信頼を寄せていた。

「その、届け物とは?」

「いえ、中身までは。まぁ手紙か何かでしょう」

 そう言って山岸は、白衣のポケットから白い封筒を取り出した。

 差し出された白い封筒はコンビニで買えるような味気ないものだったが、封をしている可愛らしい小さなシールが印象的だった。

 切手など貼られていないところを見るに、直接持ってきたか、関係者に頼って持ち込まれたものなのだろう。

「私宛なのですね?」

「もちろん」

 念のため一度確認を取ってから、誠は張り付けられたシールを破らないように丁寧にはがすと、中から折りたたまれた便せんを取り出した。

 それを広げて中身を見た誠は、はっと息を呑んでそれをじっと見つめる。

 見覚えのある文字。手紙を持つ手に不意に力が込もった。

「それでは、私はこれで」

 そう言って立ち去る山岸の言葉も、まるで耳には入らなかった。

「愛……」

 手紙を見て、誠は呟く。

 差出人の名を見るまでもない、便せんに文を綴るその文字は、見慣れた娘のものだった。

 自然と高鳴る鼓動が耳に響くなか、誠は静かに、送られた手紙に目を通し始めた。



 ――お父さん、元気ですか。

 久しぶり、愛です。会ってもないのに、久しぶりはおかしいかな。

 本当は直接会いに行きたかったけど、それはできない約束?って聞いたから、手紙を送ります。

 メールだと味気ないかもって、思ったので。こういうの書いたこと無いから、ちょっと変になってるかも。

 お父さんの近況については、教えてもらっています。詳しいことはわからないけど、政府管轄の研究施設で働いているということと、身分を隠しているということ。

 あと、病気にはなっていないとも聞いています。それを聞いたときは、安心しました。

 鞍馬で一緒に研究してた頃は、帰ってくるのも夜遅くで、ほとんど寝てない日もあったから心配だったけど、今の方が無理してないのかな。そうだといいです。

 私の方は、今も元気にしています。

 実験の後は念のため数日入院していましたが、今は問題ありません。

 学校はもう終業式が済んだので行ってないけど、それまでは入院の期間以外はしっかり通っていました。成績は最後のもいつも通りの結果でした。

 進学先については、結局、相談できなくてごめんなさい。

 正直に言うと、考える余裕がなくて、ずっと見ないふりをしていました。だめなことだとはわかっていたけど、それでも……

 最初からそのつもりだったのもあるけど、あの実験の日にはもう、私立の出願の期間が過ぎていたので、公立を受験しようと思っていました。

 アーク研究からは離れていい、ということを聞かされていたので、そういう方向が一番かなって。

 今、この家は私一人なので、遠くの学校で寮生活でもいいかなと思っていたけど、でもそのつもりで色々調べているうちに、なぜか寂しいと思いました。

 これを言ったら不安にさせるかもしれないけど、私には、中学校に仲の良い友達はいません。一緒に出掛けたり、家に集まったり、そういう経験も、中学に入ってからはほとんどありませんでした。

 だから離れ離れになって悲しいと思う相手は、同じ学校にはいないんです。 

 じゃあどうしてそう思うんだろう、それを考えていて、でも答えはすぐにわかりました。

 えっと、ごめんなさい。お父さんの事ではないです。

 お父さんは、今の政府の研究が終わるまで会えないと知っています。それが何年かかるかとかはわからないけど、きっと長くなるのだろうなと思っていて、だから、それが理由です。

 家族の思い出はずっと暮らしてきた家の中にあります。だけど、私はそれから離れる必要がある、というかなんというか。上手く言えないけど、そんな風に考えています。

 強くなりたいと、私があの実験の後、そう感じるようになったからです。

 あの日だけじゃなく、あれからずっと、とってもまだ1か月ぐらいだけど、色んな人に助けてもらって、だから今度は、自分の力で立てるようにと。

 今度は私が、支えてくれた皆の力になれるようにと。

 えっと、嘘です。

 みんなだけど、みんなじゃなくて、恩返しがしたい人がいます。一人。

 ごめんなさい、これも嘘です。

 恩返しとかじゃなくて、ただ私がそうしたいというか。その人と離れたくなくて。

 恥ずかしいので、しっかりとは書けません。手紙ならなんとかと思ったけど、それでも難しいね。

 今なら、なんというか、お父さんの気持ちもわかる気がする。

 大変なことと分かっていて、お父さんがお母さんと結婚したのはなんでなんだろうって、ずっと疑問だったけど、今こうなってみて初めて、そういうことじゃないんだってわかるようになりました。

 損得とかよりずっと大きな気持ちがあるということを、私はやっと知ることができたんです。

 もっと前から気付いていたら、私もお父さんのことを、ちゃんと支えていけたのかなと思うと、少しだけ悔しい。それでも、この気持ちを知ることができたのは、とても嬉しいです。

