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ギャンブル中毒者が魔王討伐!?~ギャンブルスキルだけで魔王討伐~  作者: がりうむ
1章

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8/14

魔法使い

夜。

ワイバーン討伐の祝いも兼ねて、ギルド併設の酒場は今日も大賑わいだった。

木のジョッキがぶつかり合い、笑い声が響く。

その中心では当然のようにガルドが酒を飲んでいる。


「もう一杯!」


「まだ飲むのかよ!」


俺が呆れて突っ込むと、ガルドは豪快に笑った。


「勝った日の酒は別腹だ!」


「酒に別腹なんてあるか!」


周囲の冒険者たちも笑い出す。


昨日まで「問題児コンビ」と呼ばれていた俺たちも、ワイバーン討伐以来、酒場ではちょっとした有名人になっていた。


「ジョー!」


「飲め飲め!」


「いや、俺そんな強くないんだけど……」


酒を勧められて困っていると、受付嬢が苦笑しながら料理を運んできた。


「はい、ステーキです」


「助かった……」


「ガルドさん、今日は飲みすぎないでくださいね?」


「努力はする」


「しない人の返事なんですよ、それ」


また笑いが起きる。

平和だった。

本当に平和だった。

――その瞬間までは。

ドォォォン!!

突然、酒場の壁が爆発した。


「うわぁぁぁ!?」


木片が飛び散り、酒場中が悲鳴に包まれる。

煙の向こうから、一人の少女が飛び込んできた。

黒いローブ。

腰まで届く束ねられたポニテールの黒髪。

年齢は俺より低いくらい。 

16歳くらいだろうか。

そして、手には杖。


「はぁ……はぁ……」


少女は後ろを振り返る。


「もう少しだったのになぁ」


直後。

壊れた壁から巨大な魔物が姿を現した。

全身が岩でできた二メートルほどのゴーレム。

酒場がざわつく。


「ゴーレムだ!」


「なんで街中に!」


「おかしいだろ!」


「逃げろ逃げろ」


少女はニコッと笑った。


「やっと追いついた!」


「……え?」


俺は意味が分からなかった。


「『ライトニングフレイム』ッ!」


少女が杖を振る。

一直線に閃光と炎が走り、ゴーレムへ直撃する。

ドガァァン!!

爆炎。

酒場の窓ガラスが震える。

だが、ゴーレムはまだ立っていた。

ゴーレムは大きな声で威嚇する。


「ごおおお!」


少女の目が輝く。


「まだ生きてる!」


「もう一発いける!」


「いやいやいや!」


俺は思わず叫ぶ。


「ここ酒場だから!」


「大丈夫!」


「何が!?」


「壊れても直せばいい!」


「誰が直すんだよ!」


少女は俺の話なんて聞いていない。

杖を構え直す。


「次はもっと大きいの!」


「『オーシャンストーム』ッ!」


「やめろぉぉぉ!!」


その瞬間だった。

ゴーレムの前へ、一人の男が立つ。


「邪魔だ。そこの嬢ちゃん」


ガルドだった。

酒瓶を片手に持ったまま、大剣を抜く。


「ガルド!」


「俺の大切な酒場(いえ)を壊すな」


ガルドは酒を一口飲む。


「ぷはぁ」


「よし」


「エンジンかかった」


次の瞬間。

ドンッ!

地面を蹴る。

一瞬でゴーレムの懐へ入り込み、


「終わりだ」


ズガァァァン!!

一撃。

ゴーレムは真っ二つになって崩れ落ちた。

酒場は静まり返る。


「終わった……?」


少女は残念そうに頬を膨らませた。


「えー。何するんですか!?」


「あと一発撃ちたかったのに」


「撃たなくていい!」


俺が叫ぶ。

少女は首をかしげた。


「どうして?」


「どうしてじゃない!」


「酒場が吹き飛ぶ!」


「あ......」


そこで初めて周囲を見る少女。

壊れた壁。

割れた机。

怯える客。


「……やっちゃった?」


「やっと気付いたか!」


受付嬢が頭を抱えて座り込んでいた。


「修理費……また増えた……」


「また?」


俺が聞くと、近くの冒険者が苦笑する。


「あいつ、有名なんだ」


「いつも魔物を街に連れ込む」


「依頼中でも街中でも関係なく魔法をぶっ放すんだ」


「問題児じゃねぇか!」


少女は照れくさそうに笑った。


「えへへ」


「褒めてない!」


そこへギルドマスターが現れる。

大男は壊れた壁を見るなり、大きなため息をついた。


「……またお前か」


「久しぶり!」


「久しぶりじゃない」


「今月で五回目だ」


「そんなに?」


「そんなにだ」


少女は「えへへ」と頭をかく。

反省している様子はまったくない。

ギルドマスターは俺たちを見る。


「ジョー」


「ガルド」


「頼みがある。」


「なんです?」


「あいつを見張れ」


「え?」


「一人だと街を壊す。どうせお前ら暇だろ?」


「……否定できない」


ガルドが酒を飲みながら笑う。


「面白そうじゃねぇか。」


「よし、それならお前ら3人でここの修理代稼いで来い!」


「ええ……」


少女は目を輝かせた。


「本当!?」


「いいの!?」


「俺まだ何も言ってない!」


「私はリリア!魔法が大好きな上級ウィザードよ!」


「よろしく!」


勢いよく握手を求められる。

断る間もない。


「……ジョー」


仕方なく手を握る。

その瞬間、リリアは満面の笑みを浮かべた。


「やった!」


「次はドラゴンに魔法撃とう!」


「嫌な予感しかしないんだけど!」


すると、ガルドが驚いてこう言った。


「お前上級ウィザードなのか!?」


「ええそうよ!すごいでしょ」


「お、おい……お前上級ウィザードだったのか?」


「まだ十六歳くらいだろ?」


「どうりであんなに強力な魔法をポンポンと……」


リリアは胸を張って笑う。


「えへへ! もっと褒めてもいいのよ!」


「性格だけが残念なんだよな……」


誰かがぼそっと呟き、酒場に苦笑いが広がる。

ギルドマスターは腕を組み、俺たち三人を見回した。


「話は決まりだ。」


「リリアが壊した酒場の修理代は、しばらく依頼を受けて返してもらう。」


「その間、お前ら二人が見張れ」


「また街を半壊されたら困るからな」


「俺たちが保護者かよ……」


俺がため息をつく。

リリアは元気よく手を挙げた。


「じゃあ明日からよろしくね!」


「まだ仲間になったわけじゃないからな?」


「え?」


「修理代を返すまで、一緒に依頼を受けるだけ」


「その後はその時考えればいい」


リリアは少しだけ口を尖らせた。


「そっかぁ……」


「でも、一緒に魔法撃てるならいいや!」


「俺は撃たないからな?」


「えー?」


周囲の冒険者も驚いていた。

ガルドは酒瓶を掲げて笑う。


「よし!」


「飲むぞ!」


「結局酒かよ!」


酒場中に笑い声が響いた。

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