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ギャンブル中毒者が魔王討伐!?~ギャンブルスキルだけで魔王討伐~  作者: がりうむ
1章

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3/14

勝負

ギルドを出ると、昼の日差しが石畳を照らしていた。

街の大通りには多くの人が行き交い、露店からは香ばしい肉を焼く匂いが漂ってくる。

鎧姿の冒険者。

大きな荷物を運ぶ謎の生物。

ローブをまとった魔法使いらしき老人。

どこを見ても、日本ではあり得ない光景ばかりだった。


「……本当に異世界なんだな」


俺は本当に死んで、異世界へ転生したらしい。

胸ポケットにしまった冒険者カードを取り出す。

そこには『ジョー』の名前と、《ギャンブル》というスキルだけが刻まれていた。


「ギャンブル、ねぇ……」


さっきは助かった。

登録料も手に入った。

だが、それだけだ。

このスキルが何をどこまでできるのか、まだ何も分かっていない。


「まずは金だな」


財布の中はすっからかん。

宿を取るには到底足りない。


腹も減ってきた。

このままでは今日の寝床すら危うい。

ギルドで依頼を受けるしかないだろう。

そう思いながら歩いていると、一軒の武器屋が目に入った。

店先には剣や槍、斧がずらりと並んでいる。


「すげぇ……」


思わず足を止める。

ゲームや映画でしか見たことのない武器が、本当に売られている。

試しに一本の剣へ手を伸ばそうとすると、店主らしき大男が睨んできた。


「買わねぇなら触るな」


「あ、すみません」


慌てて手を引っ込める。

値札を見ると、『十五銀貨』と書かれていた。


「高っ!」


思わず声が出る。

相場なんて分からないが、今の俺には一生縁がなさそうな値段だ。

武器屋を後にし、今度は防具屋、道具屋と見て回る。

どの店も賑わっているが、俺には見ることしかできない。


「異世界って、転生した瞬間に最強装備がもらえるもんじゃないのかよ……」


思わず愚痴が漏れる。

そんな都合のいい話はないらしい。

俺は苦笑しながら空を見上げた。

すると、広場の中央に大きな掲示板が見えた。

大勢の冒険者たちが紙を剥がしたり、仲間同士で相談したりしている。


「依頼掲示板か」


ようやく仕事ができそうだ。

俺は少しだけ胸を躍らせながら広場へ向かった。


 ――その時だった。


「おい、新人」


低い声が背後から聞こえた。

振り返ると、三人の男が道を塞ぐように立っていた。

全員が革鎧を身にまとい、腰には剣を下げている。

そして、その目は獲物を見つけた肉食獣のように笑っていた。


「さっきギルドで登録したばかりだろ?」


男の一人が、ニヤリと口角を吊り上げる。

嫌な予感しかしなかった。

歳は俺と同じくらい。

二十代前後だろうか。頬には古い傷跡が走り、鼻には酒の匂いが残っていた。

後ろの二人も腕を組み、逃げ道を塞ぐように立っている。


「……何か用ですか?」


俺は警戒しながら距離を取る。

男は肩をすくめた。


「そんな構えるなって。俺たちは親切なんだよ」


「新人には街のルールってもんを教えてやってるだけさ」


絶対嘘だ。

ギャンブルで散々カモにされそうになってきた俺には分かる。

こういう笑い方をする奴に、ろくな人間はいない。


 「教科書代だ」


男は親指と人差し指を擦り合わせた。


 「持ってる金、全部置いていけ」


 「……悪いけど、本当に金はない」


 「嘘つけ。登録料くらい払ったんだろ?」


 「全部使った」


 男たちの眉がぴくりと動く。


「だったら、そのカードでもいい」


冒険者カードを指差される。


「それを売れば多少にはなる」


「断る」


即答だった。

せっかく異世界で初めて手に入れた物を失うわけにはいかない。


「はっ」


男は鼻で笑う。


「威勢だけは一人前か? 俺たちを舐めてくれちゃぁ困る。新人は最初に上下関係を教えねぇとな」


相手はゆっくりと腰の剣へ手を伸ばす。

周囲の人々はちらりとこちらを見るが、誰も止めようとはしない。

どうやら珍しい光景ではないらしい。

まずい。

三対一。

しかも俺は丸腰だ。

勝てる要素なんてどこにもない。

逃げるか?

……いや、囲まれている。

その時だった。

――ピコン。


聞き慣れた電子音が鳴る。

青白い画面が視界いっぱいに広がった。


《イベント発生》

《対象:荒くれ者との勝負》

《成功率 54%》

《成功:撃退》

《失敗:敗北》

《最低ベット 寿命一ヶ月》


 「54%……?」


思わず目を疑った。

高い。

想像していたより、ずっと高い。


「ハハッ……。」


笑いが漏れる。

今までの人生、二割三割なんて勝負ばかりしてきた。

競馬の三連単。

パチンコの爆連。

オンラインカジノの一発逆転。

そんな俺からすれば、

54%なんて"勝ち確"にしか見えなかった。


「悪くねぇ。」


いや、悪くないどころじゃない。


「今日はツイてる。」


俺は迷わず画面に触れる。


《寿命 一ヶ月》

《ベット完了》

《勝負開始》


全身が熱くなる。

血が沸く。

この感覚だ。

運命にチップを乗せる瞬間。

俺は口角を吊り上げた。


「来いよ」


「今日の勝ちは俺だ」


男が殴りかかってくる。

遅い。

ひらりとかわす。


「おっ?」


周囲から小さなどよめきが起きる。

二人目の拳も避ける。

よし、勝てる!

そう確信した、その瞬間だった。

二人目を避けた勢いで足がもつれる。


「っ!?しまっ──」


そこへ一人目の拳が顔面に炸裂した。

ゴッ!!

視界が白く弾ける。

続けざまに腹へ蹴り。

息が止まる。

さらに背中へ鈍い衝撃。

石畳へ叩きつけられた。


「がっ……!」


立ち上がろうとしても体が動かない。男たちは腹を抱えて笑っていた。


「何が54%だぁ?」


「何一人で笑ってやがった!」


「弱ぇくせにイキるなよ!」


その瞬間――

――ピコン。

青白い画面が静かに表示される。


《敗北》

《寿命 一ヶ月消費》


「……は?」


思わず固まる。

負けた?

54%だったんだぞ……?

その瞬間、胸の奥から何かがすっと抜け落ちるような感覚が走った。

息はできる。

傷もある。

だが、それとは別に。

確かに"命"を削られた。

理由は分からない。

それでも本能が理解していた。


「これが……寿命を失うってことか」


男たちは興味を失ったように去っていく。

一人石畳に倒れたまま、俺は青空を見上げた。

そして、乾いた笑いが漏れる。


「ハハ……」


「54%でも負けるのかよ」


常識なんて通用しない。

このスキルは、勝率を保証するものじゃない。

 

「クソが......」


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