第34話
「マポラと密輸組織のトップを、我が家にしてすべての罪をかぶせる予定だったということか」
シャルお姉様が吐き捨てるように言った。
「そのようです。あと先々代の侯爵は持病に効く薬と偽り、マポラの実験台にされたようです」
誘拐のことは両国ともに極秘に処理することで話がついた。
外部に漏れることを防ぐためにも、取り調べが終わった後はすぐに大公殿下と叔父は毒杯で亡くなったそうだ。
ユリウス殿下とエドワード様もその場に同席しているから間違いはないとのこと。
両国間での話が終わったが、もっと詳細が知りたいだろうとユリウス殿下の誘いで、ユリウス殿下が泊っている部屋に近い応接室へ移動する。
みんなが座るとユリウス殿下が話し出す。
マポラを開発したのはギルモラン子爵で、死期が近い病気患者の痛みを和らげるために、国内で使用されている痛み止めを改造したのがマポラらしい。
ただ幻覚症状など人をおかしくしてしまうことに気づき研究書類を焼却。
しかし一緒に作っていた研究員が、研究すれば幻覚症状などでない薬ができると主張して焼却には反対していたが、子爵は拒否し焼却してしまった。
研究員は密かに書き写していたノートを持って子爵領を出て叔父と知り合い、デイモンド伯爵領でマポラ作りを再開した。
ただ患者たちがマポラ中毒で容態が悪化していくことの責任に耐えかねて、自分自身を人体実験にしてすでに亡くなっているらしい。
そして両親を殺害したのはデイモンド伯爵とモフィーネ子爵で、彼らはポーション作りに欠かせないヒール草を他国に極秘で販売していた。
他国でもヒール草は育つが、我が国ほどたくさんは採れない。
国はヒール草を他国への販売は認めているが、戦争をしている国への販売は認めていない。
両家は高く買ってもらえる他国、要は国が禁止している国への販売をしていたということらしい。
その仲介をしていたのが叔父、オーレリアン侯爵、ウィスロー伯爵のようだ。
魔鉱石の密輸繋がりでヒール草もということらしい。
そのことをわたくしたちの両親が気づいて王家に告発しようと動いたことを、デイモンド伯爵とモフィーネ子爵に伝えて、彼らが動くように仕向けたのが叔父のようだった。
「元デイモンド伯爵はヒール草の密輸に加担していたのに、シアお姉様と元婚約者を結婚させようとしていたの?」
わたくしの呟きにユリウス殿下が、元デイモンド伯爵に聴取しないと不明だが、シアお姉様を密輸が発覚した際の人質にしたかったのではないかと言う。
その憶測は当たっていそうだわ。
デイモンド伯爵家はマポラの件で取り潰され、親族は平民になり、元伯爵は罪人がいく鉱山で働かされている。
「叔父上はそんなに我が家が憎かったのか?」
「シャルお姉様、わたくしが捕まっていた時の少ししか会話をしていませんが、相当恨んでいましたわ」
あと今回の誘拐でわたくしたちの居場所の特定が早かったのは、ロックフェルトの船員たちの活躍があったそうだ。
どうやら彼らはウィスロー伯爵の行動を監視していて、王都に行く前に大公殿下と会ったのを見て、大公殿下もマークしていたそうだ。
「殿下たちは大公殿下も怪しいと、パーティーの時はすでに疑っていたということでしょうか?」
「カールトン大将から連絡があり警戒はしたけれど、私とジャクリーン嬢の会話を聞かれたのは偶然だよ」
エドワード様が私の疑問に答えてくれた。
「ユリウス殿下、カールトンとは知り合いか?」
「侯爵、私の部下がカールトン大将と同期でね、おかげで連絡が早かったのだ」
シャルお姉様は何か言いたそうにしていたが、ユリウス殿下は気づかないふりをして、今後については話を始めた。
ルクレッツィア王女殿下の我が国の訪問は延期。
両国で今回の関係者の処分をしてから改めてということになり、わたくしの体調が良ければ、明日ここを出発して国に戻りたいらしい。
確かに早く帰ってオーレリアン侯爵たちを捕まえないといけないから、殿下が急ぎたい気持ちはわかる。
わたくしたちも両親の死の真相をはっきりとしりたい。
翌日、わたくしたちは国に戻るためマサーヤの王城を後にした。
馬車の中、姉妹だけなのでわたくしは姉たちに、今回の件を打診されたきっかけを聞いた。
シアお姉様が気まずそうに話し出す。
「わたくしがレイお義兄様に、ユリウス殿下に会って話がしたいと直談判したの」
シアお姉様は、アレックスになぜジャクリーンと組もうと思ったのかと聞いたらしい。
アレックスが言葉を濁すのでいわないと別れるわよと脅し白状させたら、ユリウス殿下の紹介だと喋ったそうだ。
あとユリウス殿下がわたくしのことを好きだと以前から思っていて、わたくしを諦めてルクレッツィア王女殿下と結婚するのか確かめたい気持ちもあったそうだ。
「シアお姉様・・・・」
「だってね、ジャクリーンが出席するパーティーって、そんなに多くないのに小さいパーティーのもユリウス殿下がいらっしゃるのだもの。怪しいではないの!」
「会話はしていませんよ。どこからそんな発想が?」
「今の発言、ジャクリーンもユリウス殿下が毎回来ていたのを知っていたということでしょ。それにジャクリーンとユリウス殿下は、年齢は1歳違いだけれど、学園の生徒会で一緒だったはずよね」




