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ギャンブル中毒者が魔王討伐!?~ギャンブルスキルだけで魔王討伐~  作者: がりうむ
1章

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9/14

アイアンボア

夜遅くまで続いた宴の翌朝。


「……いてぇ」


部屋に入るなり、ガルドが頭を押さえて床へ膝をついた。


「だから飲みすぎだって言っただろ」


「酒は裏切らねぇ……。裏切るのは翌朝だ……」


「十分裏切られてるじゃねぇか」


俺が呆れてため息をつくと、また扉が開き、リリアが入ってきた。


「いい天気ー!」


朝日が部屋いっぱいに差し込む。


「よーし! 早く魔法をつかいたいな~」


「やめてくれよ」


「えー?」


まるで反省していない。

昨日、酒場の壁を豪快に吹き飛ばした本人とは思えなかった。


「そうだ!」


リリアは俺の腕を掴み、目を輝かせる。


「ジョー! 一緒に魔法使おう!」


「使わない。てか使えない」


「なんで!?」


「街がなくなるから」


「大丈夫だよ!」


「その『大丈夫』が一番信用できないんだ」


そんなやり取りをしていると、ガルドがゆっくり立ち上がった。


「……酒」


「朝一番で飲むな!」


「景気づけだ」


「二日酔いなのに?」


「だからこそだ」


意味が分からない。

結局、ガルドは酒瓶を一口あおると満足そうに頷いた。


「よし」


「エンジンかかった」


「便利な体だな……」


三人でギルドへ向かう。

朝のギルドはすでに多くの冒険者で賑わっていた。

俺たちが入った瞬間、何人もの冒険者がこちらを見る。


「あっ」


「昨日の酒場破壊したやつだ」


「いや、三人組か」


「修理代、大丈夫なのか?」


俺は恥ずかしくなって顔をしかめる。


「全部リリアのせいだからな?」


「えへへ」


「褒めてない」


リリアは悪びれる様子もなく笑っている。

すると奥の扉が勢いよく開いた。


「お前ら!」


ギルドマスターだった。

腕を組み、いつも以上に険しい顔をしている。


「来たか」


「昨日は悪かったね!」


「軽い!」


ギルドマスターは深いため息をつき、机の上へ一枚の依頼書を叩きつけた。

バンッ!


「酒場の修理費は金貨五十枚」


「高っ!」


思わず声が漏れる。

リリアは首をかしげた。


「そんなに壊したっけ?」


「壁と窓と机と椅子を吹き飛ばしたんだぞ!」


「えへへ」


「笑ってごまかすな!」


ギルド中から苦笑いが漏れる。

ギルドマスターは依頼書を俺たちへ突き出した。


「というわけだ」


「この修理代は、お前ら三人で働いて返してもらう」


「俺もですか?」


「お前は監督役だ」


「責任重くない?」


「ガルドだけじゃ止められん」


ガルドは酒を飲みながら笑う。


「止める気はない」


ギルドマスターはさらにもう一枚の依頼書を取り出した。


「ちょうどいい依頼がある」


《アイアンボア五十頭討伐》


《報酬 金貨五十枚》


「五十頭!?」


「多くないですか!?」


俺が声を上げると、ギルドマスターは肩をすくめた。


「数は多いが、一頭一頭はそこまで強くない。ワイバーンを倒したお前らなら十分だ」


それを見たリリアが飛び跳ねる。


「五十頭!?」


「五十回魔法使える!」


「そこじゃない!」


俺は頭を抱える。

この二人とまともに依頼なんてできるのか。

そんな不安をよそに、リリアは杖を高く掲げて満面の笑みを浮かべた。


「よーし!」


「討伐に行くぞぉ!」


俺たちは討伐に向かってギルドを出た。



グレイフォレスト。

街から歩いて二時間ほどの場所に広がる巨大な森林だ。

木々が生い茂り、地面には無数の足跡が残っている。

その中でも、ひときわ大きな跡を見つけた。


「これがアイアンボアの跡か……」


俺がしゃがみ込んで観察すると、ガルドは酒瓶を片手に周囲を見回した。


「ああ。群れで行動する魔物だ。見つけたら一気に片付けるぞ」


「おー!」


リリアは元気よく返事をすると、早速杖を構え始める。


「いや、まだ敵いないから!」


「準備運動!」


そんな会話をしていると、茂みの奥からガサガサと音が聞こえた。

ガルドの表情が変わる。


「来るぞ」


次の瞬間。

ブモォォォッ!!

