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最後の旅の案内人 〜やり直しの世界へ〜  作者: megane-san
第1章 追放~覚醒

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6. 隣国の不審な動き

 「おばあさま、ただいま帰りました!俺、地下都市に行ってきたよ!地底人の友達もできた!」


談話室で本を読んでいたばあちゃんを見つけると、俺は早く地下都市のことを伝えたくて部屋に飛び込んでいった。


「ルキ、お帰り……って、ルキ!土だらけで顔も体も真っ黒じゃ!話より、風呂が先じゃ!」


風呂から上がった俺は、夕食を食べながら、じいちゃんとばあちゃんに興奮気味に地下都市へ魔道具を設置に行ってきたことを話した。2人ともびっくりしていたが、是非とも地下都市に行ってみたいと、興味津々で俺の話を聞いていた。


「俺、初めて友達ができたよ」

 

俺に友達が出来たことを話すと、じいちゃんは俺の背中を叩いて、「良かった、良かった」と喜んでくれた。そしてばあちゃんは、こっそり目尻を拭ってた。


数日後、俺は魔道通信機で地底族のモーリーに連絡を取り、じいちゃんたちを連れて地下都市に行くことになった。


俺たちが族長に案内されて地下都市に到着すると、じいちゃんを昔に助けたという地底人が、エレベーターホールで出迎えてくれていた。


「貴方は……!」


じいちゃんは、昔の恩人に再会出来たと目を潤ませながら喜び、族長達と昔話に花を咲かせた。


そしてばあちゃんは、鉱物研究所の所長をしているという族長夫人と話が合ったらしく、夫人から調合を教わった『鉱物茶』を気に入って、辺境伯城でも飲むようになっていた。 (この鉱物茶は、ミネラル豊富で人族の体にも、とても良いものらしい……)

 


そんなこんなで地底族との交流も始まり、ブルーマウンテンの地震や魔獣のスタンピードの心配も無くなったところで、俺は領地の環境整備に取り組み始めた。


まずは、生活に欠かせない上下水道の整備。


今までは、井戸水や山からの雪解け水を生活用水として使用していたが、浄水施設を領地の各町村に設置して『ミネラルウォーター』として売れるのではないかというぐらい、おいしい水を作る設備を整えた。


そして、道路整備。

 

今まで石畳であったところに『アスファルト』を敷いた。馬車道は以前より格段に走りやすくなり、雨の日の足場の悪さが解消された。


「うわぁ、水がおいしい!」

 

「こんなすごい水で洗濯するのは、もったいないよ!あたしゃ、川の水で洗濯してくるよ!」


「何だよこの道……。馬車の車輪の音がしなくて、揺れない……」


「温水洗浄便座だと!誰だよ、こんなもん考えたのは!俺の尻が治っちまったよ!」


領民たちは、大いに喜んでくれたようだった。

 

えっ?これだけの設備を整える資金はどこからって?


この世界では無害だと思われる、俺の作った魔道具の特許を片っ端から取って、全ての収益を領地の環境改善に注ぎ込んだ。


そして、俺は、この世界を楽しんでいる自分に気が付いた。


「俺……、この世界で、役に立ってるかな……?」

 



そんな中、地底族のモーリーから魔道通信機に連絡が入った。


「ルキリア、今、話せるか?」


「大丈夫だけど、急にどうしたの?」


「ちょっと気掛かりなことがあってさ……」


「何があったの?」


「数日前から、ルキリアのとこと山を挟んで向こう側の国が、お前のとこの領地に向かって山に穴を掘りだした。それも凄いスピードで1日で約1キロぐらい掘り進んでいってるよ。」


「1日で約1キロ……」


「半年以内に、こっち側に到達するぞ」


「……わかった。モーリー、情報をありがとう。すぐに対策を練るよ」


(……おかしい。前世の2758年の技術をもってしても、1日に約1キロは異常だ。いや、この世界にトンネルを作る技術はなかったはずだし、転移の魔道具がある世界で、誰もトンネルなんて効率の悪いものを作ろうとは思わない。……ってことは、向こうにも、いる!)


