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第18話

証拠として残っている契約書は、金額と数量ぐらいしか記載されていないのだ。


契約前のやり取りの手紙とかは一切でてこない。


海賊どもが言うには契約時に手紙は回収される、ヘロス商会が送った手紙が全部そろっていないと契約不成立になると、みなが口をそろえて同じことを言う。


しかし今まで捕まえた海賊は、あまり賢いとはいえない部類の奴らで、どう考えてもヘロス商会が、縁を切りたい海賊を我が家に捕まえさせているようにしか思えないのだ。



このまま手をこまねいていたら、我が家がマポラの販売・製造元と疑われてしまう可能性が出てくる。


しかもこれから5月の社交シーズンになるから、私は王都に行かなければならない。


当主が欠席となると何かあったのかと貴族たちに探られ、下手をすれば我が家の足を引っ張ろうとする者も出るだろう。


とにかく捕まえる手がかりを早く見つけたい。




「お姉様、フェリシアです」


「入りなさい」


「ありがとうございます」


5月の社交シーズンが始まり、王都の屋敷に私はいる。


だけど私は最低限の催しだけ出席し、溜まっているデスクワークの仕事を片付けることが多い。


社交は妹のフェリシアに任せているから、今日のお茶会の報告に来たのだろう。



フェリシアがソファーに座ったので、私も執務机からソファーに移動する。


侍女がお茶を出して、部屋から退出したのを見計らって私から口を開く。


「今日のお茶会無事に終わったようだね」


「えぇ、ジャクリーンが仕入れてきたアッテン帝国の新たらしい生地は、とても注目されました」


「くすっ、いい広告塔だ」


「お姉様、わたくしはジャクリーンと違って、平凡ですから広告塔にはなりません」


「私はお茶会とか苦手だから、フェリシアには本当に助けてもらっている」


「皆さま、お姉様に会えなくて残念がっていましたのよ」


私はフェリシアの言葉には肩をすくめる。



それからしばらくはお茶会の報告を聞いていたが、フェリシアが急に真剣な顔で別の話をし出す。


「お姉様、侯爵家が落ち着きましたから、そろそろ伴侶探しを真剣にしませんと」


また始まった。最近のフェリシアは、私に結婚しろと非常にうるさい。


正直私が結婚するとなると相手に対しての条件が多くなるし、婚姻相手の家が絡むと余計にめんどうこの上ない。


だから私もいつも話していることをフェリシアにいう。



「後継者はフェリシアが産んでくれれば解決するけれどな。実際、お見合いの話はたくさんきているのだよ」


「まぁ、わたくしがもてないのをご存じなのに。冗談を言わないでください。ジャクリーンと勘違いしているのではないですか?」


「いや、実際に釣り書きがあるから見るといい」


「侯爵家の後を継ぐのは、お姉様のお子でなければいけません。お姉様が産んだ甥っ子か姪っ子を、わたくしが可愛がって立派に育てますから、早く婿を迎えてくださいませ」



フェリシアは社交上手で、縁談には事欠かない。


私と22歳のフェリシア、20歳のジャクリーンは、この国では行き遅れといわれる部類に入り、本来いい縁談は見込めない。


フェリシア本人は家内のことしかできない、また私とジャクリーンが母親似なのに対して、フェリシアは髪の毛や瞳が父親似だから、容姿も人並みだと思い込んでいるが、まったく違う。


目を引く美人で、貴族社会の情報をもとに、嫌味いう貴族を華麗にさばく能力を高く評価されている。



まぁ、フェリシアの元婚約者が屑だったから、男性不振に陥っているのだろう。


あとはフェリシアにべったりの奴が、ガードしているからな。


なぜ仕事はできるのにフェリシアには、腑抜けになってしまうのだろう。


惚れているのはわかるが、もっと強引にフェリシアを連れまわせば、とっくに結婚していたと思う。


そうすれば私の後継者問題は解決していたはずだから、奴の顔を見るとたまに腹立しくなるときがある。


今日もこの問題はフェリシアと平行線で終わった。




出席しなければいけない社交を最低限こなしつつ、私は執務室で仕事をしていると、セバスチャンが部屋に入ってきた。


「何かあったの?」


「シャルロッテ様、フェリシア様にお客様なのですが、フェリシア様はお客様のことをご存じではないのではないかと思いまして、ご相談に参りました」


「問題あるお客様なのかい?」


「いえ、素性はしっかりされた方なのですが・・・・」


「誰?」


「レイフォード・マッケンジー様です。ドレスを着ていらっしゃいますから、お仕事モードなのですが・・・・」


「フェリシアは、マッケンジーが男性だと知らないのではないかということかい?」


「おそらく・・・・」


フェリシアとマッケンジーが親しいと聞いたことがない。


別の顔を持つマッケンジーが、仕事にかこつけてフェリシアに接近してきたということは、マポラの件で我が家に探りを入れに来たのか?



「わかった。私が様子を見てこよう。あと急ぎのようだとフェリシアを、一度セバスチャンのところへ行かせる。なにか相談できることを考えておいて」


「かしこまりました。よろしくお願いいたします」


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