第30話
エドワード・ウィンストン、ウィンストン公爵家の嫡男だったからだ。
「エドワード、あんな手紙を送ってきたら確認したくて、すぐに来るのはわかっていただろう。早速見せてくれ」
「せっかちだな。まぁいい」
ユリウス殿下とエドワード様は、いとこ同士の間柄だからか砕けた口調で会話していた。
そしてエドワード様はある魔道具の場所へ行く。
そこには机に小箱ほどの大きさのものと、小箱に繋がった小樽ぐらいの大きさのものがあった。
そしてエドワード様がポケットから取り出したものは、無色透明になった魔鉱石だった。
魔鉱石は薄いブルーがかったものだが、魔道具を動かす動力源として使う、すべて魔力を使い切ると無色透明になって役目を終える。
その無色透明な魔鉱石を小箱に入れ、小箱の蓋を閉めてスイッチを押すと魔道具が稼働しだした。
「ここから1時間はかかるから、お茶でもしながら待とうか」
「エドワード、大学には行っているのか?」
「もうスキップで卒業したよ。父上には卒業していないと言っているけれど、おそらくすべてわかったうえで見逃してくれていると思う」
「あの公爵が見逃してくれるなんてな」
「まぁ、普通の留学期間は好きにしていいということだろう」
身内にも警戒されるウィンストン公爵って、やはり冷酷な方なのかしら?
「さてそろそろ本題に入ろうか」
ユリウス殿下の言葉で周囲の空気が変わる。
「ジャクリーン嬢がなぜ同行者に選ばれたのか、疑問に思っているだろう?」
「はい、ただわたくしとルクレッツィア王女殿下は髪と瞳の色、背格好も似ています」
「気づいたか。そうだルクレッツィア王女殿下が、我が国訪問の道中、身代わりになって貰いたい」
ユリウス殿下の話は、ルクレッツィア王女殿下が今回の魔道具の件で、我が国を非公式に訪問する。
エドワード様との共同開発のため両国で製造・販売権を持つそうだ。
明日のユリウス殿下の歓迎パーティーで、この魔道具の発表をおこなうらしい。
「ただ両国での製造・販売の話はまだ伏せる」
「なぜでしょうか?」
「魔鉱石の再利用が可能な魔道具を開発したとなると、打撃を受ける貴族がある」
「オーレリアン侯爵家ですか?」
「我が国ではそうだが、マサーヤ王国の貴族もだ」
「ウィスロー伯爵でしょうか?」
打撃を受けるとはいっても、魔鉱石が永遠に再利用できるわけではなく、2回までらしい。
それでも今よりは魔鉱石の採掘を減らすことができる。
どの国も魔鉱石は限りあるものだから、延命できるようにすることは重要課題のひとつだったはず。
そしてマサーヤ王国は自国の魔鉱山が大きくないため、不足分を我が国から輸入しているそうだ。
しかし延命できるとなると将来的に我が国からマサーヤ王国への輸出は減るかなくなる可能性がある。
「ウィスロー伯爵はマポラの輸入・販売に関わっている可能性が高くマークしている人物でもある」
「あと別件にはなるけれど、今回の発明を我が国で独占したい貴族もいると思うの」
ルクレッツィア王女殿下もユリウス殿下の話につけ加えて話してくれた。
王女殿下と自分の息子を結婚させれば、魔道具の利権に絡めると考える貴族はいるはず。
だから我が国との縁談を阻止しようとする者のいるということね。
ユリウス殿下の話では、わたくしが同伴はエドワード様の縁談相手という設定になるらしい。
明日、わたくしとエドワード様をパーティーで引き会わして、ユリウス殿下はルクレッツィア王女殿下といるようになるそうだ。
そしてユリウス殿下が国に戻る際、ルクレッツィア王女が我が国を非公式訪問、エドワード様も一時帰国されるが、ユリウス殿下とルクレッツィア王女殿下、エドワード様とわたくしと船を別けての乗船になる。
王女殿下は非公式訪問になるため、我が国への訪問は最低限の護衛と付き添いになるが、ユリウス殿下を迎えに騎士団がロックフェルト領で待機している手はずになっているそうだ。
「襲われる可能性が高いのは、私とルクレッツィア王女が一緒で警備が薄くなる船上だ」
馬車はお互いの国の騎士団が護衛でいるため、入れ替えというよりわたくしは、ルクレッツィア王女殿下と一緒の馬車になるそうだ。
「しかし船の乗組員は、わたくしのことを知っている者です」
「そこはロックフェルト侯爵にお願いして、口が堅くかつ腕の立つ船員の配置をお願いしている」
「つまり姉たちは今回のわたくしの本当の仕事内容を知っていたということですね」
「最初は反対されたのだけれど、マポラの首謀者を捕まえられる可能性が高いから、最終的には了承してくれた。本来ならジャクリーン嬢に同意を求めないといけないのはわかっているのだが・・・・」
「ウィスロー伯爵は動くでしょうか?」
「正直わからない。ただ海上なら海賊のせいにできるからな、ウィスロー伯爵と繋がっている貴族が動く可能性もある」
「いろいろなことが絡んで、誰が敵と繋がっている人物がわからないから、ギリギリまで伏せたということでしょうか?」
「そうだ、すまない。断れない状況まで追いつめてからのお願いは卑怯だとわかっているが、マポラ壊滅の糸口を見つけたい」
「ジャクリーン様、わたくしからもお願いします。我が国にもマポラの被害者が多くでています。ここで糸口を見つけなければ、お互いの国が倒れてしまいます」