俺はじいちゃんにこの事を伝えなきゃと、執務室に走った。



ドアをノックして執務室に入ると、見たことのない顔の諜報員がその場から姿を消すところで、一瞬だけ目が合った。


「おじいさま、今の人は?」


「隣国にいる諜報員だ。今、隣国が不審な動きをしていると報告を受けていたところだ」


「隣国?俺も今、地底族のモーリーから隣国について気掛かりなことがあるって連絡を受けたんです」


じいちゃんは大きくため息をついた後、ソファの背もたれに体を預けて天井を見上げた。


「……これは、戦さが始まるかもしれんな」


「戦さ?って、戦争……」


「10日前に国王が急死して、第5王子が王位を継承したと報告があった。あの国は強者至上主義で、王位継承は兄弟同士が争って勝ち残った者が国王となると言われている。第7王子以外は全員行方不明らしい」


「隣国のエビータ国は、ガーラ国の半分ぐらいの国土ですよね」


「あぁ、国土だけを見ればそれほど脅威ではないように思われるが、財政の大半を軍事に注ぎ込んで、ほとんどの国民に徴兵を強いているらしい」


「第7王子が残っているのは?」


「第7王子は病弱という理由で、王立継承戦からは外れていたらしいが……」


俺は、モーリーから連絡があったトンネルの件をじいちゃんに話した。


「じいちゃん、隣国の国王の側には転生者がいる。もしかしたら、第7王子は転生者かもしれない」


「……なぜわかる?」


「モーリーからの情報は、数日前から隣国がうちの領地に向かって、ブルーマウンテンに穴を掘り始めたっていう話だった。それも1日に約1キロも掘り進んでいるって。この世界にトンネルを掘る技術はなかったはずだよ。山にトンネルを掘るなんて転生者でないと考えない」


「トンネル?洞窟のようなものか?」


「山に穴を開けて両側を道で繋いだものだよ。あのブルーマウンテンにトンネルを作るなんて発想は、前世持ちにしか出来ないと思う」


「なるほど……。エビータ国とガーラ国の国境は、うちの領としか接していない。エビータ国のほとんどの国境は聖エリス国と接していて、あの国を覆う結界の中には入れないからな。それで、うちの領から攻めていこうと考えたのかもしれん。それにこの領は孤立しているから攻め落とした後も守りやすい……」


「聖エリス国は、結界で国全体を覆っているの?」


「あぁ、あの国には聖女がいて、その聖女が国全体に結界を張っている」


「んっ?……おじいさま、隣国は何で海側から攻める作戦を取らないのかな?」


「うちの海兵団は大陸一の装備を備えている。フルーラ辺境伯領を海側から攻め込もうとは、誰も思わんだろう。それに海兵団長のレオは強いぞ。今度、会わせてやる」


「海兵団!」


じいちゃんは、ポケットに入れていた懐中時計をチラッと見ると、ソファから立ち上がった。


「儂はこの件を王都に報告に行ってくる。ルキリアは、隣国の対応策を練っておけ」


「報告って、ガーラ国王?」


じいちゃんは、ドアに手をかけながら振り返った。


「あぁ、そういえばこの国の王族について話したことはなかったな。この国の王族は竜人の血を引いていて、赤い髪に金色の瞳をしている。そして国王になる者は必ずその色を持つ者と決まっている」


「竜人……」


「竜人は大昔に魔の森にあった魔国の王に仕えていたといわれている。書庫に魔国についての文献があるから今度読んでみるといい。先代が魔国について調べていたからかなりの本があるはずだ」


(先代って、じいちゃんを森で拾った人?何で魔国のことを調べていたんだろう……)

 

俺はすぐに書庫に行って文献を読み漁りたかったが、まずは隣国の侵攻を防ぐ作戦を立てようと、急いで工房に走った。


ハンは、孫の後ろ姿を見送ると小さく呟き、そしてその場から姿を消した。


「頼むぞ……」



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