 この気持ちは、あの人には伝えました。だけどそれはどさくさにしたことで、受け入れてくれるという答えは貰ったけど、それがなぐさめの嘘だということはわかっています。

 嘘つきじゃなくて、優しい人なので、そういう形で私を助けてくれたのだと思います。それなのに、その嘘があの人を縛ってしまっているような気がしていて、だから一時の優しさに甘えたりせずに、私が嘘に気付いていることを、ちゃんと伝えようと思います。

 それでいつか、私が断られても泣いたりしないぐらい強くなれたら、もう一度、今度はまっすぐな言葉で、この気持ちを伝えようと思います。

 話が逸れちゃったね。

 受験だけど、星印学園を受けることにしました。

 出願時期は逃してたけど、特別に受けさせてもらえるんだって。特に条件を出されたわけではないけど、ちゃんと合格できるだけの点数は取るようにと言われました。でも、私の成績なら十分みたいです。それでも今はちゃんと勉強しています。

 アーク研究にも協力することにしました。決して強制をされたわけじゃなくて、私がそうしたいと伝えたから。

 インターンは今のところ鞍馬に所有権が残っているみたいだけど、私の星印学園入学が決まったら、東洞グループが買い取ってくれるそうです。鞍馬はそのお金で、しばらくは大丈夫そう。その間に何とか立て直すという話です。って、それはお父さんの方が詳しいかな。

 星印学園を受けるのは、あの人がその学校に居るからです。理由としてはだめかもしれないけど、でもそれが、今の私の一番強い気持ちです。

 アーク研究から離れられるようにお父さんが取り計らってくれたのに、ごめんなさい。だけど、これが私の意志だから。

 あと、入学が決まったら、寮に入ることにしたよ。たまには、家に帰って掃除とかはするつもり。寂しいことは、少しだけ減るかなって思ってます。

 私の近況は、これで全部です。

 この手紙が届くのは、ちょうど私が星印学園を受験する日になると思います。

 がんばれって、言ってくれると信じています。

 がんばるよ。

 今日も、そしてこれからも。

 不安はあるけど、それよりも、楽しいことを考えるようにしています。

 それと、ちゃんと友達作らないとね。今度は友達と一緒に遊んだ話を、手紙に書けたらって思っています。根拠はないけど、自信はあるから、大丈夫。たぶん。

 お父さんも、がんばってね。

 ただし、無理はしないように。怪我とか病気とか、どっちも気を付けてね。私もそうするつもりだから。

 いつか、お父さんが帰ってきたら、笑顔でただいまと言ってください。私も笑顔でおかえりを言います。

 それからまた、お母さんやお姉ちゃんと一緒に暮らせるように、頑張ろうね。

 想像してみたら、とても楽しみ。

 返事、ちゃんと送ってね。

 それじゃあ、お元気で。

 また一緒に暮らせる日を、楽しみにしています。


 P.S.

 ↑の書き方って、これで合ってる? よくわからなかった。でも伝わるよね。

 最後に、やっぱり、ちゃんと書きます。それがけじめだと思うから。

 今の私が、頑張れる理由です。


 私、好きな人ができました。


 愛より――



「そうか、よかった……」

 知らず、声が震える。

 読み切った手紙を、折りたたむこともなく見つめながら、誠は鼻を鳴らした。

 ほんのひと月前の誠の知る頃より、愛はずっと強くなっていた。

 それが感じられる手紙で、誠にとってはそのことが何よりも嬉しかった。

『あの人』が誰の事なのか、名前は手紙の中に無かったが、それでも誠にはすぐに答えが分かった。痛みを堪えて愛を救い、怒りを堪えて誠に道を正させてくれた、一人の少年。

 自分の娘が、そんな人の支えになれるよう頑張るというのだから、これほど喜ばしいことなどない。

 赤くなった目の端から、一筋の涙がこぼれた。

 白衣の袖でそれを拭って、誠は窓から空を見上げる。

 重くのしかかる灰色の曇に、大きな裂け目ができていた。そこからどうだ、透き通るような青い空が覗き、眩しいほどの光が差し込んでいるではないか。

「希望は常に、諦観を踏み越えた先にあるか」

 空を雲が覆う日もあるだろう。

 嵐が大地を濡らす日もあるだろう。

 でもその向こうにはいつだって、晴れ渡る空があるのだから。

「頑張れ、愛」 


「うん」

 空を見上げ、愛は頷いた。

 前に見えるのは、これから受験する学校の校門だ。

 緊張はする。それでも怯えは無かった。

 きっと父も、遠くで自分を応援してくれているはずだから。

「頑張るよ」

 足を踏み出す。

 迷いなく、まっすぐに。


 見上げる空に、一筋の虹が掛かっていた。

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