茂みを突き破り、巨大な蛇が飛び出してきた。

全身を灰色の硬い鱗で覆い、牙は剣のように鋭い。

その後ろから二頭、三頭と姿を現す。


「五頭か」


ガルドは酒を一口飲み、大剣を抜いた。


「ぷはぁ」


「よし」


「エンジンかかった」


「その儀式いる?」


俺が突っ込む間もなく、アイアンボアたちが一斉に突進してきた。

ドドドドドッ!!

地面が揺れる。


「俺に任せろ!」


ガルドは正面から走り出した。


「うおおおおっ!」


ガギィン!!

先頭のアイアンボアへ大剣を叩きつける。

火花が散る。

ガルドの大剣を防ぐほど硬いとは……。

だが、そのまま力任せに押し切った。

ズバァッ!

一頭目が真っ二つになる。


「一匹!」


その勢いのまま二頭目へ剣を振るう。

ドガァン!

吹き飛んだ巨体が木へ激突し、そのまま動かなくなった。


「二匹!」


「相変わらず化け物だな……」


俺が呆れていると、リリアが嬉しそうに飛び跳ねた。


「次は私!」


杖を高く掲げる。


「『ライトニングフレイム』!」


バチバチバチッ!!

巨大な雷と炎が一本の光となって森を駆け抜ける。

ドォォォン!!

残る三頭をまとめて飲み込み、大爆発を起こした。

爆風で木々が揺れ、葉が一斉に舞う。

煙が晴れる。

そこには黒焦げになったアイアンボアが転がっていた。


「……」


俺は口を開けたまま固まる。


「終わったよ!」


リリアは満足そうに笑った。


「終わったじゃねぇ!」


「森まで燃えるだろ!」


周囲を見れば、何本もの木が根元から折れ、燃えていた。


「えへへ」


「笑ってごまかすな!」


ガルドは豪快に笑う。


「ははは!」


「やっぱり上級ウィザードは違うな!」


「いやいや、やばいでしょ!」


俺が叫ぶと、リリアは首をかしげる。


「そう?」


「いつもこれくらいだけど」


その時だった。

ガサガサガサッ!!

森の奥から何やら大きな音が響く。


「……今の爆発で集まってきた?」


俺が嫌な予感を口にした瞬間。

ブモォォォォッ!!

十頭。

二十頭。

三十頭。

アイアンボアの群れが木々の間から一斉に姿を現した。


「うわっ!」


「多すぎるだろ!」


リリアは逆に目を輝かせる。


「すごーい!」


「いっぱい来た!」


「喜ぶところじゃない!」


ガルドはニヤリと笑い、大剣を肩へ担いだ。


「一気に片付けるぞ!」


「おう!」


「私はもっと大きい魔法撃つ!」


「だから加減しろ!」


戦いは一方的だった。

ガルドが前へ出る。

一太刀ごとに一頭倒れる。

リリアの魔法が降り注ぐ。

爆発。

雷。

炎。

水。

次々とアイアンボアが吹き飛んでいく。

俺はその隙を見ながら、《ギャンブル》で危険な突進を予測し、二人へ叫ぶ。


「右!」


「後ろ!」


「左から来る!」


ガルドは笑った。


「ジョー!」


「いい指示だ!」


「任せろ!」


十分ほど経った頃には、地面は倒れたアイアンボアで埋め尽くされていた。


「終わっ……」


そう言いかけた、その時。

リリアが杖を空へ向ける。


「最後に派手なの!」


「『メテオフレイム』!!」


「待てぇぇぇぇ!」


空に巨大な火球が現れた。

ズゴォォォォン!!!

火球は森の奥へ落下し、山全体が揺れるほどの爆発を起こした。

衝撃波が木々をなぎ倒し、鳥たちが一斉に飛び立つ。

静寂。


「えへへ!」


「きれい!」


「きれいじゃない!」


俺が頭を抱えた、その瞬間だった。

――ドォン。

地面が揺れる。

もう一度。

ドォン。

ドォン。

まるで巨大な何かが歩いてくるような重い振動。

ガルドの笑みが消えた。

酒瓶をしまい、大剣を握り直す。


「……来るぞ」


森の奥の木々が次々となぎ倒される。

そして、巨大な影が姿を現した。

普通のアイアンボアとは比べものにならない巨体。

高さ五メートルを超える黒い体。

黄金色の巨大な牙。

全身から漂う圧倒的な威圧感。

リリアもさすがに目を丸くした。


「わぁ……」


「大きい」


ガルドが低く呟く。


「キングボアか……」


その黄金の瞳が、ゆっくりと俺たち三人を見据えた。

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