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第17話

「お嬢、海賊船がこの船にめがけて、やってきていますぜ」


望遠鏡で相手を確認しているゲイルから声がかかる。


「ゲイル、いい加減シャルロッテ様に対する口の利き方を直せと言っているだろうが!!」


「ロバート、いいんだよ。この海上で、狭い船での戦闘だ。言葉遣いよりも、腕っぷしと忠誠心があればいい」


私の隣にいる副官のロバートは、20代後半で近隣の子爵家の4男だ。


王城の騎士になるより、海の取り締まりをすれば、地元の民が安心して漁に出られるからと我が家の海軍に入ってきた変わった男だ。


そして軍としての規律に煩いため、よくゲイルに小言をいう。



「さすが、お嬢。だから俺らはお嬢についていくんだよ」


「さぁ、これからが勝負だ。あちらさんが、商船だと思い逃げられないギリギリに近寄ってくるまで、我が侯爵家の旗を掲げるんじゃないよ。そしていつものようにやつらから、逃げているふりをみんなするんだよ」


海賊が私たちの船に乗り込もうとする直前に、私の合図で我が侯爵家の旗を掲げる。



「しまった、女死神の船だ。乗り込むな。逃げるぞ」


海賊の一人が叫ぶが、船は飛び乗れるくらい隣接している。


船を方向転換するにも無理だろう。


「気づくのが遅いんだよ。みんなさっさと片付けるよ」


相手の船に乗り込み、戦闘になるが20分ほどで片がついた。



「シャルロッテ様、海賊船の船内を見回りましたが、海賊はすべて取り押さえました」


「ご苦労さん。あと攫われた人は乗っていたかい?」


「はい、ただ例の薬づけにされているようで・・・・」


ロバートは悔しそうな顔をしていた。


「・・・・そうか、治療院で回復してくれるといいのだけれど」


「こればかりは、医師に任せましょう」


「そうだね。ロバート、戻って早く医者に診せよう。あと海賊船の操縦頼んだよ」




港に着き、港で待っていた海軍の者たちに海賊たちを引き渡した。


海軍基地での取り調べだ。


私はそのまま海賊船の内部を確認していく。


「シャルロッテ様、これを見てください」


ロバートが持ってきたのは、海賊のボス部屋で発見した契約書だった。


「またヘロス商会か、いったいどこの商会なんだ」


私はその書類を床にたたきつける。



ロバートが書類を拾いながら「あくまでも例の薬を売りつけるときに使っている商会名でしょう」


「わかっているよ。だけど海賊どもが吐いた建物はいつも全部もぬけのからだ。しかも数週間から1か月程度の借家だ。貸した店主もバラバラで借りた商会が全部架空、借りた人物像も全員違う!」


私はつい語気を強めてしまった。


「相手は変装が上手いか、複数グループなのかも不明ですから、少しでも証拠を集めませんと・・・・」


「わかっているよ。だけどこんなに手がかりが何もない。しかも我が家が取り締まれていないから、捕まらないんだと悪評が流れて始めている。早く片をつけなければならない!!」





「お姉様、お帰りなさいませ。イライラされているようですが、捕り物が上手くいきませんでしたの?」


屋敷の玄関で、私を出迎えてくれたフェリシアが心配そうに聞いてきた。


私はフェリシアにわかるくらい感情が抑えられていなかったらしい。


「いや、海賊は捕まえたよ。ただちょっと嫌なことがあってね」


「わたくしには言えないことですの?」


「今はまだ・・・・はっきりわかれば話すよ」


「わかりましたわ。でも無理はなさらないでくださいませ」


「ありがとう。気を付けるよ」



フェリシアと別れて、執務室の椅子に座り寄りかかる。


フェリシアにはああいったが、正直焦っている。


私はこの1年、我が領内を経由して国内外に蔓延しだしているマポラという薬の製造・販売をしているヘロス商会を追っている。


マポラを飲まされ続けると幻覚症状と薬の禁断症状で、自分の意志がなくなり、マポラを得るために主人の命令に絶対従う者になってしまう。


例えば薬物中毒者に見せかけた暗殺者になったり、特殊な性癖のある者の慰み者となるなど、最後はボロ布のように使い捨てられてしまうのだ。



最初は借金で首が回らないものが狙われていたが、最近は攫われてマポラを飲まされる人が増えだしたため発覚した。


国内でマポラが製造されているのは掴んだが、どの領地で製造されているかまではわからない。


ただ、我が領内を経由して国内外に流れていることはわかっている。


国内へは他国からの貿易品と一緒に運ばれ、また他国へはマポラの薬と攫われた人が一緒に売られているのだ。


海賊がヘロス商会から購入した薬と人を他国へ売りさばいている。



おそらく商船を襲うより儲かるのだろう、海賊船を捕まえると必ず、マポラと攫われた人がいる。


最初は我が領内の問題だったが、国内でマポラ患者が増えていることを国としても無視できないから、王家が介入を始めた。


今のところは国内での販売・製造ルートを調べているようだが、いずれ他国と我が国の信用問題に発展する可能性があるから、今のうちに潰さなければならない。


しかしこうも見事に証拠を隠滅してくるとなると、残念だが我が家の海軍の中に、ヘロス商会と内通している者がいると認めないといけない。

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