第19話
「お姉様」
「これはロックフェルト女侯爵、お邪魔しております」
私が部屋に入るとフェリシアたちから声がかかった。
私はフェリシアの隣に腰を掛け、口を開く。
「かしこまらなくてもいいよ。それよりなんの話をしていたのかい?」
フェリシア自身が結婚相手を探していると、社交界で噂になっているという話を、マッケンジーから聞いて驚いていたと話してくれた。
「あぁ、私にも問い合わせが増えているよ。フェリシア宛の釣り書きがね」
「まぁ、困ったわ、どうしましょう」
「私はてっきりフェリシアがこの前の話で、後継ぎを生んでくれる気になったとばかり思っていたよ」
「違います、それよりもお姉様、このデザインお姉様に合うと思うのです」
フェリシアが話を変えてきて見せてくれたデザイン画は、マッケンジーが描いたものらしい。
「へぇ、変わったデザインだ。でも面白そうだ。作って貰おうか」
「そうでしょう、気に入られると思ったのです、よかったですわ。あと生地選びはどうされますか?」
「フェリシアが選んでくれたらいい、採寸は後日、店に行こう」
「女侯爵、ありがとうございます。お待ちしています」
「ところでフェリシア、セバスチャンが確認したいことがあるみたいだ。私がレイ様のお相手をしているから、確認してきなさい」
「そうなのですか?わかりましたわ。レイ様少し失礼いたします」
「急がなくていいからね」
マッケンジーが部屋を出ていくフェリシアに軽く手振る。
警戒心の強いフェリシアが気を許しているようにも見える。
ここはマッケンジーに釘を刺さないといけないな。
「さて、女侯爵。フェリシア嬢を外させてまで、私に何か用かな?」
感じのいい女性を演じていた奴が、急に声のトーンを変えてきた。
私が何しに来たのかわかっているようだ。
むかつくやつだな。
「あぁ、王家の影のあんたが、なぜフェリシアに付きまとう」
「失礼だなぁー。あくまでもお客様だよ」
「あんたが我が家のことを、嗅ぎまわっていることは知っているんだ。さっさと吐け!!」
「話してもいいけれど、先に訂正しておくよ。私は王家の影ではない。あくまで国家にかかわる案件の時だけ情報提供しているが、あとは断っているよ」
「なら、なんであんな組織のボスをやっている?」
「趣味かな?」
「はぁー?!趣味だと」
「そっ、あくまでも情報屋。暗部の組織ではないよ」
「あっさり言うな」
マッケンジーがあっさりと認めるから私は拍子抜けした。
「あなたは信用できるからね、では何を話しましょうか」
「王家はまた我が家を疑っているのか?」
「さっきもいったけれど、私は王家の影ではないよ」
「違うというなら、マポラとヘロス商会のことで知っている情報を教えて欲しい」
マッケンジーはクスッと笑う。
「相当苦戦しているようだね」
「あぁ、認めたくはないが我が海軍に内通者がいる」
「しかも海軍でもシャル嬢に近い人物だ」
「・・・・誰かわかっているのか」
マッケンジーは首を振る。
「残念だけれど、特定までには至っていない。でも君の行動を把握している者になるだろうね」
「もったいぶらずにさっさと話せマッケンジー!」
「海軍大将3名、船を任せられている中将10名、そして君の船の乗組員全員」
「・・・・私の船の乗組員全員だと」
私は驚愕して目を見開いた。
私の船に乗る者は全員、私が本当に信頼している厳選した者たちなのだ。
「ひとりかもしれないし、複数人いるかもしれない。グループなのか個々人でヘロス商会と繋がっているかはわからない」
「・・・・お前さんでも、ここまでしか解っていないのか」
「ひどい言い方だね。私はあくまで趣味で情報屋をやっているんだ。国の機関ではない」
「しかし、急速に広まっているマポラを何とかしないといけない。協力してもらえないだろうか?」
「なぜ、私なのかな?国と協力できるだろうに?」
「国に、いや王家に借りを作りたくない。我が家を潰そうとしていたからな」
「・・・・どうしてそう思った?」
「私が未成年だった時の後見人になった叔父は、お祖父様に素行の悪さで勘当されていたことがわかった。王家が知らないはずがない。それでも私たちの後見人にしたということは、王家はこの土地が欲しかったのだろう」
「いいところを突いているね。ただちょっと違うかな?」
「どういうことだい?」
「今は知らない方がいい。話せるようになったら話すよ」
マッケンジーが肩をすくめる。
「はん、やっぱりあんたは王家の影もやっているんだ」
私はツンと横を向いた。
「そこは違う。まぁ今回、王家にはマポラについての情報提供は求められたから、たっぷり(お金を)いただいて提供したけれど」
程よい距離関係だよとマッケンジーは言う。
「ならこっちにも同じ情報を教えてほしい。お金は払う」
「まずは内部の内通者探しをした方がいい。いつまでたってもヘロス商会に利用されるだけだ」




