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最後の旅の案内人 〜やり直しの世界へ〜  作者: megane-san
第1章 追放~覚醒

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9. マルコの葛藤

 フルーラ辺境伯領の港で、ルキリアが港に並んだ船を駆けずり回って、完成した船専用の結界魔道具の積み込み作業をしている頃、エビータ国では、新国王から重鎮と軍部に平和宣言がされようとしていた。



急遽、大会議室に集められたエビータ国の重鎮と軍部の幹部たちは、国王となった第5王子の宣言に驚き、会議室の中は騒然となっていた。


「静粛に!」第7王子は立ち上がると、低く響く声で制した。


「繰り返しになるが、これからのエビータ国は平和主義を唱え、防衛以外の戦いはしないと宣言する。これに異議を唱える者は前に出ろ」


まわりを見回しながら様子をうかがって立ち上がる者はいなかったが、空挺団長のマルコが手を上げて、発言の許可を求めてきた。


「陛下、今後エビータ国は戦いをしないということですが、軍部に所属する者たちはどうなるのでしょうか?」


国王となった第5王子のライアンは、チラッと第7王子を見て助けを求めるアイコンタクトを送った。


そして第7王子が小さく頷くと、国王の代わりに立ち上がり、今後の軍部について説明を始めた。


「今後、軍部は縮小して組織編制をする。魔力を持つ者の大半が軍部に引き抜かれていて、この国の魔道具や魔法薬の技術は、他の国に比べてかなり遅れている。軍部はこれまで通り、騎士団・海兵団・空挺団を存続させるが、団員の人員は1/3に減らす。その代わり、各団員の適性を見て、国土開発のための各部署に人員を振り分ける予定だ。戦いばかりでは、国民は疲弊する。ライアン国王が率いるこの国は、今後は平和で戦いのない国にする。みんなどうか協力してほしい!」


静まり返った大会議室で、全員が第7王子の話を黙って聞いていた。


海兵団長と騎士団長が顔を見合わせて頷き合うと、二人は立ち上がって大きく拍手をした。


そして次々に賛同の拍手が起こり、ほぼ全員が立ち上がると、国王の宣言を支持する声があちこちから聞こえてきた。


しかし拍手の音が広がる中、一人頑なに席から動かないマルコの耳には、何も届いていなかった。



マルコは、会議が終わるとすぐに自分の執務室に戻り、バタン!と扉を閉めた。


「……平和、だと?」


マルコの拳が、わずかに震えた。


「なら、あいつらは何のために死んだ」


マルコは、戦場で散った部下の顔が思い浮かんだ。


笑っていた若者。震えながらも前に出た新兵。

 


「……空挺団は、もう不要か」


そして、力なく椅子に座ると窓の外をじっと眺めた。


「俺たちの居場所がなくなるなんて、アイツらに何て伝えたらいいんだ……」


マルコは、俯いていた顔を上げると、テーブルの上に広げてあった近隣国の地図が目に入った。


(先王が次に獲ろうとしてた、四方を山と海で囲まれた孤立した土地……)


自分の思考にハッとしたマルコは、冷たい水で顔を洗うと、マルコが空挺団のために作った、風の魔力を持つ者だけが使える通信手段の風聴便を使って、空挺団の精鋭部隊の4人を執務室に呼び出した。



休日なのにもかかわらず、『緊急』と召集がかかった4人は、慌ててマルコの執務室に入ってきた。


「団長!何かあったんですか!」


マルコは、自分の召集命令から3分以内に集まってくれる仲間に、これから伝える言葉を探しながら、大きく息を吐いた。


「休みの日に悪いな……。みんな、とりあえず息を整えてソファに座れ」


団員たちの息が整ったのを見て、マルコは口を開いた。


「国は、俺たちの役割を見直すらしい」


執務室に呼び出しを受けた4人は、「はっ?どういうことだ?」と顔を見合わせた。


「ライアン国王から平和宣言があった。これからこの国は、一切の侵攻と無駄な戦いを止め、防衛のみの軍事体制に切り替えていくと……」


「えっ、……団長、それって、空挺団が無くなるってことですか?」


「いや、騎士団、海兵団、空挺団はそのまま存続するが、人員を1/3に削減するらしい」


「えっ、じゃぁ、俺たちは……」


「お前たちは、空挺団の精鋭だ。他の仕事に回されることはないだろう。空挺団のこれからの主な仕事は、騎士団と海兵団と共に行う魔獣討伐になる」


精鋭部隊の4人は、呆然とした顔で、一瞬シーンと静まり返った。


「……えっ、魔獣?近隣国を落として、この国に勝利をもたらした俺たちが、魔獣退治……」


「あぁ、それも騎士団と海兵団の補助としてだ」


執務室に集まった精鋭部隊の隊員達は、唖然とした表情でマルコを見つめていた。


その中で一番若い団員のエリックが、ボソッと小さな声で呟いた。


「団長は、それでいいんですか……?」


年長のサムがエリックにチラッと目線を送った後、大きくため息をつきながら、ソファの背もたれにドンと背中を預けた。


「俺は、国王の宣言には納得出来ない。俺たちならこの国をもっと大きく出来る。先王は、次の戦略も考えていたじゃないですか!……団長は、国の言うことに従うんですか」


サムの言葉に続いて、他の団員たちも次々に不満を口にした。


「先王は、俺たちに報奨金をくれるって言ってたけど、それはどうなるのかな……?」


報奨金の心配をするのは、病気の母親を持つコルビー。


「……戦場で今まで生き残ってきた、俺たちのこれからの人生を、魔獣討伐の補助作業で終えるなんて……」


戦場を駆けずり回って、亡くなった仲間の体を必死に連れ帰ったドロウ。


マルコは椅子から立ち上がると、みんなを制して小さく息を吐いてから口を開いた。


「……お前ら、それ以上は口にするな。少し冷静になれ」


部下たちが執務室を出て行った後、マルコは崩れるように椅子に座った。そして地図を広げると、先王が亡くなる前にマルコに指令を出していた場所を、しばらく見つめたまま動かなかった。



♢*♢*♢*♢*♢




会議が終わって執務室に戻ってきた第5王子と第7王子は、ふぅ~と大きく息を吐きながら椅子に腰を下ろした。


「兄さん、取りあえず重鎮たちと軍部の賛同は得られたね。次は、聖エリス国とガーラ国との間に平和協定を結べるように、まずは親書を送って謁見を願おう」


「そうだな。その辺の外交はルナールに任せるよ。しかし、空挺団長のマルコは、みんなが賛同して拍手してた時に、ずっとしかめっ面で席から立ち上がらなかったな……」


「あぁ、俺もそれに気が付いてたよ。親父はマルコに王位を継承させようとしてたみたいだけど、マルコが先王の庶子だという正式な文書は無いからな……。マルコを王籍に入れる前に、側妃たちに毒殺されたしな」


国王となった第5王子のライアンは、先王のやらかしを思い出して顔をしかめた。


「親父は戦争から帰って来るたびに後宮で暴れてたからな……。何人の側妃や妾妃を殺したか……」


「親父は毒殺されても文句は言えないね。マルコについては、少し様子を見よう。……まぁ、戦争の英雄だから気持ちはわからなくもないけど、時代は変わるんだよ。戦争なんて生産性のないことをしてる時代遅れの国は、いつか潰れるよ。内側からね……」


「そうだな。それに俺たちは、急いで国を建て直さないと……。俺も前世の公務員時代の経験を活かして、極力『顔出しなし』で仕事していくわ。トンネルのやらかしもあるしな……」


シュンと落ち込んでいるライアンに、ルナールがチラッと目線を向けた。


「何かやるときは、俺に一声かけてくれよなぁ」


ルナールは、ライアンに念押しすると、目の前に積み重なった書類をすごい勢いで捌き始めた。



ライアンの前世の職業は、とある市役所の山林開発担当の公務員で、休日は推しに全力で貢ぐコミュ障のオジさんであった。


そして第7王子のルナールは、製薬会社の営業担当で、休みの日は全力でゲームに時間を費やす引きこもり系であったのだった……。




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